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第14話 『vs品森高校(1) 新しい火種』

 プロボクシング編、第14話です。

<拍手返信>
・ぴーこ様>雪菜も充分全国レベルの実力者なのですが、柊のポテンシャルはそれをも上回りました。本人はあくまで否定しそうですが、もう完全にボクシングにハマってしまってますw
・ヨシコ様>いつもいつも携帯の方でのコメント、感謝感謝です! ここでは具体的な返信は出来ないのが残念ですが、励みになっております。



柊と雪菜の激闘は、アゴを捉えた2発のパンチが決定打となり、柊のRSC勝利となった。それから1週間が過ぎ、光陵女子ボクシング部は新たな展開を迎える事に……









 2011年、6月初旬。柊と雪菜の勝負から1週間程が過ぎた頃、主将のナミから1つの決定項が皆に伝えられた。

「今月末に品森高校と練習試合するから。えーっと、順子と都亀と越花と、あとアンナ、しっかりウェイト合わせておいてね」

唐突な練習試合の報と、名指しされた4人はそれぞれ目を合わせ、困惑した様子を隠し切れない。

「なんで4人だけなの?」

まず自分の疑問を解決したいのか、心がナミに問い掛けた。

「あー、それには俺から答えよう。まず、品森高校は今年の一年生を加えてようやく5人なんだ。従って、こちらもそれに合わさざるを得ないんだ」

なるべく実戦経験を積ませたいとの意向により、ナミを含めた5名を選んだのだという。ちなみに、柊と雪菜はつい1週間前に実戦形式で闘った為除外、との事だった。

練習試合が決まった事で、様々な思惑を抱くメンバーたち。杉山 都亀も、そんな内の1人であった。

(今回こそ……大丈夫、あれだけ練習したんだから。ちゃんと動くよね、この足は……)

ふと左足首を見、都亀は大丈夫と再度自分に言い聞かせる。中学生の頃、陸上部での練習中に襲われた、左アキレス腱断裂という不幸。
あれから時は流れ、今はもう完治したと医者から太鼓判も貰った。だが、部活の練習では何の問題もない左足首が、試合となると決まって疼く。
それがどうしても過去の激痛を連想させ、思うように動けなくなってしまい、結果未だに勝ち星はなし。

故に、今回の練習試合こそはと背水の陣で挑む思いの都亀であった。



 日が経つのは早いもので、光陵女子ボクシング部と品森女子ボクシング同好会(まだ部の認可を受けていないらしい)との練習試合の日がやってきた。
1番減量の厳しいナミも含め全員が計量をパスし、後は相手校たる品森高校の到着を待つばかり。まともなリングなどの設備を持たない品森側から、光陵での試合を希望してきたのである。

そして、開始時刻からきっかり1時間前、12:00に品森高校の一団が到着した。

「こんにちは、皆さん。今日はよろしくお願いします」

一同を代表し、女子ボクシング同好会創設者にして主将の弥栄 千恵子(やさか ちえこ)が挨拶。それに倣って、残りの全員がお願いします! と声を揃えた。
少数ながらも意気盛んなのがひしひしと伝わってきて、ナミとしては好印象を受ける。

「ようこそ、光陵高校へ。こちらこそよろしくね」

そう返し、ナミは自ら部室へと来訪者たちを案内していく。練習試合といえど、真剣勝負を前に顔が綻んでしまうのはさすがにどうかと思うのだが、千恵子を始め微笑ましい面々なので仕方ない。
部室へ案内し、顧問の植木へ挨拶した後、品森の一団はロッカールームへ。10数分をおいて、全員が試合用のコスチュームを身に纏い姿を現した。

上下淡い桜色で統一された服装は、嫌が応にも気合いの入りようを感じさせる。そしてジャスト13:00……いよいよ、光陵高校と品森高校との練習試合が開始された。
どこから情報を聞きつけたのか、部室の外には割と大人数のギャラリーの姿。ただ、光陵と品森以外の制服もチラホラと見える辺り、I・Hへ向けての偵察も混じっているようだ。

「ふぅん、すっかりマークされてるんだ。随分偉くなったじゃない」

偵察に気付いた心が、ふんと鼻を鳴らす。今回出番のない柊はそれを一瞥するや、興味なさそうにリングの方へと視線を移していく。
そこには、もうすっかり特攻隊長として定着した感のあるピン級の桜 順子が、落ち着いた表情でリングインを果たしていた。

