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第16話 『vs品森高校(3) アイドル?ボクサー?千恵子の根性』

 プロボクシング編、第16話です。遅くなりましたが9/3(土)のオフ会、豪雨の中お疲れ様でした。とても有意義な時間が過ごせました。



<拍手返信>

・ぴーこ様>なんだかんだで都亀以外の部員たちってちゃんと勝ち星を上げてるんですよね、光陵って。彼女の初勝利はいつになる事か……そして今回のナミと千恵子の勝負がどう関わってくるのか? その辺もお楽しみ頂きたいです。



光陵高校と品森高校との練習試合は、第2試合の杉山 都亀が落とした以外は全て光陵が取るという健闘ぶり。そして皆の見守る中、ナミと千恵子……2人の主将による大将戦が始まろうとしていた。









 光陵高校と品森高校との練習試合は、3勝1敗と光陵有利で進み残す所あと1つ、下司 ナミと弥栄 千恵子との大将戦のみとなった。

上下淡い桜色で合わせた試合着が、その類まれな美貌と相まって千恵子を可愛らしく引き立たせている。
無骨なボクシンググローブやヘッドギアを着けていて尚、その容姿が損なわれるものではない。
部活仲間の高頭 柊も筆舌尽くし難い美少女だが、何せ性格を知っているだけにどうしても千恵子の方に軍配を上げたくなるナミであった。

「今日はよろしくお願いします。全力で胸を借りに行きますので」

レフェリー・桃生 誠の諸注意を聞き終わり、グローブを合わせた際、千恵子がナミに話し掛けてきた。
遠縁の叔父が経営するボクシングジムへ通ってまでどっぷり浸かっている割に、どこか垢抜けていないのはその容姿故かそれとも性格故か。

「ううん。こっちこそよろしくね」

千恵子の言葉にナミは手短に答え、2人は各コーナーへと戻っていく。

「相手がまだ1回も勝った事がないからって、くれぐれも気だけは抜くなよ」

ナミの正面に立つ植木が、真剣な眼差しでアドバイスを送ってくる。例え練習試合といえど、これは真剣勝負。
気を抜いたり情けをかけるなど、スポーツマンのするべき行動ではない。
この顧問は、暗にそう伝えているのだ。しかし、ナミとて彼の一番弟子。
そのような事は今更言われるまでもなかったし、ボクシングで手加減出来るような人の良い性格はしていなかった。

「OK。久しぶりの実戦だしね、慣らしも兼ねて初回から全力でいくよ」

植木の指示にコクンと頷き1つ、ナミは対角の千恵子を見据えマウスピースを銜える。そして試合開始のブザー音と同時に、コーナーから飛び出していった。



 リング中央でグローブタッチを交わし、臨戦態勢に入る。両者共に右構えのオーソドックススタイルで、フットワークを刻んでいく。
公言通り、ナミに様子見の選択肢はない。先手を打つべく行動を始めた。

疾風の如きステップで一気に千恵子との距離を潰し、射程圏内に入った瞬間ワン・ツーを放つ。
これがまた速い。ことスピードという面に於いては柊に及ばないものの、全ての動きが淀みなく連動している。
少なくとも、向かい合う千恵子にはさも目の前で一陣の風が舞ったようにしか移らなかった事だろう。
最初の左ジャブが構えていた千恵子のガードを叩き、続く右ストレートで一気に防壁を粉砕。
弾いた両腕の奥に千恵子の顔面を確認するや、続けざま左右のストレートを連続で叩き込んだ。



バン、バァンッ!



鈍い音が連発で響き、千恵子の頭が後方へ揺れる。次いで身体全体が後退し、青コーナー間際で何とか体勢を立て直した。

「ぐくッ」

目から火花が飛び出る錯覚を覚え、だが千恵子はすぐさまファイティングポーズを構え追撃に備える。
対戦相手を前にいつまでも構えを解いていては、単なる自殺行為だけでなく戦意喪失と見なされ兼ねない。

