スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

第51話 『中山 梨沙の真相』

 プロボクシング編、第51話です。


<拍手返信>
・hayase様:拙い絵ではありますが、感想を頂きましてありがとうございます。

・マサト様:ご無沙汰しております。現実の試合なら中々ないシチュエーションですが、二次元の世界ではある意味日常茶飯事な光景ですよね(笑)
恐らく背景をちゃんと描いていればもっと臨場感が上がったのでしょうが……

・ヨシコ様:萌えちゃいましたか。よし、狙い通り(笑) いつもいつもいの一番に感想を頂いて、本当に感謝の念に絶えません。励みになってます!!





苦戦を重ねたナミのプロ第2戦。辛くも判定勝利となった彼女の前に、歴史上初のオリンピック女子ボクシングで金メダルの快挙を成し遂げた高頭 柊が数ヶ月ぶりに姿を現す。
現地で撮ってもらった大量の写真を眺めるうちに、湧き上がった好奇心から彼女とのスパーリングを希望するナミだったが、柊はこれを拒絶するのであった。









 


 高頭 柊が金メダリストとして日本中のヒロインとして光陵高校へ凱旋し、そして各メディアに引っ張りだこにされる中、月日は確実に過ぎていった。
夏のI・Hは葉月 越花、葉月 雪菜、城之内 アンナの3名が全国大会を制する快挙。
金メダルを獲得した柊に引き続き、光陵女子ボクシング部は乗りに乗っていた。

そして越花とアンナ、更に桜 順子と比我 秋奈の4人が一斉にプロテストへ。全員が危なげなく合格間違いなしの内容で実戦テストを終え、季節は冬模様へ色合いを変えていった。

「ふッ!」

短く吐息を漏らし、一年生の石動 花子がウォーターバッグへ拳を突き立て、ズドンと重い音を奏でる。

「弘美、まだまだパンチに重みが足りぬ。体重移動を意識せよ」

リング上でミット打ちをしていた同じく一年生の伊藤 教子が、これまた同じ一年生の宇都宮 弘美に時代がかった口調でアドバイスを与える。
練習用グローブを器用に外し、リングを降りた弘美は流れる汗もそのままに姿見の前でシャドーボクシングへ移行。
冬に近付いても、光陵女子ボクシング部は熱気に包まれていた。

「よし、全員集合ッ」

植木 四五郎がブザーのタイミングに合わせ、部員たちを呼び集める。やがて皆が集まると、植木は一度咳払いをした後ホワイトボードにペンを走らせ始めた。

「え~っと……『三年生追い出しスパーリング』?」

ボードにひと際大きく書かれた文字を下司 ナミが疑問系で読み上げる。

「そうだ。今までの労いや感謝、そしてもうお前らの時代は終わったんだ! という意味合いをまとめてひっくるめて、一・二年生vs三年生でやろうと考えている」

どんな謳い文句よ、と主に三年生から声が上がる中、あからさまにやる気を見せる者が約2名。

「誰とやってもいいの?」

そう解答を求めたのは、二年生の室町 晶。誰とでも、と口では言いつつその目はあからさまに特定の人物だけを捉えていた。

三年生トレーナー、知念 心。

取り巻く環境の問題で心の事を認めない……認めようとしない晶は、どうにかしてはっきりとした形の決着を欲していた。
城之内 アンナに2度の敗北を喫して以降、トレーナーに専心している心だが、今でも選手に近しい練習をこなしている。

恐らく、グローブを合わせた所で結果は見えているだろう。しかし、先述の通り形としての決着が欲しかったのだ。

「まぁ、あたしは構わないけど?」

後輩の感情入り混じった視線を軽く受け流し、心が承諾する。やれやれという表情で植木は2人のスパーリングを承諾。
すると、切られた口火が伝播したのか他の下級生たちも思い思いに上級生を名指しし始めた。

二年生から桃生 詩織が桜 順子を
下司 サラが葉月 雪菜を
一年生から宇都宮 弘美がナミを
石動 花子が葉月 越花を
さらには抹権(まつけん)ひかるが比我 秋奈を
加納 智代(かのう ともよ)が杉山 都亀を

