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第2話

 第2話です。

新入学生、下司 ナミの3年間が始まる。女子ボクシング部の設立を目標として……




  
 私立・光陵高等学校……神奈川県内では、スポーツが非常に盛んな学校として知られている。
学校長、富士峰 禅十郎(ふじみね ぜんじゅうろう)の意向により、運動部の充実化が図られている為である。
特に格闘技系、とりわけボクシング部は創設1年目にして高校総体……I・H(インターハイ)優勝という偉業を成し遂げ、以後も毎年のように全国大会への出場を果たしている強豪中の強豪校として名を馳せていた。

 ナミはそこに目をつけ、さぞや女子部も強い選手が揃っているのだろうと思っていたのだが……調べてみると、何と女子ボクシング部なるものは存在すらしていないではないか!
近所住まいで当高校の数学教師兼ボクシング部顧問、且つナミが通っているボクシングジムの先輩である植木 四五郎(うえき しごろう)曰く、

「去年1度だけ女子部を作る、って動きがあったんだが、現ボクシング部主将の桃生 誠(ものう まこと)が圧力を掛けて潰しちまったんだよ」

との事らしい。

 そういった事情により、ナミは「こうなったらわたしが女子ボクシング部を作る!」という決意をしたのである。

(女子部を作るに当たって、一番の要注意人物は……やっぱり例の桃生っていう主将ね)

と、あれこれ思考しているうちに新入生のクラス分けが貼ってある掲示板の前に到着していた。

「えーっと、わたしは……1-2か」

 自分の所属するクラスだけを確認し、その場を後にする。元々中学時代の知り合いでこの学校に進学したのはナミ1だけである。いや、1人いるにはいるのだが……

(そういや鉄平のヤツ、同じ高校だったっけ……?)

そう考えるだけで疲れが増す感じがする。ナミはその存在を頭から完全に切り離す事にした。事にしたのだが……

「お、下司~」

よりにもよって切り離そうとした、まさにその相手が声を掛けてきた。

「……今ちょうどアンタの存在を頭の中から抹消しようとしてたのに」

走って近寄ってきたその男子に、わざと聞こえるように言い放つ。

「んだよ、それ。開口一番それかよ」

 ナミの一言に、ぶっきらぼうな口調で返してくる。大してセットもしていない短髪、鋭い三白眼、そして制服の上からでも分かる鍛えられた身体。

「で、なにか用? 我聞(がもん)くん」

我聞と呼ばれた少年は両腕を組み、

「別に。お前がどのクラスになったのか確かめに来ただけだよ」

と、またもぶっきらぼうな口調で返答する。

「わたしが何組でも、鉄平には関係ないでしょうが!」

 鉄平のぶっきらぼうな口調と態度が癇に障ったのか、やや強めの口調で吐き捨てながらナミはその場から走り去った。
ナミと鉄平は小学校時代からの知り合い……いわゆる腐れ縁である。が、ナミは昔から鉄平とはウマが合わなかった。
鉄平はどう思っているのか知らないが、とにかく決定的にウマが合わない……と、ナミは思っている。友人に

「なんでいつも我聞くんに突っ掛かるの?」

と聞かれても、

「なんとなく腹が立つのよ」

としか答えられないのだ。
今度こそ鉄平の事を頭の中から追い出し、教室に向かう。教室の中に入ると、既に結構な人数が適当に着席していた。
新しい学校、しかも見知らぬ者同士の為か極端に会話が少ない。

(まぁこんなもんか)