実力はともかく、心構えはもう立派にボクサ-といえた。

イニシアチブを取った形のナミは、後退した千恵子に追撃するべく身を屈めて接近。

「くッ」

ここでさらなる追撃を許せば、流れがナミへ傾くのは必至。何とか流れを取り戻したい知恵子は、まだ衝撃の残る身体を抑え込み左ジャブで突き放しにかかった。
ビュッ! と空を切る音を立てて迫るジャブを、ナミは冷静にサイドスウェーでかわし懐へと潜り込んでいく。
さすがにただ打っただけのジャブでは、I・H全国ベスト8を止める事は出来ない。
だが、千恵子の技術の引き出しには他に迎撃手段を講じられるような手段など、残念ながら眠ってはいない。

ひたすらにジャブをばら撒きナミの進撃を阻んだ。

「…チッ」

予想外に鋭さを増してくるジャブの雨、その何発かをヘッドギア越しに掠らせナミは思わず舌打ちをしてしまう。
初めて知った時から比べて、その実力は確かに上がっていた。しかし……



パァンッ!



小気味良い革の音が弾け、千恵子の頭がまたも後方へと揺れた。

「ぐッ!?」

いきなり飛んできたパンチをまともに貰い、千恵子は一瞬混乱してしまう。

ジャブで接近を阻んでいたはずなのに、いつの間に潜られたのだろう?
自分が打ち続けていたジャブの合間を縫って、どうやって反撃の1発を打ち込んだのだろう?

どういったテクニックを駆使したのかと混乱度合いに拍車がかかっていく所へ、鳩尾に強烈な右ボディーアッパーを叩き込まれ千恵子は強制的に現実へと思考を引き戻されてしまった。

「うへぇッ」

威力のある一撃に千恵子は目を見開き、身体をくの字に折ってしまう。
開いた口からは唾液と酸素と呻き声が一緒くたに飛び出し、腹を穿った拳が引かれるや千恵子の膝は重力に屈しベタンとキャンバスに着いてしまった。

「ダウン!」

誠がすかさず割って入りダウンを宣言。ナミをニュートラルコーナーへと下がらせダウンカウントを始めた。

ダウンカウントをニュートラルコーナーで耳にしながら、ナミは千恵子の方へと視線をぶつける。
千恵子のジャブは規則正しく、思った以上に正確に飛んでくる事に驚いた。ただ、この場合に限ってはその規則正しさ・正確さが付け入る隙。
ナミは千恵子のジャブのリズムを測り、左腕の引きに合わせて前進し、間隙を縫ってパンチを当てたのである。
思った以上の成果を上げられた事に自分を褒めてやりたい所だが、生憎それは試合が終わるまでお預け。
まだまだ華奢な身体付きといえど、流石にボディーブロー1発でKOされる程脆くはないだろう。案の定カウント8まで休んでから確かな足取りで立ち上がってきた。

その落ち着きようを見れば、ダウン慣れもしているように見える。

「まだやれるか?」の指示に「はい!」と強い意思表示を返してくる千恵子。

誠は「ボックス!」と戦闘続行を促すと、後ろへと軽く下がっていった。ダメージがない訳ではないだろうが、それにも増して気力が充実している。
千恵子の表情はまだまだこの試合を諦めた風とは程遠いものであった。
この根性は、アイドルなどともてはやされるのを良しとする人間では持ち得ないものであろう。

幾らルックスが良かろうと、彼女の根本はボクサーなのだ。

(いい顔するじゃない。確かに実力はまだまだだけど、この根性はいい武器になるわ)

ナミは千恵子の根底に潜む“強さ”を感じ、共感すると同時に打って出た。



 そこから先は、もうナミの独壇場といって差し支えなかった。千恵子の攻撃は全くといって良い程クリーンヒットが叶わず、肩やグローブやヘッドギアを叩くだけ。
高いディフェンス能力を見せつけられたかと思えば、一転攻勢に出られると千恵子のテクニックではどうしても抑えられない程、ナミの手数は圧倒的。
さながら散弾銃の如きパンチの雨を前に、千恵子はクリンチで凌ぐ以外に術を持たなかった。

それが2R終了まで続き、最終第3R序盤……



ゴッ!



度重なる連打に曝された両腕が痺れ、ガードの下がった所を見計らったかのように、すかさずナミの右アッパーが千恵子のアゴをかち上げた。

「ぐぶッ」

下からの圧力に押し上げられた千恵子の顔が、汗や唾液を撒き散らしながら天井を向く。
脳を揺らされ完全に平衡感覚を狂わされた千恵子は、右足を一歩後ろへと下げそのまま両膝を折り……



ダンッ!