一年前の彼女は、生来のアガり症が災いして不安げな印象しかなかった。しかし、今ではそのアガり症もちゃんとコントロールし、どことなく余裕さえ垣間見られる。
それだけでも、充分過ぎる程に成長したといえるだろう。

「よし、そろそろ始めよう。両者ともリング中央へ」

今回特別にレフェリーとして依頼を受けた光陵高校男子ボクシング部主将、桃生 誠が競技者たちを招く。
淡い桜色のタンクトップに白のTシャツ、同じく淡い桜色のトランクスの品森部員に対して、光陵側は全員が黒のタンクトップに白のTシャツ、黒のトランクスで統一。

「桜ぁー、頑張れよぉぉー!」
「相手の方もファイトォォーー!」

部室の窓から覗き込んでいるギャラリーたちから、様々な声援が飛び交う。そんな喧騒の中、順子と対戦相手……橘と呼ばれた少女はお互いグローブタッチし各コーナーへと引き揚げた。

「桜さん、序盤からバンバン飛ばしていっていいから。まずは1勝、いいわね?」

赤コーナー側、セコンドの大内山 由起は順子に指示を入れる。

「はい! 絶対勝ちますッ」

気合いの入れようならこちらも負けてないと、順子は対角の橘を見据えながら頷く。マウスピースを口に含ませて貰い、深呼吸をひとつ。ややおいて、



ビーーーーーッ!



試合開始のブザーが鳴ったと同時に中央へ走り寄っていった。



ズガァッ!



 敵、味方、ギャラリーといった喧騒の三重唱をバックに、1発の殴打音が木霊する。
3R、0:59……順子の放った右フックが橘の頬を完全に捉え、平衡感覚を失ったようによろめくや、横倒しに倒れ伏した。
第1試合からノックダウンが見られた事で、一気にテンションアップするギャラリーたち。結局このダウンが決め手となり、橘は中腰の姿勢から身体を上げられず10カウントを聞く事となった。

「よし、まず1勝ぉッ!」

緒戦の勝利による喜びを全身で表したのは、一年生の室町 晶。下司 サラと桃生 詩織も、手を取り合って先輩の勝利に歓喜する。
終始自分のペースで試合を支配した順子も、内心確かな手応えを感じつつ橘の健闘を讃えるとリングを後にした。

「やりましたね、桜さん!」

同じピン級の同級生、比我 秋奈が順子の手を取り満面の笑みを覗かせる。それに照れ臭そうな表情で、「あ、ありがと」とそっぽを向いてしまう。
その光景を見て、やっぱり順子は順子ねと茶化すナミの言葉に皆頷くのであった。



 続いて第2試合、バンタム級・杉山 都亀と今井がリングに上がる。品森の今井は同好会唯一の一年生で、中学の頃から近場のボクシングジムで習っている本格派だという。
尚、本来なら次はライト・フライ級のナミと千恵子の試合の筈なのだが、大将戦という位置付けの為最終戦を飾る事となっている。

「都亀。大丈夫、落ち着いていけば勝てない相手じゃないわ。貴女の実力はナミさんだって太鼓判くれてるんだから! とにかく脚を使ってジャブで牽制。で、距離を詰めたらコンパクトにボディーを叩く……いつもの練習通りに行ったら絶対大丈夫だから」

セコンドを務める中森 陽子が、懸命に指示を送る。今から闘う親友の、“ある覚悟”を本人以外に知る身としては、嫌でも指示に熱が入ってしまうのは仕方のない事か。
そんな陽子の指示に、ただ無言で頷く都亀。いつも以上に強く光る眼光が、“覚悟”の程を表現しているかのように見える。

(負けない……絶対負けたくない。お願い、ちゃんと動いて!)

必勝の念を込め、マウスピースを銜えると意識はリング中央へ。試合開始のブザーが鳴ると同時に、両者は互いに駆け寄っていくのだった。



 グローブタッチを交わし、ファイティングポーズを取る2人。共に右構えのオーソドックススタイルで、有効射程内へとジリジリ寄っていく。
そして、お互いを射程圏内に捕捉。先に手を出してきたのは、一年生・今井の方。否、敢えて先に都亀が打たせた。

今井は果敢に左ジャブを2発打ち込んでくる。
上体をサイドスウェーで左右へ振る事で、基本に忠実にジャブをかわしていく。
都亀は、まずしっかり身体が反応するかを確認したのだ。
結果は良好、左足首にも違和感は感じられない。相手のジャブも見えている。
元々身体能力だけなら部の中でも屈指の高さを誇る都亀、幾ら中学の頃からジムに通っているといえど今井に劣るものではない。

(よし、ちゃんと動けてる。なら、次はボクの方から!)

