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プロボクシング編・第1話 『季節外れの新入部員たち』

 新シリーズ、「プロボクシング編」の第1話です。タイトルこそプロと銘打っていますが、まだまだ部活動がメインだったりします。
これからまた長くなるとは思いますが、よろしくお付き合い下さい。



季節は移り変わり、三学期に入った光陵高校。主将、下司 ナミを筆頭に女子ボクシング部は日々の練習を繰り返していた。そんな中……









「おい、葉月」

「「はい?」」



 2011年、1月。冬の冷え込みも逃げ出す陽気さと活気、熱気に包まれたここ、神奈川県・私立光陵高校の女子ボクシング部室内。
顧問の植木 四五郎(うえき しごろう)が、副主将の葉月 越花(はづき えつか)に声を掛けた所……よく似た間延び口調による返事が、二重奏となって返ってきた。

ひとつは言うまでもなく越花のもの。
そしてもうひとつは、越花に瓜二つの容姿の少女のものである。

違う所といえば、越花がアクセントとしてこめかみの左側を通る髪にヘアピンを刺しているのに対し、少女は真逆の位置にある事。
それと、体格の差であろうか。160cm後半ある越花に対し、瓜二つのその少女は150cm弱。
ボクシングの階級で表すなら、越花がフェザー~ライト級なのに対して、少女はライト・フライ級辺り。
越花と声をハモらせた少女……その正体は、元I・Hライト・フライ級福島県代表、葉月 雪菜(はづき せつな)であった。



 元々福島県在住のこの従姉妹が、現在この場にいるのには家庭的な事情が絡む。雪菜の両親が長期に渡る海外出張となり、その際娘は日本に残る事を主張。
といって、1人実家に取り残す訳にもいかず、弟夫婦……つまり越花の両親に預ける事にしたのであった。

そうした事情により、雪菜は三学期早々に異例の転校を果たし女子ボクシング部に在籍する運びとなったのである。

葉月が2人になった事で辟易する思いの植木、思わず「ん~~。んじゃあ、大きい方の葉月」などと口走ってしまう。途端、

「うわ、ヒドい」
「センセー、鬼か!」
「大小で区別するなんて…」

他の部員たちから非難の雨に見舞われてしまった。

更に辟易しつつ、「だったら越花……こ、これでいいか?」と諦めて下の名前で呼ぶ事にし、改めて本題に入ろうと話を続ける。
ささやかなやり取りが終わり、再び練習に戻っていく部員たちを横目で見やりながら、植木は越花に話を進めた。

「えっとだな。知ってるとは思うが、下司はプロになるつもりでこれから動かないといけないんだ」

植木の言葉に、無言で頷く越花。

「これまではあいつが部を引っ張ってきたが、二年生になれば来れない日も出てくるだろう。そこで、大内山と協力してこれからはお前に部を引っ張っていってもらいたい」

植木の言わんとする所を、越花は正確に理解した。プロのボクサーになって世界チャンピオンになる、それがナミの夢である事は重々承知している。
入学式の時、誰憚る事なくその夢を語ったナミの姿を見て、越花も彼女に惹かれてボクシングを始めたようなものなのだから。

「はい。ナミちゃんと違って、みんなをぐいぐい引っ張ったりとかは上手く出来ないと思いますけど、私……精いっぱい頑張ります」

一言一言確かめるように、もしくは自分に言い聞かせるように、越花は植木の要請を受諾する。
返答を受けた植木は、にっこり微笑むと越花に練習復帰を言い渡した。



 現在、光陵高校女子ボクシング部の部員数は10名。

うち選手として登録しているのが、

・下司 ナミ
・桜 順子
・高頭 柊
・杉山 都亀
・知念 心
・城之内 アンナ
・葉月 越花

そして、新入部員の葉月 雪菜の計8名。

マネージャー、トレーナー、また試合の際セコンドとして登録しているのが

・大内山 由起
・中森 陽子

の2名という構成。

クラブの規模としては、昨年4月に発足という事を考慮に入れれば結構な数になってきている。

実績に関しても、実は相当に優秀な成績を収めているといえるだろう。

2010年、I・H全国大会ベスト8が2名。
同年、全日本アマチュアボクシング選手権大会優勝が1名。
しかも、柊に至っては極秘に2012年のロンドンオリンピック強化選手にもスカウトされているのだ(これに関しては、柊の希望により植木と由起以外の者には知らされていない)。

