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第4話

 第4話です。

女子ボクシング部を作る為、部員集めを始めるナミ。そんな中、公園のバスケットコートに気になる同級生の姿があった。




   
 ナミがバスケットコ-トに近づいていく間も、柊(しゅう)は一瞬たりとバスケットの練習を止める事なく走り続けていた。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ!」

額に珠の汗を浮かべ、一心不乱に走り続け巧みにボールを操る。バスケットにはとんと詳しくないナミだが、最初に見せた跳躍といい素早いドリブルといい、柊の身体能力が只ならない事だけは理解出来ていた。特に注目を引いたのは、左右のステップの切り替えの速さである。

(ステップの切り替えがメチャクチャ速い! もしあんなスピードでリング上を動かれたら、捕まえられるかどうか……)

ボクシングをしている訳でもないハズなのに、

(もしリング上で対峙したら)

などと脳内でシミュレーションしてしまう。ナミの悪い癖であった。



コロコロ………コン



 爪先に何かが当たる感触を感じ、そこでナミは我に返った。

「ん?」

爪先に当たった感触。それはバスケットのボールだった。スッとナミは足元のボールを拾い上げる。


「おーーい! 悪いな、ボール取ってくれ」

 タッタッタッ、とボールの持ち主である柊が駆け足でナミに近寄ってきた。

「拾ってくれてサンキュな。それをこっちに投げてくれよ」

柊はボールを返却するようにナミに話しかけてくる。が、いくら声を掛けてもボールを投げ返してくれる様子がない。無視されているのか? と段々腹の立ってきた柊は、

「おい聞いてんのか? オレはボールを返してくれ、って言ってんだよ」

語気を強めにして、先程より大声で呼び掛けてきた。


 一方のナミはというと、初めて声を掛けてきた柊に対して、1つの印象を抱いていた。

(うわぁ、口悪い……しかも『オレ』って………)

見た目と口調とのギャップが激し過ぎたせいか、ナミは軽い思考停止状態となってしまっていた。同姓からも動揺が起こる程の美貌を持つ女子が、あろうことか一人称『オレ』である。
そんな軽くトリップ状態だったナミは、柊の大声で

