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第12話 『まさかの対決!? 柊vs雪菜』

 プロボクシング編、第12話です。

<拍手返信>

・ぴーこ様>ちょっと急ぎ足で伝わり辛かったかも知れませんが、柊は緒原ナックルジムに入る予定になってます。
県内最大手ジムのすぐ前に教会風のジムとか、そもそも許されるのか? と心配だったり。ともかく怪しさ満載なのは確かですねw



夏の強化合宿に備え地力を上げたいという思いから、ボクシングジムを巡り入会に足る所を見つけた柊。
翌日、植木からオリンピック強化選手に選ばれた為、部の夏合宿には出られない旨を告げられるや、雪菜がまさかの勝負を挑んでくるのだった。









 それは、あまりに唐突だった。光陵女子ボクシング部室内にいた誰もが、揃って唐突な行動を起こした1人の人物へと視線を集中させていく。

葉月 雪菜。前年度I・H全国大会、福島県代表でありここ光陵女子ボクシング部員、葉月 越花の従姉妹でもある。
その彼女が、オリンピック強化選手に選ばれた事を聞いた途端、その対象者たる高頭 柊に向けてグローブを突き出したのだ。

「高頭さん、私とスパーして!」

この言葉の心中がどこにあるのか、意図の読めない部員たちは事の推移を待つ。その一方で、顧問の植木と主将のナミは気が気ではなかった。
去年のI・H予選終了後、熱意に負けナミと柊との試合形式のスパーリングを行い、後に部員の知念 心に大目玉を食らった経緯があるからである。

状況は、あの時と非常に似ていた。

「ちょ、ちょっと雪菜。いきなりどうしたの? 急に勝負だなんて……」

ここは自分が動くべきと、ナミが雪菜を止める。昨年のI・H全国大会、ナミと行ったスパーリングが原因で無自覚のスランプに陥った柊はベスト8で敗退。
これがもし万全のコンディションであったなら、もっと上を狙えたであろう。
そういった例が以前あっただけに、植木やナミら責任のある立場にとっては慎重を期さねばならなかった。

「どうしたもなにも、強化合宿に行っちゃったらまた高頭さんと勝負する機会がなくなるんだもん。越花ちゃんから聞いたよ、合宿の最終日に好きな相手とスパー出来るって」

やや興奮気味に、雪菜はナミへと返答する。ちなみに、この時越花はバツが悪そうにそっぽを向いていた。

「それにいきなりじゃないもん。去年のI・Hの時にも高頭さんと闘(や)りたいって、ちゃんと言ったんだから」

どうやら、雪菜の中で柊と闘いたいというのは、ことさらI・Hである必要などないらしい。

「でもほら、柊もこれから大事な時期を迎える訳だし……」
「いいぜ、闘(や)っても」

ナミが何とか逸る雪菜を止めようと苦心している後ろで、あろうことか挑まれた本人から飛び出したOKサイン。
基本的に、面倒事は避けて通ると周囲に認知されている柊らしからぬこの返答に、ナミだけでなく他の部員たちからもざわめき声が上がる。

「せっかく全国大会にも出た実力者が、わざわざ指名してくれたんだ。それに、オレも全く興味がない訳でもねーしな」

普段通りのぶっきらぼうな態度で、柊は雪菜の方を見返す。
柊は今、強くなれる機会があるならそれがどんなものであったとしても、興味を示すだろうし挑むだろう。

国の威信を賭けて、なんていうのは正直どうでもいい。
が、レベルが違い過ぎてお荷物になるのだけは、死んでもイヤだ。

元々負けず嫌いの柊らしい思考というべきなのかも知れなかった。ただ、そんな思惑を決して面に出さないのが、柊の柊たる由縁か。
困り果てた表情で、ナミは最高権限者たる顧問の方を振り向く。
お互いやりたがっている以上、ここで下手に止めるのは逆に悪影響を与え兼ねないのでは? と判断し、植木は3日後に2人のスパーリングを練習内容に組み込む事とした。



 そして、あっという間に2日が過ぎ、柊と雪菜の勝負の3日目を迎えた。スパーリングとは名ばかりの、これは真剣勝負である。
2人してアマチュア公式ルールでやりたいと言ってきた辺り、その真剣さの程が窺えよう。
青コーナーには柊が、赤コーナーには雪菜が、それぞれ準備を終え入念に身体をほぐしている。

