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第12話

 第12話です。

男子部との試合のメンバーも集まり、わずかずつながら順調に前進する光陵女子ボクシング部。そして、運命の日はもう目前に迫ってきていた。




 空手部主将・東 久野(あずま ひさの)が女子ボクシング部の練習に参加してから、早くも1週間が過ぎようとしていた。やはり基礎がしっかりしている為か、それとも元々覚えが早いのか……東は既に基本姿勢をものにしつつあるようだ。
他の部員たちも、ジャブ・ストレートを中心としたパンチの練習へと移行していた。そんな中……

「シュッ、シュッ……」

高頭 柊(たかとう しゅう)の成長ぶりは凄まじく、ジャブやストレートのスピードが他の部員たちに比べて頭1つ分程抜けている感じであった。それに続いて、城之内(じょうのうち)アンナ、畑山 久美子(はたけやま くみこ)らも柊の隣で彼女程ではないものの、それなりに形になってパンチを放っていく。

葉月 越花(はづき えつか)、桜 順子(さくら じゅんこ)はやはり前半の基礎トレーニングに付いてくるので精一杯、といった状態で技術的な部分は他の部員らと比べ若干遅れ気味である事が、ナミには心配の種となっていた。


「よし、今日はこれまで!」

 顧問・植木 四五郎(うえき しごろう)の声が部室内に響き、その日の練習を終えた部員たちはそれぞれ後片付けに取り掛かっていく。ナミもモップで床を掃除している最中、

「下司(しもつかさ)、ちょっと来い」

植木に呼ばれたナミは、部室を出て彼の元へ向かった。部室の外へ出て植木の元へ来たナミは、

「どうしたの? 四五兄ィ」

いつもの親しげな口調で呼び出しの理由を訊ねる。

「ああ、今度の男子部との試合の事なんだが、な……」

植木はナミの方を見ながらも、何か言い出し辛そうな表情を浮かべ、

「なぁナミ坊。お前、今度の試合……1つ階級を上げてフライ級でやってくれねえか?」

とだけ伝えた。


「……え? なんで急に………」

 いきなりの階級変更を伝えられ、ナミは戸惑いが隠し切れない様子を見せつつもその言葉の意味を問い返す。

「えっとだな。元々フライ級が空枠で、ライト・フライ級も高頭と加藤さん、2人いるんだよ。男子部との調整をしてたらライト・フライ級の奴が2人しかいなくてな……それでお前にこうやってお願いしてるんだよ」

ナミの問いに対する、それが植木の答えだった。


 ナミは少し考えてみる。今更部外者である加藤さんに階級の変更をお願いする訳にもいかないし、柊もまだボクシングを始めて間もない。しかも、ナミよりも身体の線が細い柊の場合下手をすれば増量をしなければならないかも知れない、という危惧があった。

(確かに……わたしが1番適任か)

ナミは決意し、

「分かったわ。わたし、フライ級でいいよ」

植木の階級変更案に、受諾する旨を伝えた。





 ナミがそれぞれ毎日の練習をこなし、彼女も1階級上に上げる為の準備を滞りなく進め、いよいよ男子ボクシング部との対決が明日へと近付いていた。

ナミが見た所、期待が持てそうなのは柊、夕貴(ゆうき)、久美子、東、そしてナミ自身の5人。
順子、越花は……本来ならまだ試合に出していい状態とは言えない為に厳しい所。
アンナは……さすがに我聞 鉄平(がもん てっぺい)が相手では荷が重いだろう。

以上の分析であった。


 植木は部室での練習終了後、皆を集め最終ミーティングを開いていく。大内山 由起(おおうちやま ゆき)が自前の情報を元に作成したらしい、対戦相手のデータを綴った資料を各部員に手渡す。資料が全員の元に行き渡ると、植木が各自の対戦相手の特徴を細かく説明し、対策を伝えていった。

「………以上だ。女子ボクシング部が正式に認められるかどうかの大事な試合だ。が……無理はしなくていいぞ。お前らは殆どがまだボクシングを始めたばかりのヒヨッコなんだからな。無理と思ったらすぐに止めるぞ」

植木は最後にそう言い残すと皆に解散を促した。掃除を済ませ帰路につくものの皆一様に口数も少なく、順子などは明らかに緊張の面持ちを隠せないでいる。

「ねぇ桜さん。大丈夫?」

心配になったナミは、順子に声をかけるもののガチガチに緊張した表情を浮かべながら、「だ、大丈夫よ……」としか返してこなかった。そこへ久美子が割って入り、

「下司さん。順子、アガリ症なのよ。私たち、家がお隣同士だからケアは任せてもらえない?」

順子を連れて帰っていった。


 その日はナミも含め全員が帰り、各々が明日の試合の事を大なり小なりと考えながら期待や不安を感じつつ夜が更けていき……遂に決戦当日の朝を迎える事となった。ナミは、今日という日が女子ボクシング部の明暗を分ける日になるのかと思うとあまり眠れなかったのだが……普段から早く起きる生活が日課となっているからか、AM5:30にはもう目が覚めてしまっていた。