「え? あ……ご、ごめん」

と、ようやく思考を現実に戻した。ぼーっ、としていたナミがようやく反応したのを確認出来た柊は、

「お前、大丈夫か?」

と一言だけ心配そうに訊ね、ボールを返して貰ってからいきなりナミの腕を掴んで木陰に設置されているベンチに強引に連れて行き、そして強引に座らせた。

「ありがと、高頭(たかとう)さん」

ナミがベンチに座ったのを確認してから、自身も横に腰を掛ける。ボールを足元に転がし、隣に置いてあったカバンからスポーツドリンクを1本取り出し、ナミに手渡した。

「柊でいいって」


 スポーツドリンクを手渡すと、カバンからもう1本同じ物を取り出し口をつける。

「……」
「……」

ベンチに座ってからというもの、お互い無言になる。そんな沈黙が1分を過ぎた頃、

「あんまり無茶しねえ方がいいぜ。下司」

いきなり柊が話しかけてきた。

「え、なんで?」

いきなり話しかけられた事もそうだが、何よりちゃんと名前まで覚えていた事に驚き、つい変な返答をしてしまうナミ。


「なんでって………あれだけ教壇の前で熱弁されりゃあイヤでも耳に入るっての」

 ナミから妙な返答を返され、怪訝そうな表情を浮かべながらぶっきらぼうに答える。

「それに」

柊はさらに言葉を続けようとしたが、何かに気付いたかのように口をつぐみバツが悪そうにコートの方を見つめた。

「それに?」

途中で話を止められ、気になって仕方がないナミは自分を抑え切れずに続きを催促する。

「別に。オレの知り合いにそっくりだ、って思っただけだよ」

そっぽを向いたまま、吐き捨てるように呟くとボールを拾い上げベンチから立ち上がった。それに合わせてナミもベンチから立ち上がる。

「ねぇ」

「ん?」

「わたし、女子ボクシング部を作るつもりなんだけど」


 そう言いながら例のプリントを柊に手渡す。

「アンタを誘ってみようかな? と思ったんだけど……」

「だけど……? なにか都合悪い悪いのか」

プリントを適当に眺めながらも、勧誘を断念したような口調に柊は首を傾げる。


 ナミは、個人的に柊を初めて見てから何か惹かれるものを感じていた。それは、この公園で柊の動きを目撃し話をした事で深まるばかりだったのだが、よくよく考えてみれば身体能力がズバ抜けていようと球技とスポーツ格闘技とでは分野が違う。
そして何より、彼女はもうバスケット部に入っているのではないか? と思い至ったのである。ナミは柊の持つボールを指差し、

「だってもう入ってるんでしょ? バスケ部に」

と聞いてみた。すると、柊はボールを指の上で器用に回しながら

「あ? ああ。バスケは好きだけどオレ、部活はやった事ねーよ」

と言い放った。

「そ、そうなんだ。じゃあ……」
「だからって! 別にボクシングやりたい、って訳でもねーぞ」

バスケット部に所属していない旨を聞いたナミは、すかさず勧誘に切り出そうとしたが間髪入れずに否定されてしまい、沈んだ表情を見せる。

「でもまぁ、ヒマだったら顔ぐらい出してもいいぜ」

と、そんなナミに一言だけ付け加えると、柊はまたコートに戻っていった。





 公園で柊と別れ、帰路に着いたナミは明日からの勧誘方法や集まった後の練習メニュー等を考えながら、その日は早めに寝付いた。
翌朝。いつも通りAM5:00に起き、早朝のトレーニングをこなし、朝の支度を整えてから学校に向かう。
最寄の駅に到着し、学校へ向け歩くナミ。とりあえず登校してくる生徒たちを対象に、少しでも勧誘してやろうと考えていたのである。
そんな事を考えながら歩いていた為、脇道から人が近付いて来ている事に気付かず



ドンッ!



「きゃっ!」
「痛ッ!」

不意打ち気味に衝突した両者は互いによろめき、ナミは尻餅をつく。もう一方の、ボーイッシュな感じのショートカットをした少女は、後ろを歩く女生徒によって転倒を免れていた。
共に光陵の制服を着ている。襟の校章が視界に入り、ぶつかった方はナミと同じ一年生、助けた方は二年生であるのが確認出来た。二年生は一年生の身体を立て直し一言掛けると、ナミの方へ近付いてきた。

「痛ったぁ」


 アスファルトに尻餅をついたナミは、自身のお尻を擦りながらぶつかった相手の方を見ていた。向こうは無様に尻餅をつくような事はなかったらしい。そんな中、スラッとした170cmに届こうかという長身の女生徒がナミの方へと近付いてきており、

「大丈夫?」

と手を差し延べていた。

「あ、はい」

差し延べられた手を取ると、思っていた以上の力で持ち上げられ、

「ごめんなさいね、こっちの前方不注意で」

否を謝罪しながらパンッ、パンッ、とスカートについた汚れを手で優しく払ってくれた。

「怪我はない?」

「はい、ありがとうございます。それじゃ……」

助けてくれた礼を述べ、その場を去ろうとするナミ。が、

「あ、ちょっと」

上級生に呼び止められてしまった。
仕方がないので振り返ると、上級生は手に持った1枚のプリントを差し出し、

「はい、忘れ物よ。貴女のでしょ?」

微笑みを堪えて返そうとしてきた。そこで、ふとプリントの内容が視界に入ったらしく……

「女子………ボクシング部?」

上級生は何か思う所でもあるのか、プリントを閲覧し始める。

「あ、あの……」

ナミが声を掛けようとした瞬間、

「久美子(くみこ)さん、早くしないと練習遅れるよ?」

先にショートカットの女生徒が上級生を急かすように話しかけていた。ちなみに、ナミの事は無視を決め込んでいる。

(なに? コイツ)