これは、もう立派に県下の実力校として恥ずかしくないものといえた。

ちなみに、唯一の三年生部員であった『鬼東』こと東 久野(あずま ひさの)は、二学期の終了と前後して正式に引退。
最後の日、近しい階級の越花、知念 心(ちねん こころ)、城之内(じょうのうち) アンナが3人がかりで追い出しスパーリングを敢行したのだが……
越花はあっさりと返り討ちに遭い、心も粘ったものの押し込まれ、アンナが疲労困憊の久野をようやく倒すという散々たる結果だった。



 そんな、一・二年生のみの構成となった、ある日の事。普段通り部活準備をしていた部室内に、主将たるナミが入ってきた。

1人の女子生徒の手を引っ張りながら。

「やあゴメンゴメン、遅くなっちゃった」

どことなく息を弾ませるナミと女子生徒に、部員一同が一斉に注目する。ナミの連れてきた女子生徒は、柊によく似たボブカットで彼女より小柄。
一見人見知りのようなオドオドとした態度は、気弱そうな性格を連想させた。

「誰、そいつ。入部希望?」

屈伸運動を続けながら、桜 順子(さくら じゅんこ)が女子生徒を一瞥し訊ねる。

「そういう訳じゃないけど。なんか不良グループに絡まれてたから引っ張ってきたの」

順子の質問に、ナミが経緯を交えて答えた。ナミの口から出た不良グループの単語に反応したのは、アンナと2人ひと組でストレッチの最中だった心。

「ああ、アイツらか。鬱陶しい連中に目つけられてるね、あんた」

元より鋭い目を更に細め、心はナミの連れてきた少女を見据える。
心曰く、常に5~6人で徒党を組んでいる連中で、気に入らない、もしくは『気に入った』相手を精神的・肉体的暴力で蹂躙するという。
それも、弱そうな者を巧妙に選りすぐって行うらしい。
学校にとって目の上のこぶのような存在なのだが、現行犯で押さえられておらず証拠が不十分として、手が出せない状態だった。
クズの集まりだよ、あれは……と心は舌打ちしながら吐き捨てるように悪態を吐いた。

「なんかずいぶん詳しいんだね、心」

一緒にストレッチをしていたアンナが、豪奢な金髪をポニーテールに結い直しつつ話に混ざってきた。不良グループと聞いて、闘争本能が刺激されたのだろうか。

「アタシも絡まれた事があるからね」

事も無げに返答する心。彼女がまだ女子ボクシング部に入部する前、素行不良の生徒だった頃に絡まれた事があったらしい。
徒党を組んでいる彼らにとって、一匹狼を気取る心はさぞかし目障りな存在だったのだろう。

「『調子に乗ってんじゃねえぞ!』とかほざいてて癇に障ったから、1人ぶちのめしてやったら絡んでこなくなったよ」

この辺り流石というか、心は彼女なりの処世術を行使していたようであった。
心の話にすっかり萎縮してしまっている女生徒を見兼ね、談笑の脇で自分の準備に専念していた由起が溜息をひとつ。助け舟を出してやる事にした。

「それはそうと、貴女名前は?」

由起に話を振られ、女生徒は弱気な表情と声色で自己紹介を始める。

「あ、あのッすみません! 私、一年の比我 秋奈(ひが あきな)と、いいます…下司、さん、さっきは…た、助けてくれて、あ、ありがとうございましたッ!」

噛みに噛みまくりながら女生徒……比我 秋奈は俯き加減で自己紹介した後、ナミにペコリと頭を下げた。

「い、いやあ別にいいわよそんなの。んで、アンタなんでアイツらに……あー、いいわ、言わなくても」

それだけオドオドしてりゃ絡んでくれって言ってるようなものだもの、と勝手に完結させるナミ。だが、事実であった。
何の事はない、秋奈のその態度が不良グループたちのイジメ心を刺激しただけなのである。ナミの言いように、抵抗もせず下を俯く秋奈。
その態度を見て、同情を禁じ得なかったのか、はたまた別な何かを思いついたのか。ナミは意外な提案を持ち掛けた。

