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第34話 『中山 梨沙の提案』

 プロボクシング編、第34話です。



<拍手返信>
・ぴーこ様:初登場から怪しさ全開だった聖ヘレナジムですが、案の定出オチでした。でも、オタクなアンナには魅力的に映ったのでしょうね。確かに入会する前で本当によかったですが……
アンナの巨乳好きはキャラ紹介でもさりげなく紹介してたりします。本編内でも、チラホラ夕貴や心の胸にアツい視線を送ってる描写もw





プロテストに合格したナミ。そんなある日、植木は山之井ジムで重大な相談を受ける。

「プロのトレーナーにならないか」

と……
一方、部員たちが続々ジムに入会していく中、予定していたジムが既に閉鎖していた事を知り肩を落とす。
そんなアンナは、後に人生を揺らす1人の女性と出会った。













「そうなの。貴女、ボクシングやってるんだ」

 2月の遅い朝焼けに照らされ、城之内 アンナは偶然出会った大人の女性……中山 梨沙(なかやま りさ)と周辺を散策していた。
まだ引っ越してきたばかりというこの女性は、これも縁とアンナに周辺の道案内を頼み込んできたのだ。
梨沙の優しげな雰囲気が気に入ってしまったアンナとしては、ここで断る理由など皆無。こうして、2人の道案内と称した散歩が始まった。

「へえ、I・H全国で準優勝だなんて、強いのね」

地図に赤ペンを走らせ、梨沙は興味津々にアンナへ質問を飛ばす。ただ、話題はもっぱらボクシングに関するものであったが……

「中山さん。あの」
「梨沙でいいわ。なに、アンナちゃん?」

速攻で下の名前を強要され、アンナは慌てて呼び直す。

「あの、梨沙さん。好きなんですか? ボクシング」

「ん~……まあ、私もやってるからね。若い娘の話が聞けて楽しいのかも」

「え…やってる……?」

「うん。こう見えても私、一応プロボクサーなの」

あ、でもこないだ負けちゃったんだけどね、と舌をチロッと出してはにかむ。ちなみに、梨沙の左手の薬指にはキラリと光るウェディングリング。
彼女は、どうやら既婚者らしい。

「元々旦那がボクシングやってて、私は見てただけだったんだけどね。ちょっと色々あって断念せざるを得なくなっちゃって。で、なら私が変わりに! って始めたの」

梨沙がプロボクサーになったのは、今から約10年前……18歳の頃。その当時はまだ後藤姓を名乗っており、結構な戦績を残したようだ。
しかし、結婚と出産に伴い現役引退を選択した。

「でも、今はカムバックしたんです、よね?」

こないだ試合に負けた、と言っていた事から、恐る恐る聞いてみる。

「うん。多分、私の中でまだ燻ぶってたのね。未練が」

陽光を背に、梨沙はアンナへ屈託のない笑顔を浮かべる。アンナには、それがとても眩しいものに映った。

「そういえば、アンナちゃんはプロになるつもりなの?」

しばらく言葉もなく歩いていた2人だったが、ふと梨沙が興味ありげに口を開いた。

「え? あ、はい。そのつもりなんですけど……」

まだジムが決まってないんです、と何故か申し訳なさそうに俯く。

「そうなの。だったら、私のジムに来ない? 沼田ジムってトコなんだけど」

妙案とばかり手をポムと叩き、梨沙がアンナへ一筋の光明を指し示した。これは、アンナにとっても予想外な申し出。
意中の聖ヘレナボクシングジムが閉鎖され、また1からジム探しをやり直さなければならないと思っていた所へ、偶然知り合ったプロボクサーからジムへの紹介を受けたのである。
正直、他の部員たちから出遅れて焦りを感じ、藁をも掴む思いのアンナには渡りに舟というべきか。