それぞれが相手を指名していく。そんな中、ただ1人金髪碧眼のアンナだけが誰からも指名されず、どこか寂しげな様子。

「なあ、城之内」

そんなアンナへ、植木が近寄り声をかける。

「先生?」

突然の声に、伏せ目だった顔を上げるアンナ。

「お前の相手は………俺だ」

これには、一同が誰1人の例外もなく一斉に顧問の方へ振り向く。

驚きの表情を以て。

「ちょ、ちょっと四五兄ィ! 右目やってるんでしょ!?」

視線を送る中、真っ先に意見したのはナミ。彼のプロ引退の直接的理由となった網膜剥離の事は、この部の人間なら誰しも知る所。
ただ、1番付き合いの長いナミが真っ先に反応したのは、寧ろ当然の流れといえた。

「ギアはちゃんとするし、グローブも12ozを使うって。そんなに心配するな」

それにこのままじゃ城之内が可哀想だろ? と植木は聞く耳持たない。結局ナミも植木の強引な押し切りに折れ、釈然としないままこれを承諾。
追い出しスパーリングは年明けの2月と定められた。



 それぞれが卒業後の事に思いを馳せ、時は足早に過ぎていく。そんな中、アンナと弥栄 千恵子(やさか ちえこ)は同じ沼田ジムの先輩である中山 梨沙(なかやま りさ)の試合を観戦に来ていた。
梨沙の旦那と息子も同席しての応援だったが、試合開始序盤から目に見えて劣勢。
押されっぱなしの展開に、アンナや千恵子だけでなく梨沙の夫である晋太や息子の淳もハラハラし通し。
そして、決定的な場面が訪れたのは最終第8R序盤。
ポイントで大きく水を開けられている梨沙の、苦し紛れの右ストレートに対戦相手が被せるように左フックを放ち、それがカウンターとなったのである。

完璧なタイミングでのジャストミート。餌食となった梨沙は、さながら全身の骨を抜き取られたかのように脱力した肢体をキャンバスへ転がした。

「ダウン!」

リング上を木霊するレフェリーの無慈悲な宣告。最終Rでのダウン劇に、ドッと会場が沸き立つ。

「梨沙さんッ!」
「お母さーんッ!」

千恵子と淳が同時に叫び、アンナは決まったと小さく首を振る。結構な数のファンたちが悲痛な空気を醸す中、ただ晋太だけは両手の指を口元の前で絡め無言で成り行きを見守っていた。

「ワン…ツー…」

うつ伏せにダウンした梨沙へ、レフェリーが高みからダウンカウントを数える。だが、梨沙が動き出す様子は窺えない。
意識を断ち切られていてもおかしくない1発……いや、事実彼女は失神してしまっていた。
カウントが3を過ぎ4へ差し掛かり、レフェリーがこれ以上は無駄と判断し試合終了を宣告しようとした、正にその時。



ワアアァァアーー!



会場を揺るがすような大歓声が上がった。何と、うつ伏せの梨沙がスッと立ち上がったのだ。まるでダメージなどないかのようにしっかりと、しかしその様子はさながら幽鬼のよう。
ファイティングポーズを構えた梨沙はレフェリーを無視し、ユラリと擬音でも聞こえてきそうな足取りで対戦相手へ向かう。
そして射程圏内へ侵入した瞬間、



パァンッ!



乾いた打撃音と共に対戦相手の頭が仰け反った。

「「え!?」」

アンナと千恵子が同時に驚く。梨沙が放ったのはボクサーの基本、左ジャブ。しかし、スピードも威力も、およそ彼女の実力からは想像の及ばないレベルのものだった。
その後も梨沙のパンチは回転力を増し、その悉くがヒットしていく。
まるでそういう台本でも用意されているのかと言わんばかりに、相手はパンチを貰い続け無様なダンスを踊り続ける。

「す、すごい……」

KO確実と思われたダウンから立ち上がり、以降別人のような動きで流れを奪ったリング上の梨沙を見上げ、アンナは絶句した。
そして、彼女に対して今までとは別な感情も芽生え始めていた。



この状態の梨沙さんと本気で闘ってみたい!



