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第19話 『試練の夏合宿(2) 克服すべきもの 大江戸 進の提案』

 プロボクシング編、第19話です。今回はどういう訳かコメント欄に返信出来なかったので、こちらでお返しさせて頂きます。

<拍手返信>

・M.E.R.A.様>こちらでは初めまして。リンクの絵との関連性は特に考えてませんでしたが、確かに上手くすれば繋がるやも知れませんね。アンナは……意欲が沸いたらまた考えてみます。

・クリロベー様>やはりインファイターの夕貴はピンチに陥る危険性が高いだろうな、と思って描いてみた次第です。ボクサーにピンチは付き物ですよね?

・ぴーこ様>おっとり越花とラフファイトもありな晶の闘い、確かにどうなるか1番気になるカードかも知れません。もうちょっと先になりますが、気長にお待ち頂ければ幸いです。

・マサト様>感想ありがとうございます。こんな拙い絵で恐縮ですが、なにかと妄想して頂けるならありがたい限りですね。朝晩の冷え込みが本格的に厳しくなってくる時期になりましたが、お体をご自愛下さい。





光陵女子ボクシング部にとって、2年目の夏合宿が始まった。新人インストラクター、巨漢の大江戸 進を新たに加え密度の濃い練習を積み始めていく。
そんな初日の夜、ナミはI・H出場の為の部内選考、その全対戦表を植木に見せられるのであった。









「んー、やっぱり……」

 湘南スポーツセンターの一室、DVDを視聴出来る部屋に籠もり、インストラクター大江戸 進(おおえど すすむ)は唸っていた。
TVに映っているのは、女子学生同士によるアマチュアボクシングの試合の様子。ランニングシャツの背後に付けられたゼッケンには、『光陵 杉山』という文字が見える。
それは、由起が持参してきていた、ある公式戦での試合のものであった。その試合で都亀は良い動きを見せたものの、後半になるにつれて失速。判定で敗北を喫してしまった。
特に最終第3Rは全く良い所がなく、あわやRSCになろうかという状態である。

だが、進が唸ったのは試合そのものに対してではない。

「うーん」

試合が終わり、対戦相手の腕が掲げられ拍手が湧き上がった所でDVDを停止する。進は、ボクシングに関しては素人である。彼が気になったのは、ただ1つの事だった。

「左アキレス腱の後遺症、か……」



「スピード落ちてるぞ、もっと速くッ!」

 トレーニングルームに、植木の怒号が響く。夏合宿は、3日目を迎えていた。疲労の見え隠れしてきた部員が多い中、ナミや雪菜らスタミナも経験も豊富なメンバーが叱咤激励してくれるおかげで、この時点で脱落者はない。
進も筋力トレーニングのコーチングをする傍ら、部員たちのチェックは欠かさなかった。

まだスタミナに不安のある者は、

桃生 詩織
下司 サラ
室町 晶
そして、知念 心。

心に関しては、巧みなペース配分により誤魔化してはいるものの、絶対的に足りないように見える。逆に、順子やアンナは筋力もスタミナも充分合格ラインといえよう。
越花や都亀、秋奈などは筋肉さえつけば、少なくとも予選であっさり負けるような事もないように思えた。

各部員の状態を見ていく上で、進が気になるのはやはり都亀。練習を見る限り、アキレス腱に爆弾を抱えている様子は窺えない。
むしろ、動き自体は高水準といっていいだろう。
だが、いざ試合に出てみれば練習時の8割も実力が引き出せてはおらず、後半になるとその動きは極端に鈍る。

特に顕著に現れるのが、左足の引きずり。単純なスタミナ切れ、という訳でもなさそうな印象を進は受けた。

(となると、理由は恐らく……)

筋力トレーニングに励む部員の様子をチェックしつつ、進は確かめるべきと考えた。



 3日目の猛練習が終わり、クールダウンしている時の事。進は、都亀を呼び出しベンチに座らせると、おもむろに左アキレス腱の辺りに触れてみた。

「ッ!?」

いきなり大男に触れられた事で驚いたのか、ビクッと肩を竦ませる都亀。だがそんな事はお構いなしに進は自らの手を這わせ、或いは揉み、アキレス腱と周囲の筋肉の状態を入念に確認していく。
それが数分に渡って続けられた後、進はふうっと息を吐き出すと立ち上がり白い歯を覗かせ微笑んでみせた。

「うん、大丈夫。僕の見た所、君の左足に爆弾はなさそうだ」

1人やり終えた男の表情で、額に浮かんだ汗を拭う。

「あ、あの……爆弾って」

「中学の時にアキレス腱断裂したんだって? 植木先生から聞いて、ちょっと気になってね。試合の様子も見せてもらった。決まって後半で足を引きずってるようだったから、まさかと思ってたんだけど……」