謝っていない自分の事は棚に上げ、ナミは一年生の態度が腹立たしく思えた。
そんなナミの眼前、久美子と呼ばれた上級生は

「え? ええそうね。ごめん順子(じゅんこ)」

と、順子と呼んだ一年に一言掛け、

「はいこれ。私たち、ちょっと急ぐから。ほんとごめんなさいね」

ナミにプリントを手渡すと、そのまま学校の方へと走り出していった。




 朝から人と衝突するというアクシデントに見舞われたナミだったが、その後予定通り校門前で勧誘を行い、植木 四五郎(うえき しごろう)に見つかり

「登校の邪魔をするな!」

と怒られ、仕方なく断念。大人しく自分のクラスへと向かうのだった。


ナミが1-2に到着した時、既に後ろの席の越花(えつか)は着席しており、ノートに向かって何やら書き込んでいた。

「おはよ越花。えらく早いじゃない」

ナミは越花に声を掛け、ノートを上から覗き込んでみた。そこには、


『光陵高校女子ボクシング部』


と題名が書かれ、その下にナミと越花、それに城之内(じょうのうち)アンナの名が書かれてあった。

(城之内? なんであの金髪の名前が……)

不思議に思い、越花に聞こうとすると

「あ、そうだナミちゃん。ウチのクラスのアンナちゃんが女子ボクシング部に入ってくれるんだって」

まるで心でも読んだかのように越花が機先を制してきた。

「………は?」

見えない所から左ジャブでも打たれたような気分だ。が、

「いつの間にそんな話を?」

気を取り直し、ナミは詳細を訊ねてみた。

「昨日ね。帰り道で偶然家まで走って帰ってるアンナちゃんを見かけて、それで声を掛けてみたの。色々話してるうちにさり気なく勧誘してみたらOKもらっちゃった」

「ふぅん、そうなんだ」


 大体の話を聞き、とりあえずもアンナが入部してくれるというだけで良しとすべきか……とナミは思った。越花が言うには、アンナは幼少の頃からイギリス人の母に何かしらの武術を半強制的に叩き込まれたらしく、一般の女子より身体の基礎は出来ているという。どういった武術なのかは最後まで教えてくれなかったそうだが……
越花の話をあらかた聞いた後、今度はナミの方から


『高頭さんに脈アリ』


という旨の報告をした。直後、

「話を飛躍させんな! ヒマだったら、って言っただろうが」

ナミと越花の背後から柊の声が聞こえてきた。


「おはよ、柊」
「高頭さんおはよう」

 密談組の2人はそれぞれ柊に挨拶をし、「おう」と柊もそれに応じた。その後、予鈴ギリギリでアンナも到着し……寝坊でもしたのか、教室に来てから髪を結い始めるような状況だったのだが……挨拶を交わした後、1限目が終わったらナミの席に来るように全員に伝えた。



キーンコーン……



 1限目が終了し、3人がナミの席に集合すると例のプリントを各々に渡し、放課後にクラブ勧誘を行うよう指示する。
柊だけは異論を挟んだが、そんなものは右から左に流し自身は他のクラブからの引き抜きを行うべく、各クラブを回ってみる旨を伝えた。





 そして放課後。部員勧誘を行うべく各自予定通り散開し、それぞれの持ち場に散っていく。

「さてと……」

ナミも早速行動を開始する。まずは運動部、その後文科系クラブの順で回る方針を立て、女生徒が在籍していそうな部を探し始めた。
元々スポーツが盛んであり、しかも『旧校舎』と『新校舎』、体育館に室内プール、テニスコートなどかなり広大な敷地を有している為、どこでどのクラブが活動しているのかを見つけるのも一苦労、という有様である。
が、元から特定した部活を探している訳ではないので、片っ端から当たるつもりでいた。適当に歩を進め、ナミは『旧校舎』付近に1つの部室を見つけた。

 ナミの目に留まった1つの部室。かなり古そうな外観の扉には、


『キックボクシング部』


とシンプルに書いてあった。

(こんなのまであるんだ……)