「よし、そろそろ始めるぞ。2人とも、リング中央へ」

レフェリーを務める植木が、柊と雪菜を呼ぶ。注意事項を伝えた後、グローブをタッチさせ各コーナーへと引き揚げさせていく。

「葉月さんは下司さんと酷似したタイプのボクサーよ。ことラッシュ力に関しては同等と思っていいわ」

柊のセコンドに入る由起が、的確なアドバイスを送る。

「知ってる。I・Hの時にもらった資料にも書いてあったから」

緊張をほぐすように首を回し、次いで対角の雪菜を見やると、視線が合った。越花と陽子の間に挟まれる形で座る雪菜の、その露出した腕や脚はうっすらと汗ばみ赤味がさしている。
やる気満々、初回からフルスロットルで仕掛けてきそうな、そんな雰囲気であった。

(下司と瓜二つ、か。まぁやってみるか)

セコンドアウトの声と共にマウスピースを受け取り、スツールから立ち上がる両者。



ビーーーーッ!



間を置いて鳴らされたブザーの音と同時に、ゆったりとした足取りで柊はリング中央へと歩いていった。



 グローブタッチの後、柊は一旦距離を取る。対する雪菜はというと……ガッチリとガードを固め、身を屈めながら凄い勢いで間合いを詰めてきた。
まるで、ナミがしばしば敢行する開始直後のスタートダッシュの再現である。

「あんたみたいな戦法取るね、あいつ」

見学しているナミの隣に心が寄り、囁く。

「…今回は止めないんだ?」

リング上で動く2人から目を離さず、ナミは全く別の言葉を返した。皮肉には皮肉を、という訳だ。

「あの時とは事情が違うからね。少なくとも7月までには1ヶ月近く猶予がある」

さすがにサラリと皮肉をスルーし、心はナミの問いに答える。そうね、と同意しナミは雪菜の一挙手一投足に気を配った。

ファイトスタイルが似通っているのは知っていたが、まさかスタートダッシュまで同じとは……

当初こそ止める立場にあったナミだが、いざ勝負は避けられないと分かった時点で意識は別の所へと向いていた。
即ち、今の柊は雪菜を相手にどう立ち回るのだろうか? と。
アマチュアの道を進む限り、柊はナミにとって脅威足り得ない。だが、興味まで失ったのかというと、それはまた別の話。
むしろ、今回は酷似したタイプの雪菜と自身を重ね合わせ、柊がどう闘うのかシミュレーションしていた。

開幕ダッシュからの接近戦に持ち込みたい雪菜は、左ジャブを散らし柊の動向を探る。
右構え、ごく平凡なオーソドックススタイルから放たれるジャブは、速さ・プレッシャー共に平凡とは程遠い。
軌道こそ正直なものの、それはまるで獅堂 きららのフリッカージャブに晒されているような圧迫感があった。

(さすがに速ぇな。無理に打ち返すと食らっちまいそうだ)

上体を柔らかく使ってジャブをかわしつつ、ここは我慢時と柊はディフェンスに徹する。ジリジリと少しずつ後退し、しかし密着だけはさせない。
身体を引っ付ける程の密着は、それだけで動きに大きな制約を受けてしまう。そこからボディーブローをチクチク叩かれるのは、柊としては面白くなかった。

そして、このままいいように打たせ続ける状況も……



バンッ!



絶えず飛んでくるパンチを冷静に見極め、狙いの甘い1発を右拳で上に払いのける。連動して、左のショートアッパーで雪菜のアゴを狩りにいった。
パーリングで上手く払われ、流れるようなショートアッパーが雪菜のアゴを綺麗にしゃくり上げていく。
だが、上を向かされた雪菜の視線は柊から些かも外されておらず、仰け反った体勢から右フックを打ち下ろしてきた。

(やっべ!)

カウンターで殴ったアゴの感触もそのままに、柊は慌てて上体を反らせる。辛うじて鼻先を掠めるかどうかという際どさで回避すると、柊はそのまま後退。一旦間合いを離し体勢を整えた。

(いい感じで入ったってのに。見た目によらずタフなヤツだな)

ガードを固め、じっくりと距離を潰してくる雪菜に、柊は軽快なフットワークで翻弄するべく動く。ガードの上からでも構わず右ジャブを打ち付け、雪菜の反撃が来る前に退く。

教科書通りのヒット・アンド・アウェイであった。

去年のナミとのスパーリングの時は、自分の攻め気を抑え切れず果敢な打ち合いを続けた結果、先にスタミナが尽き10カウントを聞く羽目になってしまった。
相手の得意分野に付き合って勝つのは確かに爽快だが、今回は少し慎重に行こう……柊は、自身にそう言い聞かせる事にした。



 高校女子アマチュアの中でも屈指のステップワーク、ハンドスピードを誇る柊のジャブが雪菜のガード、その間隙を縫って何発かヒットする。
さらにガードを固めつつ打ち返す雪菜だが、スピード勝負では一歩譲るようだ。