そう言ってひと息置く。次にまたも白い歯を光らせ、

「僕が思ってた以上に、君の左足に問題はなかった。ちゃんと完治してるよ、アキレス腱」

訝る都亀に断言してみせた。


「はぁ? アンタになんでそんな事が分かるんだよ。知ったような顔して」

時間を取って悪かったね、と引き揚げようとしていた進に、待ったをかける声が1つ。

心である。都亀が退部騒動を起こしたきっかけとなった、試合での黒星続き。その遠因を辿っていけば、行き着く所が左アキレス腱の不安にあるのは間違いない。
それは彼女にとって簡単ならざる問題であり、また苦悩の素である筈だ。
軽々しく結論付けていいものでは、決してなかった。

それを、幾らか触っただけの男が、あっさり問題ないと言い切った。
言い切ってしまった。


何の根拠があってそんなに軽々しく言い切ったのか!


長い間苦悩してきたであろう都亀の心情を思いやると、つい食いついてしまっていた。

「こう見えても、僕はPT(理学療法士)の資格なんかも持ってる。リハビリに関してプロだ。本来ならもっとじっくり検査したりもするんだろうけど、その必要すら感じないくらい彼女の足は直ってるよ」

睨みつける心をサラリと受け流し、冷静に答える進。

「だったら、なんで杉山は試合でいつも足を引きずるようになるのさ?」

今ひとつ納得に至らない心が、さらに巨漢へと食らいつく。

「原因は1つ。彼女の潜在意識が怖がってるからだよ。『無理をしたらまたアキレス腱が切れるかも知れない、またあの激痛が襲ってくるかも知れない』ってね」

心のぶつけてきた疑問に、進はそちらを見ず正面の都亀へ視線を向けながら言葉を紡ぐ。見つめられた当の都亀は、無言だった。
ことさらこの問答に興味がなかった、という訳ではない。進の目を見た瞬間、固まってしまったのだ。

そして彼の口から出た、原因。

図星だった。潜在意識などではなく、無理をすれば再び断裂するかも知れない……そういう恐怖は常に彼女の中でチラつく。
いざ試合で劣勢に追い込まれると気持ちが弱くなり、そういう時に恐怖が鎌首をもたげてくるのだ。

見つめてくる進の目は、それらを全て見透かしているのではないか?

都亀にはそう映った。

「下司主将」

しんと静まり返ったトレーニングルーム。そこへ、ふと進がナミに話を振る。

「はい?」

「合宿6日目って、確か部内選考とか言うのがあるんだったよね?」

「はい、あります」

「悪いんだけど、その日に1戦追加して貰っていいかい?」

話を続ける内、ナミは進がやろうとしている事……その意図に感づいた。

「いいですよ。相手はわたしで構いませんよね? ちょうどその日は手が空いてますし」

まだ意図の読めない部員たちに、このナミの言葉は実に不可解極まった事だろう。だが、発起人たる進はこの発言に満足げな表情を浮かべてみせた。

「いやあ、話が早くって助かるよ。杉山君、6日目の部内選考で君と下司君とで1戦やって貰うからよろしく」

「えぇ!?」
「はぁ!?」

2人の間だけで取り決められた決定事項に、都亀と心が同時に叫ぶ。

「ち、ちょっと待った。俺を差し置いて勝手に決めんでくれ。なにを狙ってるのかは大体読めたが、本当に上手くいくのか。大江戸君?」

部外者の勝手な決定にまたも食いかかろうとした心を制し、植木が動く。危険な賭けのように思えたからである。

「なあに。心配は無用ですよ、植木先生。ちゃんと勝算はありますから」



 結局、進の自信に一縷の望みを託すという形で、6日目の部内選考に急遽ナミと都亀の試合が決定。皆は練習後の汗を流すべくシャワールームへ向かっていた。

「なんだかよく分からないうちに試合、なんて事になっちゃったね、はは……迷惑かけるかも知れないけど、お手柔らかにね。下司さん」

途中、さも申し訳なさそうに都亀が口を挟む。

「なに言ってんの? 迷惑なんて、そんな事あるわけないじゃない。思いっきりぶつかってきていいからね、杉山さん」

俯き加減の都亀に、グッと左腕に力こぶを作りつつ努めて明るく返すナミ。正直な所、彼女としては今回の話は渡りに船といった心境といえよう。
先の退部騒動に関して、結局何の力にもなれなかったのを気にしてはいたのだ。
これを機に、都亀には自信をつけてI・Hに望んで欲しい……そう切に願うナミであった。



