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第44話 『予想外な言葉』

 プロボクシング編、第44話です。リアルが何気に忙しくて、結局9月は1つも更新出来ませんでした。さすがにサボり過ぎたと思うので、今月からはまた頑張って更新出来るように……したいなぁ



<拍手返信>
・ぴーこ様:返信が遅れに遅れて申し訳ないです。ボクシング一家に生まれ育ったサラブレッドな弘美ですが、チーターもといチートな柊さんには手も足も出ませんでした。オリンピック代表選手は伊達ではなかったw
弘美や紀子を始めとした新一年生たちは、個性付けに結構苦心したので頑張って活躍させていきたい所です。





U-15全国優勝の経験もあるボクシング一家のサラブレッド、宇都宮 弘美。その自信から先輩である柊やナミへ挑発、神経を逆撫でされた柊がスパーリングを受ける事に。
当初全く手を出さない柊に、弘美は勢いづき更なる攻勢へ出ていく。瞬間、リング上に一筋の閃光が走っていた。












 2012年、4月も末の頃。新入部員、宇都宮 弘美の挑発から始まった高頭 柊との実戦スパーリングは、柊の予言する通り2分とかからず決着した。
全く手を出さない柊へ勇んで攻め続けた弘美だったが、1発の右ストレートを打ち切ったと同時に大きく後方へ吹き飛びダウン。
ヘッドギアをしているにも関わらず、完全に失神状態となってしまっていたのである。

「す、すごいわね……」

レフェリーを買って出た下司 ナミは、刹那の瞬間に決めてみせた同級生の右腕を事務的に掴むと、そのまま天へ掲げながら感嘆の声を上げた。
自身もプロボクサーとなって初勝利も飾った身だが、正直今の柊ともう1度グローブを交えたとして勝てるビジョンが見えない。

それ程に、今の柊の実力は突出しているという事。
さすが、ロンドンオリンピック日本代表の肩書きは伊達ではないようだった。

「おーい、宇都宮さーん」

未だ失神中の弘美を安静な状態に寝かしつつ、中森 陽子が呼び掛ける。テキパキと手慣れた手つきでヘッドギアやグローブ、シューズなどを脱がし、弘美のセコンドを担当していた伊藤 紀子にバケツに水を汲んでくるよう指示していく。
光陵女子ボクシング部に欠かせない存在であった先輩、大内山 由起が引退して以降、陽子は見違えるように頼もしくなった。
中途入部とはいえ、一年生の時から由起にトレーナーとしての知識・在り方を教え込まれてきた陽子である。

当人も、後継者たるを自身に課しているのかも知れない。



「…う……」

 紀子が汲んできたバケツの水をタオルに湿らせ、陽子は弘美の目元を拭う。すると、ごく小さな呻き声を上げ弘美が覚醒した。

「目が覚めた? 気分が悪いとか、そういうのはない?」

覚醒したはいいが状況が全く飲み込めず、キョロキョロ目を動かす弘美へ陽子は柔らかい口調で尋ねる。

「い、いえ……スパーリングは、どうなりましたの?」

気分不良は大丈夫と軽く上体を起こし、頭を振る弘美。

「……見ての通り。文句なし、貴女の完敗よ」

弘美の疑問にやや間を空け、陽子はある一点へ視線を向けながら静かに答える。その視線を追うように弘美が目を動かすと、そこには既にヘッドギアとグローブを外し全く打たれた痕のない綺麗な顔で、他の部員らと談笑している柊の姿があった。
憎たらしい程に余裕を感じさせるその表情を見れば、なるほど役者が不足していたと納得せざるを得ない。

「負け、た? わたくしが…このわたくしがたった1発のパンチすら当てられず……」

KOされた、という続きが出てこない程に、弘美の唇はわなわな震え視線は宙を彷徨っている。
彼女の今までを支えてきた強烈なプライドが、この時は事実を受け入れさせない堅固な壁と化していた。

