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光陵高校女子ボクシング部・別話【格闘令嬢、リングを舞う(前編)】

 本編は一時お休みさせて頂いて、外伝的なお話を挟みたいと思います。今回は試験的に挿絵を加えてみました……照明って難しいですorz



<拍手返信>
・ぴーこ様:奈々子のエピソードはとある漫画のパロディみたいなものなので、実は詳しく考えてなかったりします(汗) ネタに困ったりした時はちょっと考えてみようかな?
2度目のI・Hはナミと雪菜が優勝、アンナが準優勝と普通に考えたらかなり出来すぎな一方で越花辺りが普通に負けてたりと、両極端な印象を与えたかも知れません。まぁ越花の再戦の話は記憶が風化した頃にポコッとやると思います。
夕貴も最初の貫禄からは予想もつかないスランプぶりですが、今は耐える時期かと(笑)





「お嬢様、完璧です」


 無機質のガラス玉を連想させる眼差しで、中年トレーナーがサンドバッグに抱きつき大滝の汗を流す女性を褒めそやす。

「はぁ、はぁ。ありがとう、ございます」

背中に艶やかなロングヘアーを貼り付けさせ、お嬢様と呼ばれた女性……新堂 早弥香(しんどう さやか)は肩を上下させながら苦笑した。
時は、2011年・9月。
夏真っ盛りの季節に、早弥香は地元・京都にある新堂スポーツクラブでトレーニングに励んでいた。

小学生の時に憧れの男子に惹かれて柔道を始めて以来、中学の時には空手へ転向し、その全てに於いて日本一となった彼女。
その吸収力の良さと適応力、天性の身体能力から、いつしか“格闘令嬢”などと呼ばれるようになったのだが、そんな事は彼女にとって些末な事でしかない。

高校からはまたも一転してボクシングを始めたものの、不思議とまだ日本一になれていなかった。
そんな彼女が、プロへ進んだのには事情がある。


師・新田 裕希子(にった ゆきこ)の現役引退


これが、早弥香のプロ入りを早めた理由であった。
業界関係者から“未冠の女帝”と言われ続けた裕希子は、世界タイトルマッチ初挑戦でチャンピオンのパンチによってアゴの骨を砕かれた末にKO負けを喫し、遂には汚名を返上する事は叶わなかった。
裕希子に教えを受けていた早弥香が、これにショックを受けないわけはない。
階級は違えど師の夢を変わりに果たしたいという、弟子の心情といえた。

故に、本来ならとても喜ばしい筈のデビュー戦。
だが、早弥香の表情に歓喜はなかった。

今この場に裕希子がいないからだ。

ロンドンオリンピックの女子ボクシング正式採用に伴って発足された委員会の中に、特別顧問という形で裕希子が選出されており、そちらに掛かりっきりになっているからである。
これから共に歩んでいくべき、尊敬する裕希子が最初の第一歩からいない。
これには、早弥香は大きく意気を挫かれた。

相手はアマチュアで30戦以上のキャリアを持ち、勝率9割以上を誇る、尾崎 玻璃子(おざき はりこ)。
これは、普通の相手では早弥香のネームバリューを恐れてジム側がオファーを受けてくれなかった事と、両親が早弥香にボクシングを辞めさせるべく取った処置でもあった。
プロボクサーになる旨を伝えた時、「もし1回でも負けたら直ちにボクシングを辞める事」と条件を付けられている。

もし1回でも負けるようなら頂点を取る器ではない、と見なされるのだそうだ。
正直呆れもしたが、ようは負けなければいいだけの話だと前向きに考えるようにした。
否、考えなければやっていられない。
玻璃子は確かに強敵だが、裕希子と組めばどんな相手でも無様に負けはしない……そう思っていた。

しかし、デビュー戦に裕希子はいない。背中を支えるような、温かい激を飛ばしてはくれない。
今自分を支える場所に立つのは、大財閥の令嬢としか見れず無難な言葉しか吐けない男。

溜息のひとつでも吐きたい気持ちをぐっと飲み込み、早弥香は自分に厳しいトレーニングを課すのであった。



 時は流れ、10月に入りいよいよプロボクサー・新堂 早弥香のプロデビュー戦の日がやってきた。
これからの女子プロボクシング界を引っ張る逸材として、TVやマスコミ等からの後押しを受けた早弥香の試合は、何と前座ではなく男子の日本タイトルマッチの前哨戦としてマッチング。
普通では有り得ない破格の待遇といえよう。

