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第35話 『意外過ぎる邂逅』

 プロボクシング編、第35話です。

あと、『登場人物紹介』のイラストですが残りのメンバーを全て差し替えました。

・比我 秋奈
・下司 サラ
・曹 麗美
・桃生 詩織
・弥栄 千恵子
・室町 晶



<拍手返信>
・ぴーこ様:アンナのジム選びも紆余曲折ありましたが、ここで決定を見るのでしょうか。それは今回のお話でw
あと、ばあやこと白鷺 たえ子ですが、当世界に於いて若かりし頃に単身アメリカに渡り、日本人で初めての世界チャンピオンになったという過去があったりします。
それを、孫娘の美智子は誇りに思ってる訳ですね。
千恵子も絡んでの今回の話、よろしくお願いします。





ジム選びに難航していたアンナへ、一筋の光明が舞い込む。偶然知り合った女子プロボクサー・中山 梨沙から自身の所属ジムである沼田ボクシングジムへの紹介を受けたのだ。
藁をも掴む心境のアンナは、これに快諾し沼田ジムへ。そこでは、意外な人物との邂逅が待っていた。













 2012年、2月。プロボクサーになる決意を固めた城之内 アンナは、しかし肝心要のジム選びに難航していた。
そんな中、偶然にも近所へ引っ越してきた女子プロボクサー・中山 梨沙と知り合い、縁あって沼田ボクシングジムという所へ紹介を受ける。
そこで、アンナは知る顔と再会するのだった。

「弥栄さん!? なんでここに……」

何故、沼田ジムに品森高校女子ボクシング同好会主将の弥栄 千恵子がいるのか?

アンナは言葉が出ず口をパクパクさせる。その様子を千恵子は一瞬キョトンとした表情で見上げ、次いでクスクスと口元に手をあてがい笑い始めた。

「なに言ってるんですか。ここで会うのはこれで2度目ですよ?」

去年の9月くらいに光陵の皆さんで見学に来てたじゃないですか、と言葉を繋げる千恵子。
アイドル顔負けの美貌を誇る彼女の笑顔は、同じ女のアンナから見てもとてもキュートで可愛らしいと思う。
と同時に、以前ここで会っていた記憶をすっかり忘却の彼方へ投棄してしまっていた事に対する恥ずかしさも込み上げ、顔を赤くした。

「ご、ごめん」

「謝るような事でもないですよ。それじゃ私、これから練習なので失礼しますね」

アンナを含めた一同に頭を下げ、千恵子は練習場へと戻っていく。奥の方で立っていた、コーチらしき中年男性に一礼した後ストレッチをする千恵子の姿を見送り、一同は会長室へと足を踏み入れた。

「来たか、中山」

白髪混じりの短髪をガリガリ掻き、机に広げた新聞へ目を通していた会長……田沼 半次(たぬま はんじ)は眼鏡を外し梨沙へ視線を向ける。
眉間に皺を寄せ鋭い眼光を放つその風格は、なるほど神奈川県で3つの指に入るジムのトップと言うだけはあった。

「会長、この娘が昨日電話で話してた城之内さんです」

「知っとるよ。城之内さん、私事ながらいつも姪が世話になっとるそうで。まずは礼を言わせてもらいたい」

険しかった表情を綻ばせ、半次はアンナへ頭を下げる。

「え? えっと……姪?」

半次の言葉と行動の意味が読み取れず、しどろもどろになるアンナ。そんな金髪碧眼の少女へ顔を向け、半次は意味を紡ぐ。
その言葉は、アンナを驚かせるに充分な破壊力を有していた。

「つい今し方、君に話しかけてきた弥栄 千恵子……あの娘は私の姪なのだよ」

気恥ずかしそうに眉間の皺を伸ばす半次と、外で入念なストレッチに取り組む千恵子とを見比べ、アンナはしばし絶句。
まさか、千恵子にボクシングジムを経営する伯父がいるとは思わなかったからである。

「意外だったかな? まあ無理もない。そうだ、もしなんだったらサンドバッグでも叩いていくかね?」

厳めしい外見とは裏腹に、優しげなトーンでアンナへ話しかける半次。そこに梨沙やたえ子までも見たいと便乗してきては、いかに部活後で疲れているといえど断る事など出来なかった。



結局、着替えも持ってきていなかった為制服のまま新品のバンデージを貰い、練習用グローブで拳を覆ったアンナはサンドバッグの前へ。
ちょうど誰も使っていない1つを借り、サッとファイティングポーズを構える。
ちなみに、I・H全国決勝戦で右拳を骨折して以来、全力で何かを殴ってはいない。

どうにも、また折れるのではないか? という恐怖に似た不安が脳裏を離れないのだ。

(加藤さんの話、今になってしみじみと分かってくるよ……)