と……

そんな中、この試合を決定付ける1発が放たれる。



ズギャアッ!



今までで最も激しい打撃音。残酷であり華やかなそのパンチは、梨沙の繰り出したストレートの音だった。

腰を捻りグローブの甲を極端に胸の方へ向けた、従来のストレートとは違ったパンチ。
普段見慣れないその打ち方に、アンナは見覚えが……いや、食らい覚えがあった。

「コーク、スクリュー……」

震える声を絞り出すアンナに、千恵子が信じられない表情を向ける。



コークスクリューブロー



拳銃から弾丸が打ち出される様を見てとか、コルク抜きを参考にしたとか伝えられる、ボクシングにおける必殺ブローの代名詞と言っていい技だ。
手首から肘までを固定し拳を捻りながら放つそのパンチは、だが残念ながら実用化させている選手はごく少数。
アンナもライバルの1人である白鷺 美智子(しらさぎ みちこ)が使ってくるまで、あくまで空想上のものだと思っていた。

尤も、彼女の場合はやや特殊ではあったが。

そのコークスクリューブローの餌食となった対戦相手は、その身体を吹き飛ばされ3段目のロープに上半身を乗せる形で仰向けにダウン。
レフェリーはすぐさまカウントを数え始めるが、ピクリとも動かない様子に3でストップし両腕を頭上でせわしなく交差する。
次の瞬間、梨沙の大逆転KO勝ちを告げるゴングが乱打された。

割れるような大歓声。その瞬間、ニュートラルコーナーに仁王立ちしていた梨沙が急にキョロキョロ辺りを見回し始める。
その狼狽ぶりは、まるで身に覚えのないうちに試合が終わっていたという風であった。

「「やったぁぁ~~!!」」

アンナと千恵子は手を取り合って、淳は席を立ってそれぞれ喜ぶ。1人無言だった晋太は、愛妻の無事にようやく安堵した様子で大きな溜息を吐いていた。



 ともかく試合は終わった。観戦した人々の、恐らく大多数に小さくない衝撃を与えて。

試合後、会場外で合流した際、やはり梨沙は記憶が飛んでいた事を打ち明けた。第8Rに入ってすぐ、カウンターを食らって視界がブラックアウトして以降、一気に試合終了のゴングが鳴っている所まで飛んでいるらしい。

丁度ダウン後に豹変した辺りだ。
つまり、梨沙は自覚のないまま超人的な力を振るっていた事になる。

「ふーむ……多分だけど、それは一種の自己暗示なのかも知れないね」

アンナから詳細を聞いた心が、師と仰ぐ湘南スポーツセンターの大江戸 進(おおえど すすむ)に訊ねてみた所、帰ってきた返答はこうだった。
晋太曰く、結婚を機に引退するまではアグレッシブでKO率も7割に乗せていたという梨沙。
が、カムバック後はすっかり凡百なボクサーに成り下がってしまっていた。
ブランクや出産による心境の変化というのは大いにあるだろう。

「もしかしたら、旦那さんの言う本来のアグレッシブさを何らかの理由で奥深く封印しているのかも知れない。で、今回試合中に失神させられた拍子にタガが外れたのかも……」

結局中山 梨沙というボクサーの真相は分からないまま、光陵高校の面々は日々を過ごしていく。
柊は変わらずメディアに引っ張りだこにされ、学校に登校出来ない。
ナミを始めとした三年生……所謂創設のメンバーはそれぞれの進路へ進む為、実質上の部活引退。
跡を継いだ3代目主将の桃生 詩織と新顧問の新名 孝子により、これからの女子ボクシング部は率いられていく事となった。

そして季節は厳冬期を過ぎ、いよいよ2月へ突入。
三年生vs一・二年生の追い出しスパーリングが開かれようとしていた。





to be continued……
スポンサーサイト

コメント

No title

三年生追い出しスパーリングでどのような闘いが見れるのか、すごく楽しみです!
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。