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第3話

 第3話です。

クラスの自己紹介で自分の夢を語ったナミ。高校での初めての友達も出来、部員集めを始めようとした矢先……




 
「……私にも出来る、かな? ボクシング」

「………え? 今なんて言った?」

 袖を掴む越花(えつか)の口から紡がれた言葉に、思わずナミは聞き返していた。
知り合ってまだ間もないが、ナミの見た限り越花はボクシング……いや格闘技の類とは全く縁のない人種のように思える。おっとりした雰囲気に穏やかな表情。身体つきを見るに、女性らしいふくよかさが目立ち鍛えている風はない。

(わたしとは大違いね……)

軽く自虐しつつもフウッ、と溜息をついてから、

「ねぇ、越花。一応聞いておくけど……ボクシングっていうのがどういったスポーツか分かってる?」

と、少しキツ目の表情を作って質問してみた。



「え、うん知ってるよ。グローブとか防具とか着けて殴り合うんだよね?」

「まぁ、大まかにはそうなんだけど……で、それをするっていうのがどういう事になるか考えてみた事ある?」

越花は越花なりにナミの質問に対し己の知る知識を言っただけなのだろうが、実際にボクシングをしているナミとしては、その答えは不十分だった。

「殴り合う、って事は越花が思ってるより難しい事なの。顔を打たれ続けたら腫れ上がってくるし、鼻血だって日常茶飯事。それに骨だって折れるかも知れないし、最悪死んだりするケースもあるんだから」

ボクシングに限らず、およそ競技というものは選手と観客とでは当然目線が違う。観客は試合を見るだけなので、選手がその試合の場に立つ迄にどれだけの苦労や葛藤、練習を積んできているのかを知る事はない。
観客が選手になるという事は、練習を積むのは勿論、その知られざる苦労や葛藤も背負う事である。

越花が「ボクシング出来るかな?」と言ってきたのは、恐らく自分の夢を聞いて興味を持ってくれたからだろう……とナミは思う。それ自体は凄く嬉しい事なのだが……嬉しい事なのだが、越花に覚悟がある上での発言なのか? とナミは真意を探るように敢えてボクシングの厳しい部分を羅列し、続いて

「もし興味本位ってだけで言ったんだったら……悪いけど他当たって」

と、突き放すように吐き捨てた。


「…………」

 越花は無言のまま下を俯き、掴んでいた袖をスッと離す。

(ちょっとキツい事言っちゃったかな? でも)

そう思いながらも、ナミはその場を去ろうとした。が……

「待って!」

越花の大声が教室中に響き渡り、何事か? と周囲の生徒たちから視線を注がれる形となる。
なんとなくバツの悪くなったナミが、

「外、出よっか」

と促すと、

「う、うん」

越花も同意し、2人は逃げるように教室を後にした。



 思う所あって正門前に移動するナミの後ろをついていく越花。その移動中、

「ねぇ、ナミちゃん。私思ったんだけどね」

越花が話しかけてくる。ナミは無言で前を歩きながら、越花の次の言葉を待った。

「確かにさっきのはボクシング……というよりはナミちゃんに興味が沸いたから、って理由で言ったんだけど」

淡々と語る越花の声を背中に受けながら無言を通すナミ。



「ねぇ……ナミちゃんはボクシング好き?」

 ふと質問され、「え?」とつい振り返ってしまった。

「なに? いきなり」

「ねぇ、好き?」

廊下を歩く足を止め、ナミは越花と向かい合う形となる。

「好きよ。当然じゃない」

何故今そのような事を聞くのか? とナミは小首を傾げる。

「だよね。それじゃ、ナミちゃんはなんでボクシングを始めようと思ったの?」

「担任の植木って先生いたでしょ? あの人とは昔馴染みなんだけど……」

と、妙な方向に話が進んでいるような感覚を感じながらも、ナミは自分がボクシングを始めた動機を語り始めた。


「小学校の頃に、友達が大事にしてた人形がガキ大将に盗られたのね。取り返そうと思ってそいつのとこに行ったんだけど……返り討ちに遭ったの」

「それで?」

越花はナミの話を静かに聞き、続きを促す。

「で、たまたま植木先生が家に来てたから八つ当たりしたんだけど」

「う、うんそれで?」

八つ当たり、のくだりで思わず苦笑する越花。

「そこで……」

と、ここで一旦話を止め越花との間合いを離し、ゆっくりとファイティングポーズを取ると……



シュバッ!



