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第2話 『植木、キレる』

 プロボクシング編、第2話です。あと、ついでみたいな感じでいやらしいのですが、氷兄様の【BoldBlanch】とリンクさせて頂きました。氷兄様、ありがとうございました。



新年を迎え、新たに雪菜、秋奈という2人の部員が加わった光陵女子ボクシング部。順風満帆に行くかと思われたその矢先、不穏な影が部を包もうとしていた。










 2011年始めの月も半月を過ぎた頃。光陵女子ボクシング部に時季外れの新入部員、比我 秋奈(ひが あきな)が来て2日後……それは起こった。
校内でも有名な不良グループに絡まれていた秋奈を偶然通りかかったナミが保護、助け舟のつもりで彼女を入部させたのだが、ナミたちの予想を上回る執着心で不良グループは女子ボクシング部室へと姿を現したのだ。

乱暴な音を立て、部室のドアが開かれる。その中、一足早く物品準備をしていたナミと秋奈、そして越花は招かれざる客たちの方へと正対した。

「おーおー、女のクセにいっちょまえに大した部室使ってんじゃねえか、え?」

ズカズカと遠慮の欠片もなく、不良グループの中の2~3人程が土足を鳴らし辺りのトレーニング器材を蹴り飛ばす。
ガラガラと派手な音を奏で、床へ散らばっていく器材。

「……なんの用?」

お目当ての宝であろう秋奈を庇うようにズイッと前に乗り出し、ナミは不良たちを睨みつけた。聞くだけ野暮は分かっていたが、とりあえずナミは訊ねる。

「あ? ンなモン決まってんだろーが。そこのオカッパのチビをこっちに渡しな。足をぶつけられた礼がまだなんだよ」

先日秋奈を助けた際に間近で絡んでいた、丸坊主の強面な男が睨みをきかせながらナミにズイと寄ってきた。
相手が自分より小さな、しかも女とあってか完全に舐めた態度である。

確かに普通の女子生徒であれば、或いは肝を冷やしてしまうかも知れない威圧。だが、丸坊主は威圧を掛ける相手を誤った。

常日頃から大人の男性に交じってボクシングジムでトレーニングし、しかも1歩も物怖じしないナミである。潜った修羅場が違う。

「なにが“足をぶつけられた礼”よ。こんな、わたしより小さい娘にぶつかられた程度でガタガタ言うなっての! 肝っ玉の小さいヤツね。それとも、こんな娘にぶつかられた程度で骨でも折った? どれだけひ弱なのよ!」

丸坊主の威圧に対し、ナミは挑発混じりに突き返した。

思いもよらぬナミの反撃に、男はあっさりと沸点に達したらしく顔を赤くする。不良たちを相手に全く怯まず突き返す主将の後ろで、越花と秋奈はただオロオロするばかり。
しかし、この場合彼女たちを責める事は出来ない。何故なら、越花たちの反応こそが恐らくは正常なのであろうから。



 最初は口だけのぶつけ合い程度だった不良たちも、ものの数分足らずで埒があかないと暴力に訴えてきた。

「ッのアマぁーー!!」

口汚く叫び、丸坊主が一旦後ろへと腕を振りかぶると、大振りでナミの顔面目掛けてパンチを放つ。いわゆるテレフォンパンチという、素人によくある大振りのパンチである。
自分より大柄な、しかも素手のパンチだけに、もし当たれば大変な事になるかも知れない。ただ、女といえど仮にもI・H全国ベスト8の実力を持つボクサーである。
モーションの大きいこのようなパンチが万一にも当たる訳もなく、上体を僅かに右へずらし難なくかわしてみせた。
すかさず条件反射で右拳を脇腹へ打ち込もうとするのを、ナミは慌てて制止。

(やっば! あんまり遅いからカウンター入れる所だった)

先に手を出されたとはいえ、こちらが手を出すわけにはいかない。暴力事件を起こすのは明らかに部にとってマイナスだし、何より自分はボクサーだ。

ボクサーがリングの上以外の場所で拳を振るうなど、言語道断というものだ!