逆に、いきなりの大抜擢はプレッシャーも相当あるだろう。
しかし、大舞台には慣れているのか控え室の早弥香は暢気にマンガを読み漁っていた。
それは彼女の愛読書。そこには、1度深くダッキングし反動をつけてから大きく伸び上がり、ストレートで相手のアゴを打ち上げるプロボクサーの主人公が描かれていた。

「はぁ、やはり何度見ても恰好良いです」

漫画のキャラクターにウットリ視線を送る、“格闘令嬢”の姿。これには、同室した他の選手たちから奇異の目で見られていた。
そんな中、ドアがそっと開けられインスペクターにバンデージチェック、その後はグローブを着けられてしまった為、ささやかな楽しみの時間を終えた早弥香は暖気を始めるのであった。



 会場内を覆う異様な熱気をその身に浴び、セコンド陣に囲まれ早弥香は花道へと姿を現す。瞬間、まるでメインイベントかのような大喝采が沸き起こった。

女子プロボクシングを知るシビアなファンも
あまり知らないファンも
TVや雑誌で早弥香の美貌を知り一目見ようと足を運んだ者も

この時ばかりは奇妙な一体感を以て早弥香へと熱い視線を送る。今や、新堂 早弥香は注目度No.1の人気選手といえた。
これが脚色された虚構のアイドルなのか、そうでないのかはもうじき始まる試合の結果次第。



 リング中央で、レフェリーに諸注意を受ける早弥香と尾崎 玻璃子。肌にうっすら浮かぶ珠の汗は、どちらも暖気済みの証左。
肩に掛かるかどうかのセミロングを、前髪から完全に後ろへ流している玻璃子。
紫地に白いサイドラインの入ったスポーツブラ、同色で揃えたトランクス、白一色のシューズに赤のグローブ姿の玻璃子は、口元を微かに歪め挑発的な視線をぶつける。
人気絶頂の早弥香を逆に倒して自分の実力を見せつけてやる! という、自信の程を窺わせる態度だ。

ふてぶてしい、と早弥香は思わなかった。

負ける為にリングに上がる者などいる訳がない、と信じて疑わないからだ。
去年のI・Hでは若輩の一年生に僅か1Rで敗れたと聞いたが、単に噛み合わせが悪かっただけの事と思っている。
少なくとも、甘く見ていい相手でないのだけは確か。強敵を前に、やはり裕希子の不在は不安材料ではある。
しかし、その裕希子とこれからのチャンピオンロードを共に歩む為、プロ生活をこんな所で終わりにさせない為にも、1人で乗り切る覚悟を決める早弥香であった。





    早弥香vs玻璃子(1)





「お嬢様、相手はアマチュア経験豊富な強敵です。まずは初回、出方を見ましょう」

 チーフセコンドを務める中年男性が、早弥香に当たり障りのない指示を出す。それを一応耳に留め、心の中で溜息をひとつ。
裕希子程の信頼関係を築けていないせいもあるだろうが、どうにも波長が合わない。
何より、遠慮しているのか深くまで踏み込んでこないのだ。
裕希子なら容赦なく叱るだろう場面でも、彼からそういった言葉は終ぞ聞く事はなかった。

(彼もさぞやり辛い事でしょうね。でも……)

憐憫の情を催すと同時に、僅かばかりの不満を混在させ、早弥香はセコンドに無言で頷くとスツールから立ち上がる。
たった1人の闘いの幕開けであった。





to be continued……
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コメント

No title

早弥香お嬢様、漫画オタwww

対戦相手は、モブに収まりそうに無い挿し絵付きと言う破格の待遇!?
強敵の予感だわね。
早弥香お嬢様との対峙シーンなかなか素敵だわ!

早弥香は正直かなりの変わり者で、普通に控え室へ愛読書を持ち込んでしまうような間性の持ち主だったりします。
玻璃子は今の所キャラ紹介する予定はないですけど、イラストがあった方がイメージしやすいかと思いまして。
そんな2人の試合の様子は後編までお待ちください。
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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