ビーーーッ! と鳴ったブザーに合わせ、アンナは左で数発サンドバッグへパンチを打ち込んでいく。

思い起こされるのは、アンナたちがまだ一年生だった頃の夏。初めての合宿に加藤 夕貴が参加した時の事。
女子アマチュアながらにKO率ほぼ9割という、化物じみた戦績が物語るように彼女の桁外れのパンチ力は周知の事実である。
ボクシングの華ともいえるKOを量産するその裏で、彼女ならではの悩みも抱えていた。

即ち、拳の負傷である。

女性離れしたそのパンチを存分に振るうには、女性の骨格はあまりにも不適合なのだ。現に、夕貴は中学生になってすぐの頃、左手・中指の骨折を経験していると語っていた。

その時は大袈裟な話と内心一笑に伏したものだったが、自身にも降りかかったのであれば、考えも改めざるを得ない。
左ジャブでボスボスとサンドバッグを叩きつつ、アンナはしきりに右拳を握っては緩める。

(よし! ビビってちゃいつまでも殴れないもんね)

意を決し、アンナはジャブに繋げる形で思いっきり右ストレートを打ち込んだ。



ズドォッ!



渾身の右ストレートを喰らったサンドバッグは、一瞬後方へ飛びギシギシと吊す鎖を軋ませながら前後へ揺れ動く。
中量級のライト級とはいえ、普通に女子の打つパンチではない。アンナのバッグ打ちを遠巻きに見ていた数人の練習生から、感嘆の声が上がった。
思わず、アンナは自分の右拳へ視線を移す。痛みはない。サンドバッグを思いきり叩いた衝撃が余韻を引くだけ。

(骨に響かない……大丈夫、本気で殴れる!)

右拳がパンチ力に耐えられると確信すると、アンナは再び構え一心不乱にサンドバッグを叩いていった。





「ばあや、私ココに入るよ」

 ひとしきりサンドバッグを占領していた金髪碧眼のイタリアンハーフは、会長室で入会の決意を告げた。

「はい、そう仰られるだろうと思いました。田沼会長も快諾されておりますよ」

アンナの言葉を待っていたかのように、たえ子は笑顔で入会申込書を差し出す。そこには、既にたえ子のサインも入っていた。
こうして、紆余曲折を経てアンナもボクシングジムへ籍を置く事となったのである。



 時は戻り、アンナが中山 晋太の車で沼田ジムへ向かっていた頃の事。部活を終えた柊は、心を連れて個人経営のレストラン『ぴくるす亭』へと来ていた。
ボクシングジムの費用を稼ぐべく、順子がアルバイトしている店である。

「ごゆっくりどうぞ」

ジャージ姿からウェイトレス姿へチェンジした順子が、すっかり手慣れた手付きでオーダーを取り去っていくのを見送り、柊は早速本題へと切り出した。

「なあ知念。打ってきたとほぼ同時に射程外まで離れるようなヤツに、カウンター決めるにはどうしたらいいと思う?」

「………はぁ?」

数秒の沈黙を経て、心は呆れ顔で聞き返す。質問の内容を理解するのに数秒を要し、一応の回答に至った末の聞き返しだった。

「ほら、オレ前に世界大会だかに優勝したって話したろ? そん時の決勝の相手ってのが麗美のヤツでさ」

「ッ!?」

話の途中で、驚愕の表情を浮かべ席を立つ心。

曹 麗美(ツァオ リーメイ)

かつてナミの中学時代の先輩だった中村 香澄のいる、都和泉高校の中国人留学生。オリンピック強化合宿を終えた柊が、ナミと順子を相手にスパーリング戦を行った際に見たのを最後に、その姿は見ていなかった。
それが、まさか世界選手権に出ていたとは……

「まさか、アイツが中国の代表に?」

「ああ。最初にやった時から速いヤツだったけど、正直スピードじゃ負けてたな」

相変わらずパンチは軽かったけどな、と当時の模様を思い返しつつ柊は語る。

世界の強敵を相手どっても、柊の“眼”とカウンターは充分過ぎる程に力を発揮した。
戦績レコードの殆どにRSCを刻んでいるのが、何よりの証。
だが、決勝で当たったまさかの顔馴染み、麗美は日本にいた時からは想像もつかないスピードで柊をも翻弄したという。
中でも1番驚いたのは、パンチを選んでカウンターに持ち込んでも既に射程圏外まで退避しているという、常人離れしたフットワークだった。

「パンチは軽かったし、打たれ弱さも相変わらずだったから強引に突っ込んでポイントを稼いでやったんだけど……」

結果は僅差のポイント勝ち。優勝こそしたものの、柊としてはおおよそ納得のいく試合内容ではなかったらしい。
珍しく下唇を噛み、悔しさを滲ませていた。

「それでカウンター、って訳か」

分類すれば、自身もカウンターパンチャーの心としては、柊が何故相談を持ち掛けてきたのかようやく得心のいく思いだった。
ただトレーナーに転身したから、というだけの理由ではなかったのだから。しかし、悲しいかな心には打開策が思い浮かばない。