どれだけの間リングに座り込んでいただろう。やがて弘美は立ち上がり、ロープを潜ってリングを降りるとまっすぐ柊の下へ歩み寄った。

「高頭…先輩。負けました。完敗ですわ、残念ながら」

まるで独り言のように呟く弘美の肩が微かに震える。負けを認めはしたが、それを受け入れるにはやはりプライドが邪魔をしているらしい。

「納得いってねー、ってツラだな」

腰に手を当て、溜息をひとつ吐き柊は眉を顰める。
難儀な奴だと言わんばかりに。

「全てを受け入れるなど、到底無理な話ですわ。何もかもを受け入れてしまっては、ただの負け犬ですもの。悔しいけれど、今のわたくしと貴女との差は思い知らされました」


勝負には負けたが、だが決して全面的に屈した訳ではない


弘美の言外に込められた不屈の現れであった。それを叩きつけられた柊は、もう1度大きく息を吐き出すと弘美を睨む。
但し、口元が僅かに緩んでいたのではあるが……

「OK、よく分かった。お前が納得ついたらまた挑んできていーぞ。いつでも……とは言えねーけど、気が向いたらまた相手してやるよ」

柊の言葉に無言で頷くと、弘美は早速姿見の前でシャドーボクシングに取り掛かる。

「よ~し、休憩終わり。さあ、もうひと頑張りいこう!」

弘美が動き始めたのに合わせ、越花が部員たちに号令を掛け再び練習が再開されていった。



 時刻は19:00。クールダウンのロードワーク3kmを終え、女子ボクシング部は部室の清掃へと移っていた。
これが終わった後、ナミはいつものように山之井ボクシングジムへジムワークに向かう。

他にも順子は『鬼東』こと東 久野の所属する相田ボクシングジムへ。
越花と雪菜は『天才』獅堂 きららの父、孝次郎が新堂グループの援助を受けて再建した獅堂ボクシングジムへ。
アンナは『アイドル』弥栄 千恵子や中山 梨沙らの所属する沼田ボクシングジムへ。

一部を除く部員たちは、プロボクサーとなるべく更なるトレーニングを積むのである。
彼女たちにとって、それは過酷な日々ではあるが同時に充足感を得られる日々ともいえた。

「お疲れさまでしたぁ!」

清掃後のミーティングも滞りなく終わり、皆の挨拶が響く。

「ナミ坊、今日ジム行くんだろ? 一緒に行こうぜ。宗観から話があるんだってよ」

部室から出ようとしたナミに、後ろから顧問の植木が呼び止める。幾ら家族ぐるみの付き合いで兄同然の仲といえど、異性と連れ立って仲良く歩くのはやや気恥ずかしい。
少し前までは彼にそんな感情を抱く事などなかった。が、特に三年生となってからは何かにつれ植木の存在が気になるようになってきているのだ。

「四五兄ィ? え、え~っと、ごめん。わたし、今夜は秋奈と行く約束してたの」

え? と自分を指さし覚えのない約束に困惑する秋奈を尻目に、ナミは植木へ両手を合わせる。

「そうか? 分かった、また後でな。それじゃ比我、ナミ坊をよろしく」

申し出を断られた植木だったが、とりわけ残念そうな風も見せず部室の鍵を締め職員室へと歩いていった。

「あ、あのぉ、ナミさん? 私、今日はちょっと……」

「というわけで、今夜は一緒にジム行きましょ。よろしくね、あ・き・な」





「はぁっ、はぁっ、はぁっ! シュッ、シッ! シュシュ、シュ……」

 PM21:50。ナミは部活でほとんど練習しなかった鬱憤を晴らすかのような勢いで、一心不乱にサンドバッグを叩いていた。
バスン! バスン! と体重の乗ったパンチの音が響く度、吊るした鎖がギシギシ軋み髪に絡んだ汗が珠となって周りに降り注いでいく。

「ずいぶん気合い入ってるな、下司の奴」

リング上でジムメイトの馬剃 佐羽(ばそり さわ)とスパーリングをしていた我聞 鉄平が、ナミの奏でる音に呆れたような声を上げる。

「はぁ、はぁ…そうだね。やっぱりプロ初勝利で弾みがついたのかな?」

鉄平の相手を終えた佐羽が、ロープへその身体を凭れ掛からせながら同調し頷く。
アンナに勝った事もある実力者とはいえ、さすがに男子を相手にするのは荷が重かったらしい。