しかし、こんな時に限って男子ボクシング部主将の桃生が生徒会役員会で留守にしているとは、なんとも都合の悪い事か。
頼みの生徒会長がいないこの状況、どうやって切り抜けたものかと丸坊主の攻撃を捌きながら思案を巡らせていたナミ。そこへ、

「ナミちゃんッ!!」

後ろから誰かの金切り声が聞こえてきたかと思った矢先……



ドカァッ!



右の側頭部に鈍痛が走ったと思った瞬間、ナミの視界は一瞬にしてブラックアウト。そのまま意識を失ってしまった。








「……ぅ………」

 右側頭部から伝わる鈍痛と、誰かに両腕を捕まえられ立たされている感覚にナミは微かだが意識を取り戻した。
まだ微睡み加減の視界に映ったのは、四方に打ち立てられたコーナーポストと、そこから上下等間隔に間を空け伸びている4本のリングロープ。
足の裏から伝わる地面は、若干沈み込む程度の柔らかさで、否応なくここが部室のリングの上である事を理解していた。

「お。目ぇ覚ましたぜ、コイツ」

覚醒して程なく横合いから声が聞こえ、次第にその発信者の姿によってナミは視界を遮られてしまう。
咄嗟に距離を取ろうとするも、両腕をロックされているのとすぐ背後がコーナーポストらしく身動きが取れない。

「ジタバタすんなって……」

の! の掛け声と同時に、声の主は小さく右膝を振りかぶり、ナミの腹へ容赦なく叩き入れた。



ドスッ!



「ぅぐッ」

思い一撃を腹に見舞われ、ナミは息が詰まり目を見開いてしまう。周囲からはふざけ半分に喝采が上がり、膝蹴りを入れた男子生徒がそれに応える。
ちなみに、越花と秋奈の2人は部室の端に追いやられ震えるばかり。
桃生の助けが期待出来ない以上、まだ来ていない他の部員の誰かが異変に気付き、顧問の植木を呼んでくれるのに一縷の望みを賭けるしかなさそうだった。

とにかくも、越花と秋奈に手を出される訳にはいかない。

「な…なにこのショボい、膝……けほ、複数で捕まえておいて、こんな…程度?」

不敵な笑みを浮かべ、ナミはことさらに挑発してみせる。注意を自分に向ける事で、越花や秋奈に被害の及ばないようにする為であった。



 この手の不良はプライドが高い。少し自尊心を傷付けてやれば、標的は自分の方へ向く事だろう。



ズンッ!



「ぐぅッ」

案の定、目の前の不良は激昂の表情を浮かべながら大振りのパンチをナミの腹にぶつけてきた。咄嗟に腹筋を入れたものの、やはり男のパンチはキツい。
さらに2発、3発と連続で腹にパンチを入れられたナミは、胃の中の物が徐々に逆流してくるのを感じ我慢する。
だが、結局助けの来ないまま都合10発目、靴の爪先を鳩尾にめり込まされた瞬間、

「ぐぉッ! お…ぉぅッ、ぐぷぅ……おぇぇ」

限界を超えたその口から反吐を吐き出してしまった。

「ナミちゃんッ!!」

越花の悲痛な叫びが、部室全体に木霊する。腕を取られた状態で、ナミは下を向き何度も嘔吐してしまう。
目には涙を溜め、身体を上下させながら荒く不規則な呼吸を繰り返す。そんなナミの前髪をひっ掴み、不良はグイッと乱暴に持ち上げた。

「きったねえ! なに吐いてんだ? ボクサーっつっても、所詮は女だな、あ?」

口汚く罵られ、ナミは悔しさに唇を噛む。


こんなクズに吐かされるなんて……


状況が状況だけに、自力では逆転の一手すら打てない。このまま連中のリンチが続けば、吐くだけでは住まないだろう。
ナミは、いよいよ覚悟を決めた。そんな中、外から俄かに喧騒が聞こえてきた。
何事かと窓を見ると、外にいた不良たちを蹴散らしこちらへと向かってくる影がひとつ。そしてその後を付き従うもうひとつの影。

(四五兄ィ? 順子?)