カウンターとは、相手が打ってくるパンチに対する、いわば最速の反撃手段である。だが、そこに殴り返すべき標的がいないのでは成立し得ない。

「考えつくパターンとしては……相手の腕のリーチの方が極端に長いか、下がりながらパンチを打ってるのか。あるいはその両方か……打開策としては、踏み込みつつかわして離れた分だけ詰められたら…って、無理に決まってるか」

心が、運ばれてきたレモンティーを前に腕を組み思案に暮れる。柊のスピードボクシングすら凌駕するアウトボクシングを前に、心の引き出しは最善の答えを導き出せそうになかった。

頼ってきた仲間の役にすら立てず、我ながら情けないと内心悔しく思う心。しかし、対面の柊は目を輝かせていた。

「高頭?」

「そうか……届かねーんなら、こっちから踏み込んでやりゃいーんだ」

難問を解く糸口を掴んだ受験生の如く、希望を顔に貼り付け柊は心の方へと視線を向ける。

「さすが、やっぱり頼れるぜ知念!」

今日はオレが奢ってやるよ、と珍しいテンションの高さを見せ、『ぴくるす亭』を出て別れるまで柊は終始上機嫌であった。
これが後にボクサー・高頭 柊を語る上で欠かせない、代名詞的なカウンターブローを生み出す事となるのだが、今は本人も含めまだ誰も知らない。



 時は流れ、時期は3月に入った。女子ボクシング部創設に当たって多大な功績を残した、唯一の三年生だった大内山 由起は既に引退し、今は新主将となった越花が部を纏めている。
3月中旬には、既に練習試合の予定も組んでいるのだという。意欲的で結構な事だと、ナミは思った。

(ホント、今のわたしとは大違いよね)

山之井ボクシングジムの練習場、全身を映す姿見の前でシャドーボクシングをしていたナミは、思わず自嘲した。
プロボクサーになってからというもの、部活からジムワークへと比重は移り変わってきている。
勿論、越花を始めとする女子ボクシング部員たちには了承を得ているし、寧ろ期待されている部分の方が大きい。
だのに、もう3ヶ月もデビュー戦が決まらずお預け状態。いい加減、モチベーションを維持するのも限度というものだ。

汗を迸らせ、左ジャブから右ストレート、左ショートフックを被せ半歩バックステップ。
ガードを固め左右に頭を振りながら、再びワン・ツー。
更に右ストレートをもう1発。

髪に絡んだ汗を飛ばし、絶えず動き回るナミ。特定の相手が決まっていない時、彼女はいつも同じ相手を想定する。

ポニーテールと目を見張るような巨乳が特徴的なハードパンチャー……初めて負けた相手、加藤 夕貴

ナミにとって、1番の強敵はやはり彼女だった。

「おーい、ナミ坊。ナミ坊はいるか?」

喧騒止まぬ練習場に、ひと際大きな声が木霊する。何事かと声の方を振り向くと、会長である山之井 敦史が会長室から身を乗り出していた。

「なに、会長(おや)っさん?」

「ちょっと来い。デビュー戦の相手が決まったぞ!」

空気が凍る。一瞬、何を言っているのか理解が及ばなかったくらいだ。幾らかの時間をかけ、思考が追いついたと同時に頭から犬だか猫だかの耳がピコンッ! と立つ。

「ほっ、ホント!? 会長っさん」

全力で敦史の下へ走り寄り、見えざる尻尾をパタパタはためかすナミ。プロボクサーになってからはや3ヶ月。
漸く、念願のデビュー戦のリングに上がる事が出来るのだ。喜び勇んで会長室へと飛び込んでいった。



 ソファーに深々と身体を沈ませ、ナミは資料と思わしき用紙を手にする。そして添付されていた写真を見た、その瞬間。

「え…梨佳子(りかこ)……?」

歓喜の表情は、瞬間で凍っていくのであった。





to be continued……
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コメント

No title

新規イラストメンバー、アイドルボクサー勢ぞろいダワ!!!
晶ちゃんかわいい、晶ちゃんかわいいけど前回のも好きなので晶ちゃんの項目二倍!

リーメイもやっぱりかわいいわねー、弥栄もアイドルボクサーの名に恥じないレベルだし!!

リーメイ、いつか柊ちゃんをぶっちぎって欲しいわねー。



アンナはいつかどこかで両拳をぶっ潰しながらも勝利とか少年漫画してほしいわww

イラストの感想、ありがとうございます。麗美も単純なスピードだけなら柊に勝るとも劣らずなのですが、総合的に見ると若干見劣りするようで……
リアルに考えると両拳を骨折した時点で試合続行なんて無茶極まりないのでしょうけど、少年漫画的な展開なら或いはありえるかも知れませんw
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プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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