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第31話 『決意の再確認』

 プロボクシング編、第31話です。



<拍手返信>
・ぴーこ様:久野と美智子がリングで向かい合って、まぁ上品なスパーリングにはならないのは充分想定内でしたね。結局バチバチの打ち合いに……
このスパーを見て、ナミも奮起する事でしょうw

・ヨシコ様:進、予想してたイメージに反してましたか。元々インテリマッチョをイメージしてたのであんな感じに落ち着きました。あまり個性的な描き分けが出来てないのが残念な所かも……





プロテスト、その実技テストでまさかの顔合わせとなった、久野と美智子。
お互い一進一退のせめぎ合いを見せ、それを観戦したアンナは触発されたように声を高らかに宣言するのだった。
「私もプロボクサーになりたい!」と。それから日は過ぎ、ある日の事……













 植木 四五郎は、明らかに緊張していた。東 久野と白鷺 美智子が受けた、10月のプロテストから早くも1ヶ月が過ぎ、外の気温も冷え込みを感じさせるようになった季節。
植木はナミの父親から、久しぶりに鍋でもどうか? と夕飯に誘われた。植木家と下司家は家族ぐるみの付き合いで、いわば四五郎にとっても彼らは家族のようなもの。
よって、遠慮する理由など皆無。
そうして下司家に呼ばれた植木は、卓を囲む1人として、その家族会議に参加する事となったのであった。

緊張の理由たる、会議の内容は以下の通り。

「四五郎もいる事だし、ここいらでもう1度ちゃんと確認しておこうと思う。ナミ、お前は本当にその、プロボクサーになるつもりなのか?」

「なに父ちゃん、いまさら? ずっとそう言ってるじゃない」

「それは知ってる。だがな、お前本当にそれで後悔しないと言い切れるのか?」

「後悔って……するわけないよ」

「俺もな、ナミが頑張ってるのは知ってるし、活躍する姿を見るのは嬉しい。だがな、プロはアマチュアと違って防具とかはないだろ? 引き合いに出して悪いが、そこの四五郎も目を怪我して辞めてる。正直、後悔はあったと思う」

「いや、俺は……」

「お前もそうならない保証はないだろう、ナミ? いや、もしかしたらもっと酷い後遺症を残す可能性もあるわけだ」

「そんな事……とっくの昔に覚悟の上よ。ジムで初めてスパーした時からね」

およそこのような流れ。ナミはどんな怪我や後遺症の可能性を仄めかされようと、その覚悟が些かも揺らぐ事はなかった。
当然だ。例え試合のアクシデントで2度と目を覚まさなかったとしても、後悔だけはしないと断言出来る。
それ程までに、ナミのボクシングへの情熱は固いものだった。

「そうか。これだけ言っても決意は揺らがんか……よし、合格だ!」

娘の鋼の意志を確認した事で、父は力強く頷く。ここまで言ってもナミは自分の意志を曲げようとはしなかった。

揺らぎすらしなかった。

言葉通り、最悪の事態になったとしても後悔だけはしないだろう。

「もう俺はこの件でお前の邪魔はせん。心配は消えた訳じゃないが、黙って見守るとしよう」

穏やかな声でプロ入りを認めた父に、深々と頭を下げるナミ。そこで話が終われば綺麗に纏まったのだが、ここで1つの爆弾が投下された。

「父ちゃん、母ちゃん。わたしもプロボクサーになるつもりだから。で、いつか姉ちゃんと闘うの」

今まで父と娘のやりとりを黙って聞いていたサラから、衝撃の発言が出たのである。
これには父と母が目を丸くし、ナミと植木は無言。
サラの双子の弟となるタクトは、無言なのは同じだがどこか不愉快そうな表情を覗かせていた。