キャンバスに正座し、身体を丸めるような姿勢で崩れ落ちてしまった。

「ダウン!」

誠がすかさずダウンを宣告し、ナミをニュートラルコーナーへ下がらせる。

この試合2度目のダウン。ただ、1度目と違いダメージが大きいらしく、カウントが進んでも千恵子は立つ素振りを見せない。
両腕、両膝、額をキャンバスに押し付け、弱々しく身体を上下させるばかり。もしかしたら、半ば意識を失っているのかも知れない。

「スリー…フォー………勝者、下司!」

誠はカウントを4で止め、試合をストップ。ナミの勝利を告げた。
ヘッドギアの隙間から覗き込んだ顔に、はっきりとした意識が感じられなかった為、これ以上の続行は無理と踏んでの措置であった。



 ナミと千恵子の大将戦は、ナミが3R・RSC勝ちを収め全ての試合が終わった。結果としては4勝1敗と、光陵側の大幅な勝ち越しである。
唯一敗北を喫した都亀に関しては、正直相手が上だったと言わざるを得ない。恐らく、今井は今年のI・Hに食い込んでくる事だろう。

「ナミさん、光陵の皆さん。今日はいい勉強になりました!」

品森女子ボクシング部を代表して、千恵子が光陵一同に向かって挨拶する。倒れ方の割にはダメージは小さかったようで、声の張りは良い。
その表情も晴れ晴れとしている事から、試合の結果は受け入れられたようだ。

「こっちこそ。今日はホントにありがとう」

千恵子の挨拶に対しナミが応対、2人の握手を以て練習試合の幕を閉じたのであった。



 品森一同が引き揚げようと準備している際、「あの……」と声を掛けられた為千恵子は振り向いた。そこには、都亀のセコンドに就いていた淡い栗色の髪の少女の姿。

「はい? えーっと……確か、中森さん?」

記憶を辿りながらの返答だった為、少々ぎこちなさが目立つものの、陽子は真剣な眼差しで頷く。

「弥栄さん。今度、少し時間を頂けませんか?」

「時間?」

「はい。ちょっとお話が聞きたいんです」

「話、ですか……いいですよ。でしたら、携帯の番号を教えておきますね」

自分の何を聞きたいのか分からず小首を傾げながら、千恵子は陽子と携帯番号を交換しあう。今日は試合の後でもあるし、陽子も後片付けをしなければならない。
後日と先送りにしたのは、そういった互いの事情を鑑みての陽子なりの気遣いであった。

だが、これを上回るスピードで火種は放り込まれる事となる。

それは、後片付けが終わり解散の指示を告げられた直後に起こった。

「先生」

解散を命じられ、皆が各々今日の練習試合の感想を口にしながら帰り支度をする中、下を俯いた都亀が植木へと歩み寄る。
顧問用の机に座り資料の整理に入ろうとしていた植木は、都亀の方へ顔を向けた。

「杉山?」

一見してどこか様子が変だと気付いたが、敢えてそれには触れず訊ねてみた。

「先生……ボク…ボク……」

その様子のおかしさに、植木のみならず全員が都亀の方へと視線を向けていく。ちなみに、この時陽子はトイレへ行っていてこの場にはいない。

「ん? どうしたんだ杉山。どこか調子が悪いのか?」

肩を震わせ何かを言い出せないでいる都亀に、植木が困った素振りで問う。

「ボク……ココを辞めます……今までありがとうございましたッ!」

腹の底から搾るように吐き出し、言い終えるや都亀は身を翻し一目散に走り去っていった。いきなりすぎる都亀の退部宣言に、誰もが唖然としてしまい飛び出していったドアを見つめる事しか出来なかった。





to be continued……
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コメント

No title

ついに退部しちゃったわね…。
ここから、弥栄ちゃんがどう関わってくるのか…。
と言っても、退部するのは、せめて中森さんに少しぐらい相談してみてからでも…w
…落ち込みすぎちゃったら、そこまで気が回らないわよね。

遂に負の感情を爆発させて都亀が退部を宣言してしまいました。今回は! と気負っていただけに、やはり相当ショックだったのだと思います。
ここから千恵子がどう絡んでくるのか……それは次回以降のお話で。
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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