少し離れてロープスキッピングに励んでいた秋奈も、ナミの気迫がビリビリと肌を刺してくるように感じた。
元々そのトレーニングの様は苛烈さを伴うナミだったが、この気合いの入りようにはちょっとした理由がある。

ジムに着くなり、早くもプロ2戦目のオファーが届いたと報告があったのだ。
しかも3件も。

ただ、それは手放しで喜べるものとは言い難かった。オファーしてきたこの3名というのが、ナミのデビュー戦の相手として山之井会長が交渉に行き、結果首を横に振られた相手ばかりなのである。

そんな連中が、何故急に掌を返したのか?

理由は至極簡単。デビュー戦で全く無名の梨佳子を相手に苦戦を演じたからに他ならない。つまり、アマチュアでの肩書き程には強くない……要は舐められたのである。
この話を山之井会長から聞かされた時、ナミは髪を逆立てんばかりに激昂した。
自分の実力はもとより、親友の実力すらも不当に低く見られたように感じたのである。

彼女の怒りを買うに充分な理由といえよう。



ビーーーーーッ!
ズドォッ!



インターバルを告げるブザーと、力の籠もった右アッパーでサンドバッグを殴りつける音が同時に木霊する。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

呼吸を荒げ抱きつくようにサンドバッグへ身体を預けると、それを吊す数本の鎖がギシギシ軋む。
全身から噴き出す汗はとうにシャツや下着を身体に貼り付かせ、それでも飽き足らず床へ流れ落ちていく。

(いいわよ、やりたいっていうなら全員相手になってやるわ!)

荒い呼吸を整え頬を伝う汗の不快感も気にせず、ナミは間近のサンドバッグを睨みつけた。

「ナミ坊、そろそろ上がりだろ? クールダウンしたらちょっと来い、話がある」

会長室のドアから身を乗り出した山之井 敦史が、怒りを闘志に変換している最中のナミへ声を掛ける。
恐らくは次の試合の話だろう。そう高を括ったナミは、威勢良く答えるとパンチングミットを外しクールダウンに入った。



「失礼しまーす」

 クールダウンで頭の湯気が吹き飛んだのか、ナミはやや気抜けした口調で会長室へ足を踏み入れた。途端、気抜けは霧散し引き締まった表情へ変化していく。
会長たる敦史を始めとして、チーフトレーナーである吉川 宗観、ナミらに遅れてジムへ到着した植木、唯一の女性トレーナーである池田らが雁首を揃え入室したナミへ一斉に視線を送ってきたのだ。
しかも、全員が椅子に腰掛け腕を組んだ姿勢だったものだから、否が応でも引き締まるというものである。

「おう、お疲れさん。ともかく掛けてくれ」

ナミが入ってきたのを確認した敦史が、いつもの気さくさで椅子への着席を促す。ただ、どこかその様子はそわそわしたものだった。

「さて、早速だが君に大事な話がある。しっかり聞いてほしい」

ナミの着席から少し間を置いて、宗観が組んでいた腕を解く。あまり感情を面に出すタイプではない彼が、どこか申し訳なさそうな雰囲気を醸し出していた。
重く澱む会長室の空気に、ナミは声が出せず無言で次の言葉を待つ。

改まって大事な話とは、一体何なのだろう? プロの2戦目に関する話だと会長室に入る前は思っていたのだが、違うのだろうか。
もしかしたら、今さら怖じ気づいてオファーを取り下げてきたのかも知れない。重苦しい空気の中、ナミは無言のままあれやこれやと思いを巡らせる。
そんな折、真正面に位置取った宗観の口がようやく開く。
そこから紡ぎ出された言葉は、彼女の思考を粉微塵に粉砕するものであった。

「率直に言おう。ナミ君、自分は君のトレーナーを外れる事になった」





to be continued……
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Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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