「な、お前……ナミと闘いたいって」
「本気で言ってるの!?」

目を丸くしたまま、両親はサラを問い詰める。言葉の裏に、僅かばかりの非難を乗せて。

「ほ、本気だもん。プロボクサーになって、姉ちゃんに勝つのがわたしの目標なんだから!」

両親の言葉に詰まりながら、それでもサラは姉との対戦を熱望。
その後も両親とサラ、さらにタクトも加わっての話し合いは続いたが、植木は無言を貫いた。
ナミも沈黙を守るのみ。

ナミとて、どうしても闘いたい相手はいる。かつて植木にもいた事だろう。
サラにとって、その相手が自分であった……ただそれだけ。
勿論、実の姉妹だけに単純ならざる感情も入り混じってはいる。しかし、いざ“その時”が来たら受けない訳にはいかない。

いつか2人は本気でぶつかる事になる

ナミも植木も、無言の中でそう確信するのだった。



 結局サラの熱意に押されプロ入りを容認する形で一応の決着とし、タクトの「もう腹減った」の一声により夕飯となった。
親元を離れ一人暮らしを始めて長い植木は、久方ぶりに多人数で囲む鍋に舌鼓を打ち、多いに笑った。

後片付けも済み、時刻はPM10:40。ナミたちはそれぞれ部屋へ帰り、居間には両親と植木の3人がくつろいでいた。

「そうだ。四五郎、ちょっと付き合わんか?」

家長である克也(かつや)が妻・野枝(のえ)に指示し、一旦姿を消す。次に現れた時、その手には結構な大きさの瓶が携えられていた。

「俺の秘蔵の酒だ。タクト辺りが成人したら一緒に呑もうかと思ってたんだが、ちょうど良い機会だからな」

「あ、いいですね。ご相伴に与(あずか)りましょう」

克也の提案を、穏やかな笑みを見せ受ける植木。彼も小さい頃は相当なやんちゃ坊主で、町での喧嘩など日常茶飯事の毎日。
あまりに見かねた克也が、知り合いの山之井 敦史(やまのい あつし)が経営するボクシングジムへ通わせ、植木はボクシングの魅力を知ると同時に更生する事が出来た。
植木にとって克也は、いわば恩人のようなものなのである。
数少ない、頭の上がらない人物だった。



透明な液体を注いだグラスを、チンと鳴らす3人。それからしばらくは、無言でほんのり甘い味を舌で転がした。
1番早くグラスを空けた野枝は、「せっかくだし、おつまみでも出しましょうか」とキッチンの方へと向かっていった。

「なあ、四五郎」

ふと、克也が口を開く。ひと口ひと口を楽しんでいた植木は、その声に克也の方を見やる。

「なんです?」

「ナミとサラの事なんだが……」

神妙な面持ちで、グラスにたゆたう液体を眺めたままの克也。

「気持ちは分かる……とは言えないですね。俺はまだ独り身だし。でも、多分止められませんよ」

克也の言いたい事を察した植木は、先を制するように答えた。残念ながら、子を案ずる親の気持ちより、ボクサーとしての心情の方が彼にはより理解出来るのだ。

「あの2人はプロのリングでぶつかり合う、と俺は思います。そして、多分その時俺は……俺たちはただ見守るしか出来ないでしょう」

そうか、とどこか観念した素振りを見せる克也。

「我が娘ながら、なんで2人ともボクシングにのめり込んだんだか……まあ今さら止める気もないが。で、四五郎。どうなんだ、あの子らは?」

プロで通用するのか? 言外にそう匂わせつつ、克也は四五郎の評を仰ぐ。

「そうですね」

グラスの酒をクイと口に付け、植木は暫しの熟考に入った。

「ナミ坊の方は文句なしに通用します。会長(おや)っさんも宗観の奴も優秀なトレーナーだし、あいつの長所も短所も良く知ってる。才能もある。間違いなく世界に打って出られますよ」

ナミに関しては、植木が今更口出しするのも憚られる。会長っさんと呼ぶ山之井 敦史や後輩の吉川 宗観(よしかわ そうかん)が、優秀なトレーナーなのは偽らざる事実であるし、ナミ自身も高い素質を秘めているのは確か。
現に、今までに幾つもの実績を打ち立ててきた。