「はい! ぜひお願いします。実は昨日、目的のジムが閉鎖してて困ってたんです」

碧い目をキラキラ輝かせ、金髪を振り梨沙へ頭を下げたアンナ。晩に沼田ジムへ一緒に行く約束をし、2人は一旦別れた。



 ようやく自分も念願のジムに入れると胸の高鳴りを抑え切れないアンナは、学校でも終始顔がにやけてしまう。
そんなアンナとは裏腹に、ナミと柊は不満顔を並べていた。

「あっちと比べて、こっちの2人はずいぶん辛気くさい面を並べてるわね」

授業も終わり、時は部活時間。トレーナーに転向したにも関わらず、ジャージに着替え拳にバンデージを巻いた知念 心が、アンナとナミ、柊を見比べた。

「ナミはデビュー戦が決まらないからふてくされてるみたい。柊に関しては教えてくれないのよ」

同じくジャージ姿にバンデージを巻き入念にストレッチをしていた桜 順子が簡単に事情を説明した。
オリンピックまでの僅かな間、柊は進級の為に一時学校へ戻っている。
しかし、世界女子ボクシング選手権で優勝しオリンピック代表もほぼ確実になったとは思えない、浮かない顔でいる事が多くなっていた。

「高頭。なにかあった? あんた顔だけは可愛いんだから、そんな浮かない顔してたらもったいないよ」

壁に凭れムスッとした顔の柊の隣へ歩み寄り、心は隣に並ぶ。身長の低さをコンプレックスに感じている柊は、本能的に一歩横によけチラリと心の方を見た。

「……あのよ。後で相談、乗ってくれねーかな」

「相談? 珍しいね、あんたがアタシに相談なんて」

「乗ってくれるのか? それとも乗ってくれねーのか?」

相変わらずムスッとした表情のまま、心の返答を急かす柊。結構何でも自分だけで解決してしまう柊にしては珍しいとも感じる。
しかし、ともあれ自分を頼ってくれる事に悪い気のしなかった心は、

「分かった。じゃあ部活の後で」

と承諾するのであった。



 ナミの号令一下、女子ボクシング部の練習が始まった。部員数が増えた為2組に分け、まずは暖気を兼ねた5kmのロードワーク。
主将のナミと副主将の越花がそれぞれ先頭に立ち、別々のコースを走っていく。

始めた頃に比べて、越花も随分と先輩らしくなったと、ナミは思う。
柊やアンナ、雪菜や順子など古参組を率いるナミも、面子が面子だけに負けてられないと気を引き締め、走るスピードを上げた。





「帰ってきた。思ったより速かったわね」

僅かばかり息を弾ませたナミは、部が発足した当初から使用している旧校舎付近のグラウンドを陣取り、遅れて合流してきた越花組に手を振る。
唯一の三年生で、本来ならもう引退している筈の大内山 由起のフォローがあるとはいえ、一年生トリオも着実に成長しているようだ。

「さあ、早速筋トレ始めるわよ!」

再びナミが声を張り上げると、慣れた動きで部員たちは指示通り筋トレを始めた。





「よおし、今日の練習はここまでッ! しっかりクールダウンしておけよ」

 部室で熱心に身体を動かしていた部員たちへ、植木の大声が響く。ありがとうございましたー! と声を揃え、全員クールダウンのロードワークに出ていった。
それを見届けると、植木は顧問用の机に腰掛け、一冊のノートを開く。由起が今までの記録を基に作成した、トレーナーノートだった。

ことトレーナーとして、植木は由起に及ばない事を自覚している。由起のコーチング技術及び理論はとても合理的であったし、その情報収集能力には何度も助けられてきた。
あの桃生 誠ですら、由起には一目置いていた程なのだ。

だが、4月になれば彼女も卒業して居なくなる。

中森 陽子や心では、残念ながら由起の代わりは務まらない。故に、植木は改めてトレーナーとして勉強し直す必要性を感じた。
山之井 敦史や吉川 宗観にプロのトレーナーへの転向話を持ち掛けられた事で、植木は芽生えた心境の変化と向かい合わざるを得なかった。