ディフェンス面で合格を出した都亀は、続いてオフェンス面の確認へ入る。
左腕に力を入れ、今井目掛けてジャブを3発。
最初の1発は左に身体を振られ不発。が、続く2発目、3発目は小気味良い音と確かな手応えを拳に残しヒットした。
身長差でやや打ち下ろし気味となった都亀の左ジャブ、どうやら予想外に効いたらしい。
微かにフラついたのが見て取れた。そこへ、本能なのか反復練習の賜物なのか、すかさず右ストレートを顔面へと落とす。



ゴッ!



頬肉を押し潰す鈍い音が響き、今井はその場で身体を大きくグラつかせた。
続いて攻勢に出ようとした所を、今井はしたたかにクリンチで凌ぐ。

(上手い)

一見苦し紛れに仕掛けたかのように見えた、今井のクリンチ。しかし、ナミはそれを上手いと評した。
まず、クリンチに行く為のタイミングが絶妙だった事。都亀が腕を振り上げようとした瞬間を狙って、今井はクリンチを仕掛けていた。
次に、クリンチ中に脇腹を叩かれないよう両脇に都亀の腕を挟んでいる事。もしこれで完全にロックした場合、反則行為に当たるのだがそこは今井も分かっているのだろう。
偶然を装っている為、誠も明確な反則を取れないでいた。

「ブレイク、ブレイクだ。2人とも離れろ」

それでも何とか引き離し、距離を取った後で「ボックス!」と試合再開を合図。その後も都亀は勢いに任せて攻め続け、今井も手は返すものの防戦気味の様相を呈していく。



バンッ!



都亀の右ショートフックが今井の頬を浅く抉った所で第1R終了のブザーが鳴り、2人は各コーナーへと下がっていった。
意気揚々とスツールに座る都亀は、自分がちゃんと動けている事に満足な様子を見せる。

「都亀、足首はどう?」

両腕をマッサージしつつ、陽子は親友にアキレス腱の様子を確認。

「ん…ん………ぺッ! うん、大丈夫。問題ないよ」

差し出されたウォーターボトルに口を付け、うがいしながら都亀は好調を伝える。自分でも信じられない程、足首に違和感を感じない。
ともすれば、元から怪我などなかったと錯覚してしまいそうなぐらい、調子はいい。

(これならいける! 今日こそ勝てるッ!!)

オフェンス、ディフェンス共に今日は絶好調と感じた都亀は、高揚した様子でグローブを打ち鳴らす。

このままボクのペースで勝つ!

「セコンドアウト!」の掛け声に、スッと立ち上がる都亀。その一方、1Rでは全く良い所のなかった今井。
しかし、セコンドの影に隠れたそこには、ニヤリと含みのある笑みを微かに覗かせるのであった。

「んじゃ、そろそろ本気で行こうかなっと」





to be continued……
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コメント

No title

初めまして銭谷竜二というものです、チャパロットさんの小説いつも拝見させてもらっています、いい小説ですね時間がかかるのもわかります、私のお気に入りはクール少女の心です、これからも頑張ってください。

PS:チャパロットさんって大阪のS市に住んでたんですねw、私は隣のS市の最北端に住んでます、お隣同士宜しくお願いします。

No title

杉山ちゃん…対戦相手の最後のセリフ…せっかく調子良かったのに不穏な影が覆ってきたワネ…。
さて初勝利となるか…厳しい感じがするわね。

 銭谷竜二様>初めまして。こちらもツイッターなど楽しく見させてもらってます。拙作を読んで頂けてるとの事で感謝の限りです。
> お気に入りは心ですか、彼女は何気に人気あるらしく他にも幾人かの方に気に入って貰えてるようで。このコメントを励みに、これからも頑張って執筆していきたいと思います。
>
>  隣の市同士、どこかでお会いする事もあるかも知れませんねw
>
>
> クリロベー様>ご無沙汰しております。初めての勝利を賭けた今回の試合ですが、最後のセリフであからさまに不穏な空気が流れてしまいました。はてさて、都亀の勝敗やいかに……
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プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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