「そうか。お前や会長さんのお墨付きがあるなら、まあ……」

安心出来る、という言葉は喉から出てこなかった。たとえどんな名トレーナーに太鼓判を押されようと、一抹の不安が過ぎるのは仕方のない事だろう。
競技化しているといえど、娘たちが飛び込んでいくのは過酷な殴り合いの世界なのだから。

「で、サラの方はどうなんだ? あいつは……ナミになにか恨みとかがあるんだろうか」

ナミの方は一旦置き、克也は妹のサラについて訊ねた。
小学生の頃からジムに通わせたナミはともかく、高校に入るまで大して身体を動かすような事もなく過ごしてきたサラが、ボクシングを始める理由が思いつかないのだ。

一念発起して、という可能性は、勿論ある。身近で活躍してきた姉を目標とするのも、まだ理解の範疇。
だが、サラの言いようは姉を『標的』とするものだった。
実の姉と殴り合い、そして勝つなど、普通では考えられない。

「確執とか、そういった感じは見えないですね。少なくとも部活であの2人を見てる感じでは」

克也の不安を和らげるように、植木はサラについて答える。事実、校内での彼女らの接し方は仲の良い姉妹そのものにしか見えなかった。
部活では立場上厳しい言葉もぶつける場面もあるが、部活が終われば普段通りに戻っている。

「高校に入ってからのサラの心境はよく分かりません。あと、素質の方も」

植木は、ある意味素直な感想を口にした。指導者としてこの回答もどうかと思うが、サラに関してはまだ殆どが未知数と言わざるを得ない。
植木から見た所、基本的には尖った部分のない、ごく平凡な能力に思える。
しかし、それはまだボクシングを始めて間もないからで、実は姉に勝る才能を秘めていたとして何ら不思議はない。
そこを早い段階で見つけ出し、伸ばしてやるのが指導者としての自分の役目だ、と感じる植木であった。



 克也や野枝と酒盛りに興じ、時間は0:20。ほろ酔いの植木を送る為、タクトが付き添う事となった。

「大丈夫か? 四五郎さん」

肩を貸しながら、タクトが心配そうな表情で兄代わりの男を見る。

「んあぁ~、だいじょうぶだよぉ」

顔を赤くし、微妙に呂律の回らない口調で答える植木。ホントに大丈夫かよ、と呆れ顔でタクトはしっかり肩を入れ直す。
しかし、とタクトは改めて植木をまじまじと見つめる。

(四五郎さんって、こんなに小っさかったっけ。ガキの頃はもっとデカく見えたもんだけど)

170cm程度の植木に比べ、バスケット部に所属するタクトは180cmを越す。今にして思えば大して大きくはない体格なのに、そんな彼がとても頼もしい。
身長だけは越えても、タクトにとってやはり植木は兄貴なのだ。

「……なにかと手のかかる姉ちゃんたちだけど、よろしく頼むよ。四五郎さん」

聞こえるかどうかという声量の、タクトの呟き。それに対し、はっきりと植木は返答した。

「おう。任せとけ」





to be continued……
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コメント

No title

サラちゃんの真意はまだわからないのよねー。
憧れから、目指したい相手になったから倒したいとかそんな感じかしらね。

11月ってことは来月アンナちゃんの誕生日だけどプロテストは来年までお預けかしら??

新規イラスト見たわよー、柊ちゃん一層美人になったわねー。

サラがどういった気持ちで姉と闘いたいと思っているのか? それはまだ不明ですが、良い読みしてますw
そしてプロボクサーになりたい宣言をしたアンナ、確かに誕生日は12月ですがいかんせんボクシングジムに入っていないという致命的理由が……
あと、イラストの感想も重ねてありがとうございます。まだまだ精進あるのみですよホント(^^;)
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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