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第9話

 第9話です。

練習3日目。柊はナミに部外者の参加を要求する。参加を認めたナミの前に現れたのは、思いもよらぬ相手だった……




 コンコン、コンコン……!



 部屋のドアをノックする音が聞こえる。が、部屋の主はベッドに潜り込んだまま、出ていこうとはしない。

「お嬢様! アンナお嬢様!! お時間です。起きて下さいませ」

「う~~ぅ」

まどろみと筋肉痛と眠気が主……アンナを支配している中、枕元に置いてあるアニメのマスコットを模した目覚まし時計に目をやると………針はAM6:30を指していた。

「あーーーッ!!」

まどろみも筋肉痛も眠気すらも吹き飛び、アンナはガバッ! と上体を起こした。





「ヤッバイ遅刻遅刻!」

 血相を変え適当に着替えると、髪も梳かさず足早に家を飛び出す。

「お嬢様、鞄をお忘れですッ」

玄関に先程アンナを起こしに訪れた使用人姿の老婆が、鞄を携え追いかけてきた。慌てて鞄を受け取ると、

「それじゃ行ってくるね、ばあや」

アンナは一言挨拶すると、そのまま学校まで疾走していった。そして……

「遅い! 遅刻よアンナ!! 罰として今日は1人で部室の掃除よ」

やはり遅刻してしまった。





 朝練も終わり、授業を話半分で聞き流し、時間の経過を待つ。そして放課後……

「さあ、午後も頑張っていくわよ!」

ナミは部員が全員揃った事を確認すると、1人はりきって声を上げる。そんな中、

「なあ下司(しもつかさ)、ちょっといいか?」

柊(しゅう)がナミに話しかけてきた。

「どうしたの?」

「いや、1人練習に参加したい、って言ってるヤツがいるんだが……」

「え、もしかして入部希望なの!?」

期待に瞳を輝かせるナミだったが、

「いや、部外者なんだけどな」

淡い期待はあっさりと打ち砕かれてしまった。

「そいつも昔からボクシングやってるヤツだから、邪魔にはならねぇと思うんだよ」

なんならコキ使ってもいいしさ、と柊は付け足す。


 柊の知り合いで経験者……もしや昨日言っていた加藤ジムの関係者か? なら他の部員の様子を分担して見てもらうのも可能かもしれない。今は少しでも経験者のアドバイスが欲しいナミとしては、

「分かった、参加を認めるわ」

あっさりOKするのだった。


 参加の許可が出たから伝えてくる、と柊は携帯電話でその相手を呼び出す。そして待つ事10数分後……

「お待たせしましたぁー」

セーラー服を着た1人の女子がスポーツバッグを背負い走ってきた。セーラー服越しにでもはっきり形が分かる程の大きな胸を見て、「うわ、巨乳……」と横にいる越花がボソッと漏らしたのをナミは聞き逃さなかった。が……
それ以上に、ナミは柊の呼んだ少女の容姿に見覚えがあった。否、忘れられる筈がなかった。

「か、加藤……夕貴(ゆうき)………」

ナミは目の前に立つ、この胸の大きな少女を見て戦慄する。そんな事は露知らず、夕貴と呼ばれた少女は女子ボクシング部員を見回し、その中にナミを見つけるや、

「あ……もしかして、下司さん? 光華(こうか)一中の」

意外な人物に会った、といった表情でナミを見つめる。

「そうよ。久しぶりね、加藤さん」

その目を見返しながら、ナミは再会を祝し右手を差し出すと、

「お久しぶりです」

夕貴も差し出した右手を固く握っていた。


 ナミと夕貴が再会の握手をしている中、「あの娘、誰なんですか?」とアンナが由起に訊ねる。その視線を夕貴の胸に向けながら……

「彼女の名前は加藤 夕貴さん。貴女と同じ一年生で、U(アンダー)-15の全国大会で優勝……つまり、下司さんを破った相手よ」

由起はアンナが夕貴の胸をまじまじと見ている様を、まるで観察するかのように見ながら疑問に答え、「私が知る限り、下司さんを公式の場で失神KOさせた唯一の相手よ」と真面目な表情で視線を握手している2人の方に移した。





「はじめまして。東京・私立建陽(けんよう)高校一年、加藤 夕貴です。今日から3日間、皆さんの練習に混ぜてもらう事になりました。お手柔らかにお願いします」

 改めて自己紹介し、夕貴はペコリと直立姿勢から頭を下げる。それを受け、部員たちもそれぞれ挨拶を交わしていく。

「さぁ、早速始めるわよ!」

お互い挨拶を終えると、ナミの号令と共に練習を開始した。





 初日と同様にストレッチをしてから5kmのロードワーク、腕立て伏せ・腹筋・背筋・スクワット50×5セット、100mダッシュ10本、両足を揃え踵の上げ下げを3分3R、そして帰りのロードワーク5km……これらを小休止を挟みながら行っていく。
筋肉痛の身体を引きずるように、皆必死に付いてきている。この程度の練習は慣れているのだろう、夕貴は涼しい顔をしていた。それどころか、率先して越花や順子などの素人組を元気に励ましていた。 

「はい、少し休憩!」

ナミから休憩の指示が入ると、部員たちはそれぞれ一息つき始める。そんな中、夕貴だけは少し離れた場所でシャドーボクシングを行う。

「シュッ、シュッ」

さすが中学時代ナミに勝っただけあって、動きが板についている。

(くッ、わたしだって負けないわよ!)