(速いなぁ。ちっとも当たらないよぅ)

心中で、雪菜は柊の実力に正直舌を巻いていた。福島県にいた頃、よくスパーリングパートナーを務めてくれた娘が左利きだった為、サウスポーとは闘い慣れている。
が、このスピードは初めての体験だった。パンチ自体は決して重くないが、速くてキレがある為地味に効く。

そして、柊を相手にして1番警戒しなければならないのは、何といってもカウンター。

これだけハンドスピードが速いのなら、同時にパンチを打った場合、間違いなく雪菜が先に被弾する事だろう。
抜群の動体視力を持つ上に、よく動くしなやかな身体と反応速度は、見惚れる程に相手の攻撃を当てさせない。
普通にパンチを打つのは勿論の事、フェイントを絡めても即座に反応し寸での所でかわす。
お互い牽制を多く撒き、隙を窺う作業に徹底したまま膠着状態へ。そして、



ビーーーーッ!



第1Rの終了を告げるブザーの音が鳴り響いた。ガードを解き、2人はそれぞれのコーナーへと引き揚げていく。
青コーナー側で出迎える由起にマウスピースを引き抜いてもらい、柊は呼吸を整えた。

「雪菜さん、どんな感じ?」

柊にウォーターボトルを差し出しつつ、由起は感想を訊ねる。

「強いよ。下司とどっこいぐらいはあるんじゃねーかな?」

さすが全国代表になっただけあって、攻守共にバランスが良い。特に基本には忠実、攻める時は攻め守る時には徹底して手を出してこないのは、柊にとって思っていた以上にやりにくかった。
それだけ、彼女のボクシングの完成度が高いという事なのだろうか。

「ただ、よく似てるけど下司のようないやらしさは感じない。キレイなボクシングを心掛けてるっつーか……」

小首を傾げ、的確な表現が思いつかない風でああでもないこうでもないと呟く柊。が、由起には言わんとしている事が理解出来た。
技術やスタンスに於いて、非常に似通っているナミと雪菜。しかし、ナミにはプロの世界を生きた者たちから教え込まれた狡猾さが染み付いている。

それはいわば、プロボクサー仕込みのしたたかさ。

これこそ、柊をしていやらしいと表現させたものに他ならなかった。生粋のアマチュア畑で育った雪菜は、とかくクリーンなボクシングを心掛けようとする部分があるようだ。
アマチュアボクシングがそれを追求している以上、雪菜に非はない。むしろ、アマチュアに於いてはナミの方こそ異端というべきであろう。
だからこそ、油断ならない相手と認識されるのだ。

「とにかく、まだ雪菜さんは得意のラッシュを見せてないから十分注意して。懐に入れさせると厄介だから、ジャブを多めに中距離以上をキープ。いい?」


由起の指示に逐一頷き、柊はマウスピースを口に含むとスツールから立ち上がる。対角の雪菜も、陽子の言葉に頷きつつ立つ。

「よし、それじゃ2R始めるぞ!」

植木の催促により、順子がブザーのタイマーを操作。2分間に設定し、



ビーーーーッ!



大きな音が鳴ると同時に、両者はリング中央へと走り出していった。



「2R目に入ったけど、どう見る? あの2人」

 勝負を静観していた心が、隣のナミに話し掛ける。牽制に終始し被弾らしい被弾のなかった1Rを見て、どういう展開を予想するか? という問いであった。

「さあ? まだどっちも全然持ち味を見せてないからなんとも」

心の問いに対し、味気ない答えを返すナミ。正直、今の柊の実力に舌を巻いたのは雪菜だけではなかったのだ。
去年、柊とスパーリングした時は彼女の気の強さ・攻め気を上手く誘導する事で自分の土俵に上げる事に成功した。
勿論雪菜も同様に仕掛けようとしているのだろうが、柊は自重して中距離以上を保ち、決して踏み込んでこない。

(自制出来るようになってる。大したレベルアップだわ)

それよりも、先程見せたパーリングからのショートアッパー……そして構わず打ち返してきたフックに反応してかわしてみせた、あの用心深さ。
ナミは、柊のボクシングが確実に完成度を増してきている事に嘆息する思いであった。

「誘いに乗ってこない柊からクリーンヒットを奪うのって、相当難しそうな感じね」

2人の闘いを眺めながら、ナミは誰ともなく呟く。人並みの耐久力と引き換えに天から授けられた、あのスピード。
これを捉えるのは至難の業といえよう。

「でも、狙える場所はある」

ナミの声に反応し、心が言い放つ。ナミもそれに同意、首を縦に振った。

「「ズバリ、ボディー狙い!」」





to be continued……
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Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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