スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

プロロ-グ

 本編、プロローグをお送りします。今回PCに書き直すに当たり、一部加筆修正を加えています(といっても誤差の範囲内だと思いますが)。
かなりの長編になると思いますが、よろしくお付き合い下さい。




~~ 2026年、春 ~~









 彼女は今までの人生の大半を過ごしてきた、この思い出のあり過ぎる実家から次の新居に移るべく荷物をまとめていた。

「ふう……」

あらかたの大荷物は既に段ボールにまとめ、彼女は立ち上がり腰をトン、トン、と叩く仕草をする。

「よっし、大物はこれでOK~っと。あとは小物か」

そう言って今し方まとめた段ボールを足で部屋の邪魔にならない所へ押し込み、小物の整理を始める。
そして、ふと一冊のアルバムが目に留まり、パラッと最初のページをめくってみる。

「おーいナミ坊、こっちは終わったぞ。そっちはどうなんだ?」

と、ちょっと昔の思い出に浸ろうとした瞬間、1人の男がノックもせずに入ってきた。

「んもう、いい加減ナミ坊はやめてってば! いつまで子供扱いしてんのよ」

 ふくれっ面をしながらナミと呼ばれた女性は、男の方には目もくれずにアルバムをまた1ページめくる。
そこには、リングロープに囲まれた2人の女子ボクサーが果敢に殴り合っている数枚の写真と、その説明書きが貼ってあった。
激しく動く為、普通に撮ったのでは上手くピントが合わない、ブレた写真になりそうなものだが、この写真からは、あたかもその場の臨場感が伝わってきそうな迫力があった。

「おーー、県大会の時のやつか。懐かしいなぁ」

「そ、越花(えつか)が撮ってくれたやつ」

 気付けば、2人肩を並べてアルバムに見入っていた。

「ホント懐かしいわ。みんな、今頃どうしてるかなぁ……」

と、ふとナミは虚空を見上げ目を閉じてみる。もう10年以上も昔の、まだ女子高生だった頃の出来事なのに……その1つ1つが鮮明に思い出せる。

(わたしの一番の思い出は、あの面子に出会えた事……かな)

 ナミはそんな事を考えながら、アルバムをまたパラッ……と1ページめくりながら、アルバムに写る自分の姿を思い返してみた。



ワァァァァーーッ!!



 観客の大歓声が聞こえてくる。

「ナミちゃんファイト~~!」
「負けんな下司ーー!」

聞き慣れた声援。

「踏ん張れ、ここで押されたら終わりだぞ! 手を出せッ!!」

青コーナーから聞こえてくるセコンドの指示。試合は残り1分切っていた。ポイント的には……僅かに負けているかも知れない。

(こうなったら一気に仕掛けて倒してやる!)

 ナミと呼ばれた少女は、グッ! とグローブに包まれた両拳を固く握り締め、対戦相手に向かってダッシュした。相手も同じ事を考えていたのか、同様にナミに向かって間合いを詰めてきた。お互い、足を止めての打ち合いが始まる。



ゴッ、ガッ、バシッ、バンッ!



 お互いがお互いのパンチをブロックし、モロに頬にめり込まされ、その衝撃で足が震えても、精神力と根性で踏ん張りながら、尚手を出し続ける。

(絶対勝つんだ!)

打ち合い始めた頃には互角だった手数も、時間が経つにつれて徐々に優劣が付き始めていた。



ドスゥッ!



 一瞬の隙を突いたナミの右ボディブローが対戦相手の腹に突き刺さり、

「ぐ、はぅッ」

身体をくの字に折らせた瞬間から、勝負を司る天秤は一気にナミの方へと傾き始める。
それは、同時に相手の心が折れた瞬間でもあった。



ガンッ、ゴスッ、バンッ、バンッ、ビシィッ!



 対戦相手は完全に失速しガードを固めるのみになっていた。ナミはここぞとばかりに上下左右に己の両拳を叩き付けていく。
パンチが当たる度に身体をフラつかせ、汗と唾液の飛沫がキャンバスに飛び散る。



グシャアッ!



 迫り来る猛ラッシュを前に、遂にはガードが下がりアゴが露出したその瞬間、渾身の右アッパーを身体ごと叩き付ける。



グラ……



アゴを打ち抜かれ、口から少量の血と唾液にまみれたマウスピースを半分以上はみ出させながら身体を大きくグラつかせる。
表情からは意識の有無を判別しにくい状況だが、構わずとどめを刺すべく右拳を振りかぶる。その時……

「ストーーップ!」

レフェリーが両者の間に身体を割り込ませ、ナミのフィニッシュブローを強引に中断させる。そして相手選手の身体を片腕に抱きながら、もう片方の腕を上にあげ何度も左右に振った。



カンカンカンカンカンカーーン!



 試合終了のゴングが高らかに鳴り響く中、ナミはファイティングポーズを取ったまま立ち尽くしていた。そして、リングの中に入ってきたセコンドが肩にタオルを掛け勝利を告げられた瞬間、苦しかった全てが報われたのだ……という事を実感するのだった。









 ナミは目を開け、再びアルバムに視線を落とす。そこには、自分を含めた同じジャージに身を包んだ少女たちが試合会場を背景に記念撮影をしている写真が一枚だけ、ページの中央に貼られていた。

(わたしの人生の中で一番良かった事っていえば……アイツ等に出会えた事、なのかもね。やっぱり………)

 ナミは、その写真を眺めながらそう思わずにはいられなかった。









~~ プロローグ fin ~~
スポンサーサイト

コメント

Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。