と、ナミも適当な椅子を見繕って着席する。すると、

「ねぇ。私、葉月 越花(はづき えつか)っていうの。あなたの名前は?」

 後ろの席からやけに間延びした感じの口調で話しかけてくる女子生徒がいた。

「わたし? 下司 ナミよ。よろしくね、えーっと……葉月さん」

「越花でいいよ、ナミちゃん」

一瞬同姓でもドキッとさせられる笑顔を見せ、右手を差し出してくる。いきなり名前で呼ばれた事への違和感も忘れ、ナミは越花の手を握り返していた。

「?」

 越花が中々手を離さない。

「……もういいかな?」

手を握りながらも、ナミの右手を見つめる越花になんとなく恥ずかしい感覚を覚え、声を掛ける。

「あ、ゴメン」

ナミの声に我に返ったのか、越花は慌てて手を離した。

 越花との握手を終えたナミは、教室内を見回してみた。誰か即戦力になりそうな女生徒はいないか? と思ったからである。

「ん?」

教室内を見回しているうちに、1人目に留まる人物がいた。否、よく見ればかなりの視線がその女生徒に注がれている。
それもその筈、赤いリボンでポニーテールに結われた女生徒の頭髪は、綺麗な金色をしていたからである。面立ちも日本人のそれとは少し違う。
目も碧い。しかも170cmはあるだろうか、身長もある。153cmの自分とは大違いだ、とナミは思った。

(あの娘は使えるかも……)

と、ナミは脳内チェックリストにその金髪女を刻み込んだ。

 さて、他にはいないか? と再び教室内を見回し……廊下側1番後ろの席に座っている女生徒を見て絶句してしまった。

「か、かわいい………」

思わず口から偽らざる感想が零れ落ち、ナミはその少女の美しい容姿に釘付けになってしまうのだった。
サラッとした艶やかな黒い髪を肩口で綺麗に揃え、若干キツ目の目付きもその美しい容姿を引き立てる材料となっている。
鼻筋も整っており、さながら日本人形のような艶やかさである。体格は……ナミと大差ないように見える。

「ん?」

 ナミの送る視線に気づいたのか、その女生徒が鋭い眼光をナミの方に向けられていた。

(うわっと)

ナミは思わず視線を外し、黒板の方を見た。そんな折、教壇側の扉が開き担任と思われる1人の教師が入ってきた。

「えーー、今日からこのクラスの担任を務める………」

チョークを黒板に自分の名前を書き

「植木 四五郎だ。よろしくな」

自己紹介をした。

「今日のHPは……とりあえず全員自己紹介してもらおうか」

 えー!? と言う生徒たちの声が教室内に響き渡る中、

「じゃそっちの端から順に前に出て自己紹介な」

と、不平の声など素知らぬ顔で一番手を指差す。

(うっわ、こういうトコは相変わらずね)

と、ナミは思わず苦笑してしまっていた。



 ナミにとって、植木という男は兄のようなものであった。家が近所であり、家族ぐるみの付き合いもある。
ナミが小さい頃にはプロのボクサーで、日本ランキング2位まで登り詰めた実績もあった。引退後教職免許を取り、光陵高校に在籍。以前の経歴を買われ、ボクシング部の顧問に就任し部員たちを鍛えている。
いわゆる熱血漢であり、強引だがサバサバした性格なので生徒からの信頼もある。ナミは、そういった植木の性格を長い付き合いから知っていたので、つい苦笑してしまったのである。

 自己紹介が続いていく中、ナミの脳内チェックリストに刻まれた例の金髪女の番となった。

「城之内(じょうのうち)アンナです。趣味は乗馬、アニメ鑑賞です。皆さん、よろしくお願いします」

と、意外や意外、流暢な日本語で自己紹介していた。

 続いて、後ろの席の越花が教壇に向かい自己紹介を始めた。

「葉月 越花です。え~っと、趣味は……お料理、スキー、ネットショッピングに、バードウォッチング、あと植物栽培、写真撮影ぐらいです。あ、あと最近絵画も始めました。皆さんと仲良くしたいです、よろしくお願いします」

間延び口調ながらも一気に捲くし立て、最後にペコリとお辞儀をした瞬間、教室内に拍手が沸くのだった。その光景を見ながら、

(なんというか……癒し系、っていうの? アレ)

と思うナミであった。

 おそらくは天然なのだろう。が、どことなく気品を感じる。先程の城之内程ではないが、中々の長身である。
おっとりしたした表情に、胸元まである髪は綺麗に整えられ清楚さが増しているようにも思えた。
その越花が席に戻り、いよいよナミの番を迎える事となった。

