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第6話

 第6話です。

男子ボクシング部主将・桃生に呼び出されたナミ。案の定、女子部の設立に反対されたのだが、意外な所から救いの手が……




 ナミを論破し、追い返そうとした桃生(ものう)に1人の女子が口を挟んでくる、という展開に練習していた部員も1人、また1人と集中力を途切れさせ聞き耳を立てていた。

「コラお前ら! 誰が休んでいいと言った!!」

数人の部員が集中していない事に気付いた副主将・浜崎(はまさき)が眼鏡を光らせ激を飛ばす。一方、桃生と大内山(おおうちやま)と呼ばれた女子とのやり取りも続く。

「要は名門校としての面目が立てばいいんでしょ? 桃生君は」

「その通りだ。それを汚すリスクを犯してまで女子部など作る必要は……」

「その辺は大丈夫だと思うわよ。なんせ、この下司(しもつかさ)さんはU(アンダー)-15の全国大会で準優勝した実力者だし」

ナミはこの女子が自分の事を知っている事に驚く。大内山はナミの方をチラッと見て軽くウィンクを送り、

「それに、私も彼女らを支えていく事に決めたから」

そう言いながら近くにいた男子マネージャーにタオルの束を渡す。


「大内山………ふぅ、勝手にしろ。今この時点でお前は退部だ」

 いきなりの桃生からの退部発言を受け、さすがに周囲に動揺が走る。その中に、ナミと我聞 鉄平(がもん てっぺい)も含まれていた。
ナミは自分を擁護するような発言をしたせいで。一方の鉄平は自分がナミを連れてきたせいで。それぞれ悔恨の念に駆られるような、そんな気分だった。

「先輩……」

耐え切れず鉄平が大内山に声を掛けると、手の平を向け鉄平の発言を制止し、

「これまでのご指導、ありがとうございました」

桃生に頭を下げたのだった。

その間桃生は後ろを向き、無言のまま大内山の言葉を聞いていた。

(やはり置き留める事は出来なかったか……大内山。惜しいな………)


 ややして頭を上げた大内山は

「よろしく、下司さん。それじゃ行きましょうか」

ナミを伴いボクシング部室を後にしようとする。その時、

「待て」

後ろを向いていた桃生が2人を呼び止めた。

「俺はまだ女子ボクシング部の設立を認めた訳ではない。が……」

桃生はそう言いながら振り返り、

「貴様ら女子ボクシング部が存在するに相応しいかどうかテストしてやる」

尊大に言い放った。




「テスト、ですか?」

「そうだ。我がボクシング部が貴様ら女子ボクシング部と試合を行い、2勝以上出来たなら認めてやる。なんなら新しい部室の申請も俺の方から校長に口利きしてやってもいい」

ナミは思わず息を呑む。非常に魅力的な条件であった。まるで桃生が天の使いのように思えてくる。

「が、もし条件を満たせない場合は……女子ボクシング部設立の話は今後一切許さん。少しでも耳に入れば即刻退学だ。俺の持つ全ての権限を使ってでもな!」

訂正。悪魔の使者だった。

「分かった。その条件受けるわ」

桃生の提案に対し、ナミが決める前に隣の大内山が即決し返答していた。

「ちょ、大内山さん……?」

ナミとしては他の部員とも話し合った上で返答しようと考えていたのだが……

「わかりました。わたしも異論ありません。よろしくお願いします」

と頭を下げ、

(こうなったら皆にも覚悟を決めてもらうしかない)

ナミはそう腹を括り、今度こそボクシング部室を後にしようとする。

「日時が決まり次第連絡する。1人でも多く部員を集めておくのだな。今回に限り助っ人も許可してやる。最低5人は用意しておけ」

桃生は部室を出ていく2人に、最後の通達を告げると練習に戻っていく。ナミと大内山は一礼すると、今度こそ部室を後にした。





 2人は歩きながら無言だった。が、途中で

「自己紹介がまだだったわね。私は二年の大内山 由起(ゆき)よ。ボクシング部のマネージャーをしてたわ。トレーナーやセコンドとしての心得もあるから、少しは力になれると思うけど……」