と、失礼な感想を抱きながらも興味を惹かれたのか、窓からコッソリ覗いてみた。

「ッ!?」

覗いた瞬間、ナミはあまりの状況にしばし言葉を失ってしまう。3名程の男子部員が話しながらダラダラと練習ともつかない練習をしており、その奥……ベンチの辺りで1人の女子部員が、その上に横たわっているもう1人の女子部員の介抱をしていた。
スパーリングでもしたのだろうか。横たわっている女子部員は両手にグローブを、頭にはヘッドギアを、それぞれ着けたままである。

「ん? あれって」

介抱している方の女子部員の後ろ姿に、ナミは何故か見覚えがあった。ボーイッシュショートな髪に自分とあまり変わらない小柄な体格。
ナミはその少女が誰であったかを思い出そうとしたその時、さらに常識を疑うような光景が視界に飛び込んできた。あろう事か、男子部員の1人が横たわっている女子部員に対し、ブローブを投げつけたのである。



プチンッ!



 その光景を見た瞬間、ナミの中で何かがキレた。ナミはノックもせず扉のノブを掴み……



バンッ!



思いっきり開け放した。

「な、なんだ!?」

予想外の暴音に、部室内にいた全員が一斉にナミの方を振り向く。

「あ! あんた、朝の……」

ショートカットの少女がナミの顔を見た瞬間、一言呟く。が、当のナミは知らぬ顔で、

「謝りなさいよ」

グローブを投げつけた男子部員に謝罪を要求していた。


「あ? なんだよお前」

 いきなり出てきたナミに、チンピラ風の態度で睨みつける男子部員。元々ケンカ自慢でもあったのだろうか、結構な迫力である。
が、ナミにしてみればそんな脅しは涼風に等しい。何せ、小学校の頃からボクシングジムで大人に混ざって練習をしているのだ。培ってきた度胸は、そこいらの女子などとは比べる事も失礼な位なのだ。
ナミは相手の啖呵を鼻で一蹴すると、

「女の子相手に大の男がカッコ悪い事してんじゃないわよ! それに、グローブの使い方も満足に知らない半端モンなの? アンタ」

逆に相手に啖呵を切ってみせた。

「なんだと、もう一度言ってみろよ、オイ!」

さらに怒声を上げる男子部員。が、ナミは無視を決め女子部員の方へ歩み寄る。そして、近くに転がっていたグローブを拾い上げながら、

「大丈夫ですか?」

横になっている女子部員に声を掛けてみた。

「……あ…貴方、朝……の………」

ヘッドギア越しの顔を確認してみると、朝に助け起こしてくれた女生徒…久美子と呼ばれた二年生であった。
顔や脚の所々に出来たての痣が目立ち、まだ身体に力が入らないようだ。まだ膝も時折ぷるぷると震えている。グロッギー状態になってもまだ打ち続けられたのだろう、とナミは見て取った。
どう見てもまともなスパーリングではなかったハズだ。男子部員たちの態度を見ればその程度の予測はつく。


「許せない」

ナミは頭に来ていた。

「オイ!」

 そんなナミを、先程啖呵を切った男子部員がガシッ! と肩を掴み、乱暴に振り向かせる。

「お前、今グローブの使い方がどうとか言ってたよなぁ? ひとつ俺に教えてくれよ、正しい使い方ってやつをよぉ」

と言い放つと、扉の近くにいた他の部員に命じ鍵を掛けさせた。


(トコトン腐ってるわね、この連中)

 ナミはそう思いながら、掴まれてた手を払い落とし

「いいわよ。ちゃんとしたグローブの使い方ってのを教えてあげる」

笑みを浮かべながら答えた。

「ちょ、ちょっと!」

話が進む中、またもナミの肩を掴む手があった。今朝ぶつかった、順子と呼ばれていた一年生である。

「何言ってんのよあんた! 部外者がしゃしゃり出てこないでよ。それに……」

順子はそこまで言うと言葉を詰まらせる。

「確かに部外者だけどさ……いいじゃん。まぁそんな事より、グローブ着けるの手伝ってよ」

ナミはそんな順子を見、次いで相手の方に目を光らせながら言うのだった。




to be continued……
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Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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