「プロのトレーナー、か……」



 部活が終わり、アンナは急ぎ足で家へ帰った。梨沙と一緒に沼田ジムへ向かう約束になっていたからだ。

「ただいまー! ばあや、私ちょっと出掛けてくるからッ」

玄関にバッグを投げ捨て、そのまま踵を返そうとしたアンナを呼び止める、白鷺 たえ子の声。

「お待ち下さい、お嬢様。中山 梨沙さんなら、もうこちらにいらっしゃっておりますよ」

すぐにも飛び出さんとしているアンナを、たえ子が慌てた様子で制止した。

「へ? 梨沙さんが来てる?」

呼び止められたアンナは、全力疾走してきたのか大きく息を切らせながら居間へと向かう。そこには、梨沙と1人の男性、そして城之内家で飼っているゴールデンレトリバーのポチと戯れている1人の男児の姿があった。

「あ、お帰りなさいアンナちゃん。あと、お邪魔してます」

金髪の友人の帰宅に、にっこり微笑む梨沙。それに続いて、隣の男性が席を立ち会釈をした。

「妻がお世話になったそうで。夫の晋太(しんた)といいます。こっちの子は淳(じゅん)。小さいですが近所でラーメン屋を開く事になりました。また寄って下さい」

中山夫妻と1人息子の訪問は、たえ子にとっても喜ばしいものであったらしい。これから沼田ジムに行くのに際し、珍しく上機嫌で同行を申し出てきた。

「へ、ばあやが? 珍しいね」

「いえ、最近のボクシングジムがどのような感じなのか、少々興味が湧きましたもので」

アンナの留守に梨沙と色々話していたらしく、昔の血が疼いたのだそうだ。結局、アンナとたえ子は共に沼田ジムへ向かう事となった。



「たえ子さんって、昔アメリカでチャンピオンになったんですか!?」


 晋太の好意により、車で沼田ジムへ向かうアンナたち。その車内で、梨沙はたえ子の昔話に聴き入っていた。
数十年も昔、若かりし日のたえ子がアメリカで女子としては初の世界チャンピオンになった頃の、一方ならなかった苦労話を語っている。

実は、その詳細を聴くのはアンナも初めてだった。

かつて、たえ子の使っていたリングシューズを賭け孫娘の白鷺 美智子と闘った際、それらしい話は聴かせて貰っている。
しかし、試合内容まで詳しく語られたのは、恐らくこれが初めてだったようにアンナは思った。
何せ、ボクシングの話題は殆ど話さないのだ。
チャンピオンになった後、心無い者達によって拳を砕かれた過去を持っていては、それもやむなしなのかも知れない。

会話に花を咲かせているうちに、車は目的の場所へ到着。一同は揃って沼田ジムへと足を踏み入れた。

「こんばんはー」

梨沙の挨拶が、喧騒満ちる練習場へ掻き消える。大人数が一斉に入ってきた事で、練習生たちが一瞬視線をそちらに向けるものの、梨沙と分かるとすぐに自分の練習へ戻った。
梨沙が家族を伴ってジムを訪れるのは、これが1回や2回ではないらしい。

会長室へ向かい、梨沙は予め話を通していたのか皆を中へ招き入れていく。そんな中、「あれ、城之内さん?」と疑問形で呼び止められ、アンナは後ろを振り向く。

艶やかな髪を後頭部で上手くシニヨンに纏め、真っ白なジャージに身を包み、両拳にはバンデージ。形の良い整った目鼻立ち。

品森高校のアイドル、弥栄 千恵子の姿がそこにあった。





to be continued……
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コメント

No title

アンナちゃん、ジムも決まりそうで何よりだわね!w
謎の教会ボクシングジムの選手でも似合っていそうだったけどwww

シスター服で入場するアンナちゃんとか見たかったーwww

そして謎の暴苦針具集団罵血館が強襲、アンナちゃんと死闘!!www(どこの塾だ!!ww

越花や秋奈らと比べても1歩出遅れた感のあるアンナですが、今回のエピソードでようやく決まりそうな流れになりました。
シスター服を模したガウン、というのも面白かったかもですねw
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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