夕貴に対抗してか、別の場所でナミもシャドーボクシングをし始め、それを見た一同は、

(負けず嫌いな奴……)

と思った。





 一通りの基礎トレーニングが終わり、部員たちはキックボクシング部の部室に到着する。そこには、植木 四五郎(うえき しごろう)と吉川 宗観(よしかわ そうかん)、そして片山 那智(かたやま なち)の3人の男たちが何やら話し合っていた。

「お待たせー」

ナミは植木と宗観に声を掛ける。そして、那智の方を見……練習前に夕貴を見た時と同じリアクションを見せる。中学時代、夕貴が彼の事を『兄』と呼んでおり、ナミもその光景を見た事があったからである。
『兄』と呼ばれていたから、てっきり加藤性だと思っていたのだが……

「加藤ボクシングジム・会長“代理”の片山 那智です。そこの夕貴ちゃんとは義理の兄妹になります。今日は見学させてもらう事になってますが、肩肘を張らずにのびのびと練習に励んで下さい」


 礼儀正しい、柔らかな物言いの人だった。均整の取れた顔立ちで、糸目だが、それが更に柔和さを加味しているようである。ナミはこういったタイプの男性が嫌いではなかった。



ボクシングジムの会長としては若干疑問視していたが……



 一方、

「山之井(やまのい)ボクシングジム。トレーナー、吉川だ。よろしく」

宗観は無骨な表情で、且つ簡潔に自己紹介した。

「それじゃ早速始めるぞ」

2人のプロのボクシング関係者が挨拶を済ませると、顧問の植木の一声で、部室内での練習が開始された。
昨日と同じく、全員に基本姿勢を取らせる。プロの指導者がいる為、今回はナミも他の部員たちと同じ立ち位置で練習に混じる。

「昨日はそのフォームのまま、ただ立っていただけと聞いた。今日はそのフォームを崩さないように半歩前に歩く練習をしてもらう」

部員たちと対面に向かい合う宗観が声を出し、練習内容を伝える。全員が返事をすると、まずナミと夕貴が手本を見せ皆がその後に続いた。

「畑山、ちゃんと踵を上げろ!」
「桜、アゴを引け!」
「城之内(じょうのうち)、もっと背中を丸めろ!」

時折、フォームを崩した部員に対し植木の怒声が部室内に響き渡る。



カーーーン!



自動設定しておいたゴングが、2分間を正確に刻む。

「よし、やめッ!」

宗観の声を聞き、部員たちは動きを止める。

「1分休憩。これを後5R行う」

そして皆が休んでいる間、早くも次の指示をする宗観であった。





 そうして宗観の指導の下行われた練習も終わり……

「ハァ、ハァ………」

部員の大半はその場で腰を降ろしてしまっていた。全身汗にまみれ、由起が手渡したタオルがあっという間に重くなるほどの量が流れ落ち、すぐさま植木がスポーツドリンクを皆に振舞う。
そんな状況の中、夕貴はまだ1人サンドバッグを叩き続けていた。

「ハァ、ハァ……ま、まだ動けるの………?」

その様子を見た越花は信じられない、といった顔で呟き……あまりの気持ち悪さに思わず両手で口を押さえた。

「ちょ、バケツッ!」

いち早く越花の異変を察知したナミは、足元に置いてあったバケツを引っ掴むと越花の口元に持っていく。

「うぇぇーーッ、げぼぉ! ぅげええぇぇーー、おえぇ……」

バケツ内に、胃液やら吐寫物やらを思う様吐き出す越花の背中を擦りながら、

「いつかアンタもあれぐらい動けるようになるわよ」

ナミはあまり気休めになっていない励まし方をしていた。


 練習が終わって部員たちが一息つき終えた頃、夕貴はナミに

「下司さん。もし良かったら、今からスパーリングしません?」

と、いきなりスパーリングの申し込みをしてきた。

「ど、どうしたの? 急に」

あまりに急な申し出だった為か、返答に詰まるナミ。

「え? いえ、まさか柊ちゃんが通ってる高校に貴女がいるなんて思ってなくて……つい中学の時の試合を思い出して……それで手合わせしてみたいな~、なんて………ダメですか?」

歯切れの悪い返事をしたナミだったが、夕貴の方も言葉に詰まり表情をコロコロ変化させながら、最後にはナミの顔を覗き込むような仕草をしてみせた。それは、まるで何かを懇願する仔犬のようにも見えた。


 その様子にどうしていいのか分からなくなったナミは、助けを求めるように植木の方を見ると、

「んー。俺も宗観もいるし大丈夫か……よし、胸を貸してもらえ!」

親指を立ててOKしてしまった。

部員たちが見守る中、スパーリングが始まろうとしていた……




to be continued……
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チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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