(はぁ。習慣って怖いわね)

などと思いながらも、気付けばトレーニングウェアに着替えシューズの紐を結んでいる自分がいる事に思わず苦笑が漏れ落ちる。せめてもの抵抗とばかりにあくびが出たが、再び眠気を呼ぶには至らなかった。





 4月24日。この日は土曜日で学校は休みである。試合時間はAM11:00から、場所は男子ボクシング部室という事で、部員たちには1時間前に集合しておくように伝えてある。
ナミが男子ボクシング部室に到着した時点で既に柊、越花、夕貴と片山 那智(かたやま なち)が揃っていた。程なく久美子と順子、由起が到着し、後はアンナと東を残すのみとなった。

AM9:50。空手部に顔を出していたという東が、空手着のままナミたちの前に姿を現す。

AM10:00。アンナは姿を見せない。何かあったのか? と心配になり、ナミは由起に連絡を取って貰う事にした一方で部員たちにアップを始めるよう指示した。

ナミも混ざってのアップを済ませ、再び男子ボクシング部に戻る。そこで、部員たちは制服姿のアンナが植木に説教を受ける場面に遭遇する事となった。大急ぎで走ってきたのだろう、額から大粒の汗を滴らせ息を整えている。
部員が戻ってきたからか、植木は説教を止めナミたちに合流するよう伝えると由起を従えて男子部室に入っていく。


「もう、10時集合って言ったでしょうが! なにやってたのよ。寝坊?」

 もう植木に充分絞られたであろう事は下を俯く彼女を見れば一目瞭然である。だが、それでもナミは一言言わずにはいられなかった。しばらくの間アンナは沈黙を守っていたが、

「昨日、家に帰ったらビデオが壊れて……」

下を俯いていたアンナが、突如呟き始める。

「どうしても見たい深夜アニメがあって………」

深夜アニメ、の辺りで何故かアンナは顔を少し赤くしていた事に、ナミは疑問を抱いたが深くツッコむのはやめにした。代わりに大きな溜息をひとつ、皮肉を込めてついてやる事にした。

(深夜アニメ見てて寝坊だなんて……肝が据わってるのやら、ただのバカなのやら……)

ナミは、この城之内 アンナというイタリアンハーフの少女に対する評価を改めざるを得ないな……と思うのだった。


 そんなやり取りが終わったのを見計らったのかは不明だが、ちょうどアンナに着替えるよう指示した時に、

「そろそろ時間だ。準備はいいか?」

男子部室の中から主将・桃生(ものう)が声を掛けてきた。

「あ、ハイ。今行きます」

ナミは桃生に答えると、部員たちに部室に入るよう伝え自身もそれに倣うように決戦場に足を踏み入れる。男子部室に入ると、桃生をはじめとした今日試合をするであろう男子部員たちが、緋色のジャージ、白のトランクスに身を包みナミたちを待ち構えていた。
その光景に気圧されたのか、幾人かの女子部員から喉を鳴らす音がナミの鼓膜に伝わる。

「こちらの準備はもう出来ている。早く更衣室で試合着に着替えて来い」

桃生から、相変わらずの尊大な物言いで着替えを促され、一年生の案内により更衣室へと入った。早速着替えを始めるナミたち。ボクシングを始めて間もない越花やアンナ、順子は当然試合着など持っている訳もなく、体操着に着替える。

柊はといえば、Tシャツにスポーツブラ、下は短パンと、ちゃっかり自分用の服を持ってきていた。しかも、汗でブラが透けないよう生地の厚い物を選んでいる周到さである。

東は、上は厚めのスポーツブラ、下は白のスパッツを着用。てっきり空手着かと思っていたのだが、「空手着にシューズは邪道よ」との持論を展開されてしまっては何も言えない。

久美子はキックボクシング用の少し膝丈の短いトランクスにTシャツを着用。ナミと夕貴は経験者だけあって、ナミは緑、夕貴は黒を基調とした試合用のコスチュームとボクシングシューズを持参してきていた。


 全員が着替え終わると、今度は手分けして皆の拳にバンテージを巻いていく。この頃には、順子も拙い手つきながら1人で巻けるようになっている。
準備が整い更衣室から出ると、信じられない事に部室の周りに物凄い数のギャラリーが出来上がっていた。学校指定の制服が大部分を占めている辺り、ここの生徒たちのようだ。

「さてと、役者は全員揃った訳だし早速始めるか」

リング内を1人で牛耳っている植木が、桃生とナミに向かって試合の開始を促す。

「ええ、植木先生。今日はレフェリー、よろしくお願いします」

権限を行使して顧問を辞任させた……とはとても思えない態度で、桃生は植木に対し形式上だけは非の打ち所のない作法で頭を下げる。

「こっちも準備OKよ」

桃生の態度に腹立たしい物を感じつつも、ナミは植木の言葉に応じるのだった……




to be continued……
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チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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