どうやら順子が部室での騒動に気付き、植木を呼んできてくれたらしい。外にいた不良たちを払いのけ、植木は今まで見せた事のない憤怒の形相で部室前まで歩み寄り……



バンッ!



派手な音を立ててドアを開いた。自然、その視線は両腕を取られキャンバスへと嘔吐物を撒き散らしてしまった、リング上の大事な人間へと注がれていく。

その時、彼の中で太い1本の線がミチミチと嫌な音を立て……ブチンッ! と勢い良く切れた。

「テ……テメエらぁ………テメエらぁぁぁあーーッ!」

上着を素早く放り投げネクタイを緩めるや、植木は一直線にリングへと駆ける。眉を吊り上げ、怒りそのものを体現したようなその形相は、さながら地獄に住まう鬼の如く。
ナミの両腕をロックしている男、また暴力を働いた男は、植木の形相に肝を冷やしてしまったのかその場で凍り付いてしまい……



グシャアッ!



ロープをひとっ飛びに飛び越えた、植木の右拳を顔面に受けていた。悲鳴もなく2人は吹き飛び、もんどり打って倒れた後、ピクリとも動かなくなってしまった。
鬼はそれだけに止まらず、外にいた数人も一気に葬り去る。

かくして、不良グループは元・日本2位のプロボクサーの手によって跡形もなく打ち砕かれ、男は右拳を朱に染めたまま仁王立ちするのだった。



 一連の騒動に前後して、ようやく他の部員たちが現れる。そして、転がる不良たちと立ち尽くす顧問、さらにはコーナー際で腹を抱えながら座り込んでいる主将の姿に絶句してしまう。

「先生……」

そんな状態にあって、辛うじて声を絞り出したのは由起。この事態を予期していたのだろうか、心も苦々しげにチッと舌を打つ。
植木を呼びに行った順子は、無言でナミに肩を貸してやりながらリングから下ろす。

「し…ご…にィ……どう、するのよ………コレ」

順子に肩を借りたまま植木の下まで寄り、ナミは倒れたまま起き上がる気配の見せない不良たちに視線を向けた。


やってしまった


そう、誰もが感じていた。この惨事の前がどのような状態であったにせよ、仮にもいちクラブの顧問が他生徒に対し拳を振るったのだ。
世間的には、立派な暴力事件といえるだろう。彼とて、勿論これがどういう状況なのか理解はしている。
上手くいけば懲戒免職程度で済むだろうが、下手をすれば部を取り潰しの上警察の厄介になるかも知れない。
だが、大事な教え子をあのような目に遭わされて尚平静を保っていられる程、植木 四五郎という男は大人たり得なかった。

1度だけ自分と他人の血が入り混じった右拳を見、再び空を見上げる。そして、「すまん」と一言だけ残し、植木は新校舎の方へと歩いていくのであった。





to be continued……
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コメント

No title

不良グループって男だったのネw
男がオニャノコいじめてるなんてww
まぁ死んで当然www(死んでない
そしてまさかのナミちゃんリ○ナ祭りww
今年の夏はナミちゃんの薄い本が出そうな勢いだわネ!!

しかし、アンナちゃんあたりがスケバンをぼこる展開かと思ってたら大事になってきたわね。

第2話からしてこんな内容になってしまいました、プロボクシング編。ちょっと違う風を入れたらこんな結果に……
確かにリ○ナって言われても仕方なかったかも知れません。
そして植木の去就ですが、それは次話のお楽しみという事でひとつよろしくお願いします
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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