いきなり沈黙を破り自己紹介をしてきた。ボクシング部での一件からこの方、急な展開続きだった為に自己紹介をする事もされる事も忘れていたナミ。慌てて自己紹介しようとすると、

「知ってるわ。下司 ナミさんでしょ? 光華(こうか)一中の。確かU-15全国女子ライトフライ級の準優勝者……」

機先を制するようにナミの経歴を述べ始める。次々と続く由起の言葉を聞いていくうち、ナミはそら恐ろしい感覚を味わっていった。何せ、由起の話す事悉くが身に覚えのある事ばかりなのである。

(なんなの? この人……一体何者なわけ?)

ナミはそう思わずにはいられなかった。


 そんなナミとは裏腹に、大まかに話し終えた由起は「違った?」と得意げな顔で聞いてきたので、

「いえ、違ってません」

とナミは答えた。答えるしかなかった。

「ふふ、私の情報収集能力も捨てたものじゃないわね」

その答えを聞くや、由起は笑顔を見せながら自画自賛する。

「よ、よくそれだけわたしの事なんかを調べましたね?」

由起の見せる笑顔に軽い気味の悪さを感じつつ、表情には見せないよう努力しながら話しかける。

「貴女この辺りじゃちょっとした有名人だもの。それに、植木(うえき)先生の教え子でもある訳だし」

「え?」

ここで植木の名前が出てくるとは予想していなかったナミは、つい気の抜けた返事を返してしまった。そんなナミを見てクスクス笑う由起。
恥ずかしさで赤面しながら、2人は校門に向かう。今日はもう他の部員が帰ってしまった為、紹介は明日改めて行う旨を由起に告げ、2人は校門前で解散した。




 翌日の放課後。ナミは改めて由起の紹介と、そして男子ボクシング部との試合をする事になったいきさつを皆に話す。皆口々に不平不満を漏らしていたが、ナミは黙っていた。そんな中、何故か城之内(じょうのうち)アンナだけが妙にやる気になっていたのが気になる所ではあった
が……

「まあ決まった事をいまさら言っても始まらないし、やるからには勝ちにいこうよ」

アンナは金色の髪を揺らしながらシュッ、シュッ、とシャドーボクシングの真似事をする。その、ヤケに頼もしいアンナの姿を見て、

「さすがイギリス人のお母さんに武術習ってただけの事はあるね、アンナちゃん」

と嬉しそうに葉月 越花(はづき えつか)が相づちを打つ。その瞬間、

「……え? イギリス?」

アンナの動きが急にピタッと止まり、越花の方を見た。

「?」

いきなり動きを止め凝視された事に、何かマズい事でも言ったか? と小首を傾げる越花。

「私のお母さんはイギリスじゃなくてイタリア人だよ? 越花ちゃん」

「………あれ?」

そうだったっけ? とでも言いたげな顔をする越花に、アンナは少し呆れた表情を、そして次に笑顔を見せた。それは、なんとも人懐っこい雰囲気の表情であり、親しみが持てる類のものであった。


 外見のせいで遠慮してしまいがちだが、城之内 アンナという女の子は話してみると実に気さくな、親しみやすい性格の少女なのだな、とナミは思う。
……と同時に、初日に越花を天然だ、と思った自分の勘に間違いはなかったと確信したのであった。





 とにもかくにも、校長が提示してきた第一条件、

選手(候補)5名以上
マネージャー1名以上

は無事達成する事が出来た。次は男子ボクシング部との試合で2勝以上する事である。

(これが中々の難関よね。とりあえずわたしで1勝確定として……問題はもう1勝上げられるのがいるのか? って事なのよねぇ)

と、ナミは心の中でそう思い、思索するのだった。




to be continued……
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チャパロット

Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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