「えーっと、比我さん。なんだったら、女子ボクシング部に入ってみない?」

これには、部員一同が驚いた。

ボクシングは、例え高校の部活といえど結構な危険が付きまとう。故に、その危険を享受する覚悟のない者を入部させる訳にはいかないと、当のナミが厳しく言ってきた事なのだ。
それが、今回は事態の赴くままに訪れただけの一年生を相手に入部を勧めたのだから、驚かない筈がなかった。

「下司さん、比我さんは別にウチに入部したくてここに来た訳じゃないのよね? どう見ても覚悟があるって風には見えないわ。貴女がそんな簡単に意見を変えたのでは、他の部員の信頼を無くすわよ」

ナミの提案に、最初に食いついたのは秋奈ではなく由起であった。覚悟のない者の入部を認めない方針を打ち立てたのは、誰でもないナミ自身ではなかったのか。
口先ばかりで、方針を二転三転させては誰もついていかなくなる……由起は、暗にそう諭しているのである。
由起の発言に、順子や心など数人が賛同の意を示す。が、ナミはそれを見た上で微笑みながら返した。

「もちろん、覚悟のない人を入部させるつもりはないですよ。だから、これはあくまで“仮”入部の話。今回は偶然割り込んだから彼女も助かりました。でも、これからはどうです?」

根本的な部分は何1つ解決していない。即ち、イジメは続く事になる。少なくとも、不良グループたちが飽きるまでは。

「だったら、形だけでもウチに入ってもらって、わたしたちがサポートしてあげた方がいいんじゃないかって……どうです?」

ナミの返答に、由起はしばし熟考した。人助けという人道的な理由では、直接でないにしろ秋奈の助けにはなるだろう。
女子ボクシング部という、人の和を活用すれば1つのイジメを無くす事も出来るかも知れない。
何より、部室の隣には鉄の生徒会長・桃生 誠(ものう まこと)率いる男子ボクシング部が鎮座しているのだ。

不良グループとて、迂闊な行動は出来ないと思う。

「ふう……分かったわ。彼女を連れてきたのも、きっとなにかの縁だったんでしょう。私はこれ以上口を挟まないわ」

降参の意思表示として両腕を少しだけ上げ、由起はナミの提案に賛同。由起の部内に於ける発言権を知る他の部員たちも、次々と提案に賛同していった。
当の秋奈本人も、若干の戸惑いを見せ続く入部の意を示す。かくして、妙な縁と主将の半ば強引な勧誘によって、比我 秋奈は女子ボクシング部の一員となった。



 葉月 雪菜と比我 秋奈を加え、思いも新たに出発する事になった光陵女子ボクシング部。そんな中で1人、柊は表面的にはいつも通りのままで、内心では秋奈の入部に若干喜んでいた。

(よーし、やっとオレより小さいヤツが入ってきたぜ。もう他の連中にデカい顔はさせねーからな!)





to be continued……
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コメント

No title

>秋奈の入部に若干喜んでいた

何か伏線かと思いきや…次の行で笑ってしまったワww
柊ちゃん、背の低さそんなに気にしていたのネwww
それにしても秋奈ちゃんは正統派の美少女ね。
一癖も二癖もある光陵の面々の中でかなり珍しいタイプね!w

!?弥栄ちゃんとアイドルコンビ結成だわね!?

とにかくも始まりました、プロボクシング編。久野が抜けて代わりに入ってきた雪菜や秋奈共々、新生光陵女子ボクシング部をよろしくお願いします。
気弱なタイプって意外と少ないかも知れませんね、そういえば……

柊の背の低さに対するコンプレックスは相当なモノと思っていただければw
Secre

プロフィール

チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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