 シャワールームに到着し、それぞれが脱衣を始めていく。そんな中、ふと越花がナミに問いかけた。

「そういえばナミちゃん、プロってテストとかあるんだよね。いつ受けるの?」

これに、順子がピクッと耳をヒクつかせる。大きな声では言っていないが、彼女もナミに感化されてプロボクサーの道を志している1人なのだ。
なのだが、実はプロテストに関する詳細を全くといっていい程知らない。Tシャツを脱ぎかけの体勢のまま、ナミの返答に聞き耳を立てた。

「女子のプロテストって、実は不定期実施だったりするのよね。でも、東京の方だと毎月やってるみたいだから、とりあえずは10月か11月くらいになるかな」

東京がすぐそこで良かったわ、と微笑んでみせるナミ。実の所、本当はもっと早く受けたいのだろうという心情は、同級生内では誰の目にも明らかであった。

ただ、誕生日が12月とあっては仕方がない。

「プロといえば、順子も確かプロ志望だったわよね? どこかジムには入ったの?」

はたと脳裏に記憶がよぎったのか、ナミは順子に話を振る。

「え? う、うん、一応ね。相田ジムって中堅クラスの所に。二年生になってから入ったから、まだ3ヶ月ぐらいかな」

脱ぎかけのTシャツから頭を引っこ抜き、順子が口を動かす。


相田ボクシングジム。ナミの所属している山之井(やまのい)ジムやこの場にはいない高頭 柊が皆に内緒で通っている緒原(おばら)ナックルジムに比べれば、まだ新しく実績もない。
順子のいう通り、中堅クラスのジムである。
しかし、去年の冬くらいにボクシング以外の格闘技で全国的に有名な、プロを前提とした女子練習生を獲得した……という噂をナミは耳にしていた。

「ふぅん。そういえば相田って、ちょっと前にスゴい大型練習生が入ったって聞いたんだけど、アンタ知らない? ボクシングじゃないので有名な」

ことボクシングの話題となると、俄然食いつきの良くなるナミ。そんな人こないだの見学でいたっけ? と小首を傾げるアンナを余所に、興味という導火線に火が着いたのか積極的な質問をぶつけた。
それに対し、順子は苦笑を洩らしながらも応じていく。

「いや、あんたらもよーっく知ってる人よ。というか、ぶっちゃけ東先輩」

身を打つシャワーの音を除き、しばしの沈黙が部屋の中を支配する。数秒後、一年生と秋奈と順子、雪菜を省いた全部員の絶叫が駆け巡った。

「「ええええーーーッ!!」」

これはあまりにも意外。まさかの良く知る光陵の卒業生、『鬼東』こと東 久野がプロボクサーになるつもりでジムに入会していたとは、誰も想像がつかなかったに違いない。

久野といえば、学生空手の超有名人である。確かに女子ボクシング部と空手部を掛け持ちしてはいたが、実績だけでいえば比較するのもはばかられるくらい空手に傾倒していた筈。
昨年のI・Hでは空手部の方に腰を入れていた辺り、傾倒の程は窺い知れようというものだ。

そんな彼女が、プロボクサーを目指す。
それは、空手よりボクシングを優先したという事。

東 久野を知る者には、およそ想像がつかなかった。故の絶叫であった。

「そう、あの東先輩が……という事は、またあの人の下って事になるわけね、桜さん」

さすがに今回の件は知らなかったらしい由起が、感心しきりの風で順子を見る。服を脱ぎ捨てた順子は、「まあ、そうなります」と個室の戸を締めるとシャワーの栓を捻った。

「そっかぁ、東先輩もプロになるんだ……私もプロになろっかな。先輩とも闘ってみたいし」

髪を結っていた赤いリボンを解き、豪奢な金髪を靡かせながらアンナが独りごちる。

「あんたもプロになりたいんだ? まあ、どっちかっていえばプロ向きよね。あんたは」

ブラの肩紐を外しつつ、冷静にアンナの独り言を肯定する心。表情には出していないが、アンナのプロ希望に反対の立場ではなさそうな雰囲気であった。
ちなみに、心もプロ目指したら? というアンナの意見は速攻で却下されている。どうやら柄ではないらしい。

皆がそれぞれワイワイとプロ云々の話題で騒ぐ中、越花は個室で熱湯に打たれたまま黙っていた。ただ、その双眸には何か決意を秘めた光を宿していた。





to be continued……
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コメント

No title

白い歯を見せる大江戸さんの笑顔…アテクシの中で彼の外見はビスケット・オリバで定着してきたワwww

>ブラの肩紐を外しつつ
アンナちゃんのブラの肩紐を外し着替えを手伝っているんですね、わかります。

オリバですか、インテリマッチョな所は確かに似てるかも知れません。
ブラの肩紐~の下りは特に意識してなかったのですけど、妄想力豊かで頼もしい限りです。
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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