「えっと……下司 ナミです。趣味はボクシングです」

趣味はボクシング、と言った途端周りから軽いざわめきが聞こえる。が、そんな周囲の動揺には耳も貸さず話を続けていく。

「ボクシングは小学五年の時から始めて、中学の時にはU(アンダー)-15の大会で準優勝しました。将来の夢は、プロのボクサーになって世界チャンピオンになる事です。わたしは夢に向かって一直線に頑張っていくので、応援よろしくお願いします」

 こういった自己紹介の場では、最初から全てを曝け出すのは難しい。どうしても世間体、というものを気にしてしまうからだ。
この場合はナミがボクシングをしている点である。女性がボクシングをしている、という事に対して快く思わない者は……残念ながら全体の半数を大きく上回る。
少しでも世間体を気にして後ろめたく感じてしまったら、こういった紹介は恐らく出来ないだろう。が、ナミにとっては誇れる夢でこそあれ、世間に恥じる事はない。

(周りがどうこう言おうと、これがわたしの夢なんだから!)

と思っている。少なくとも、彼女はそういう人間であった。そんなナミの横で、植木は嬉しそうに微笑を浮かべるのだった。

 自己紹介を終えたナミは、胸を張って教壇を降りようとした。すると、



パチパチパチ…………



越花が1人拍手をし始める。それが呼び水となったのか、次の瞬間にはクラス中から拍手の雨が沸き上がりナミはその身に浴びる事となった。

「ボクシングか。カッコイイじゃん下司」
「私、応援するから頑張って」

数人の生徒から声を掛けられ、少し照れながらナミは自分の席に戻るのだった。

 以後も順調に自己紹介が進み、最後の1人……目付きの鋭い日本人形を残すのみとなった。
席を立ち上がり歩き出すその姿に、男子生徒のざわめき声が方々から聞こえてくる。いや、よく聞けば女子生徒の声も混じっている。それほどの美少女なのである。

(どんな感じなんだろ? あの娘)

 ナミは、その美少女が一体どんな事を言うのだろう? と興味を持った。そんな中、いよいよ閉ざしていた口を開き

「高頭 柊(たかとう しゅう)です。よろしく」

とだけ告げると、さっさと自分の席に戻ってしまった。



「……え、もう終わり?」

 思わず呟かずにはいられなかった。柊と名乗った美少女から発せられた言葉はほんの一言であり、且つあまりに真面目さが感じられない。
いや、どうにも面倒くさい……といった印象をナミは抱いた。
彼女はもっとこう、外見に似て可愛らしく話すものだと勝手に思い込んでいただけに、そんな彼女がまさかこのような適当な自己紹介をするとは……と、なんとなく裏切られた気分になっていた。
そんなナミの気持ちを知る筈もない当の柊は、右手で頬杖をつきながらHRを受けるのであった。



「よし、それじゃ今日のHRはこれまで」

 授業終了を告げるチャイムが鳴り響き、植木の号令に合わせ初日の授業を全て終えた生徒たちは、それぞれ思い思いの行動を取り始める。

「ねぇナミちゃん」

そんな中、後ろから越花がナミに対して声を掛けてきた。

「ん? なに」

そそくさとスポーツバッグを背負い、教室を後にしようとしていたナミは、越花の方を振り向く。
ちなみにこの時点で柊の姿は既になく、アンナは数人から質問攻めを受けている最中であった。

「ナミちゃん、ボクシング部に入るの?」

と、ナミはナミの方で越花から質問をされる。ナミはというと、

「ううん、入らない」

と即答で否定していた。ナミの目的は『女子』ボクシング部を事なのであって、『男子』ボクシング部に在籍する気など更々ない。

「あ、そっか。ナミちゃんプロの世界チャンピオンになるって言ってたもんね。部活してる場合じゃないよね」

越花は1人で納得のいった様子だが、勘違いも甚だしい。

「違うって。女子ボクシング部を作るつもりなのよ、わたし」

ナミは越花の勘違いを正すべく、事情を説明した。

「………」

事情を聞いた越花は下を俯きながら、何故か無言になる。出来れば今は一刻も早く行動に移したいナミは、

「わたしもう行くよ?」

と席を立とうとする。すると、越花がグイッと袖を掴んでいた……





to be continued……
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チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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