越花の左頬目掛け右ストレートを放った。

「ッ!?」

 いきなり飛んできたナミの拳に、越花はギュッと両目を閉じ身を竦める。が、続いてくる筈の衝撃がいつまで経っても伝わってこない。
ゆっくりと固く閉じた目を開けてみると……ナミの拳は越花の顔に触れるか触れないかの所で寸止めされていた。

「コレを教えてくれたのよ」

「ふ……ふぅ、んん………」

そう言うと、



ペタンッ!



越花は恐怖で腰を抜かしたのか、その場でへたり込んでしまった。


「ちょっと! 越花大丈夫!?」

 まさか腰を抜かして尻餅をつくとは思わなかったナミは、慌てて越花を助け起こす。

「えへへ、ゴメンね」

助け起こされた越花は、恥ずかしそうに謝る。

「で、それで?」

助け起こして貰った後、間髪入れずに越花はナミに対してそう言い放つと、

「え、なにが?」

と、何の話だっけ? といった風で聞き返していた。

「それで、お友達の人形はどうなったの?」

先程の話の続きを促してきた。

「あ、あーーそうだった。リベンジして取り返したわよ勿論」

そう言いながら、ナミは自分の右拳をジッと見つめる。

「コレを叩き込んだ時の感触が忘れられなくてさ。コレで頂点目指してみようと思った……それがボクシングを始めた理由」

ナミは視線を自分の拳から越花の方へと変え、

「で、アンタは一体なにが言いたいわけ? 越花」

横道に逸れた話を元に修正した。


「うん。えっとね……興味本位でボクシングしてみたい、って言ったのは事実だけど」

 越花は話の筋が元に戻った事に気づき、一瞬だけ厳しい表情をしたかと思うとすぐにまた笑顔を見せ、

「ナミちゃんがボクシング始めたきっかけも些細な興味によるものだって分かったし……」

ナミは黙って越花の次の言葉を待ちながらも、頭の中では違う事を考えていた。


(さっきの表情………)


ナミは一瞬だけ見せた、先程の越花の厳しい表情を見逃してはいなかったのだ。

「誰かが何かを始めたいっていうのは、きっとそんな些細な興味からだと思うの。それが早いか遅いか、続くか続かないか、って違いぐらいで」

黙って聞いているナミの姿をジッと見つめながら、話を続ける。

「だから、最後までちゃんと続けられるかは分からないけど……私もボクシングがしたいと思ったの。ダメ、かな?」

自分が言うべき事は全て伝え、越花はナミの返答を待つ。


 言われてみれば、ナミがボクシングを始めたのも

『この拳で頂点を取ってみよう』

という興味によるものである。興味本位でボクシングは出来ない、やるべきではない……といった当の自分自身が興味から始めていた事に、越花の言葉を聞くまで全く気づいていなかった。

(ダメだなぁ、わたしも)

越花に教えられた、とナミは素直に「越花、ありがとう」と礼を述べ、次いで

「言っとくけど、練習は厳しいわよ。泣き言を言っても一切聞かないから覚悟してよね?」

と、越花の入部を許可するのだった。





 入部第一号となった越花と共に正門前に陣取ったナミは、スポーツバッグを地面に下ろしてファスナーを開き、プリントの束を取り出し始めた。

「ナミちゃん、それなに?」

プリントの束を取り出したナミは、半分を越花に差し出し閲覧を促す。そこには女子ボクサーをイメージしたイラストが描かれてあり、


『女子ボクシング部へようこそ』


と書かれてあった。


「クラブ案内……?」

 プリントを見た越花は、ナミがこれから行おうとしている事、そして自分がさせられるであろう事を大筋で理解した。

「そ。アンタももう部員なんだから手伝いなさいよ」

ナミは、越花に裏門に回って勧誘するように指示し、自身はここ正門で勧誘をする旨を伝えお互いは行動に移していく。





 2人が手分けしてクラブ勧誘を行う事数時間。時刻はPM2:00を回っていた。

「越花、首尾はどう?」

一旦合流し、紙パックのジュースを飲みながら2人はお互いの近況を報告しあっていた。

「う~~ん、さっぱり。というか、ほとんど人通らなかったよ」

裏門の周囲に張り付いて、通り過ぎる生徒をターゲットに勧誘をしようと息巻いていた越花だったが……結果として、通り過ぎた生徒数6名、うち女子が2名。しかも聞く耳も持っては貰えず逃げるように去ってしまったらしい。

 結局この日はもうほとんどの生徒が帰ってしまっていたので、勧誘は翌日に持ち越す事となった。
越花と別れた後、ナミは1人帰路に着いていた。空はよく晴れ上がり、気持ちの良い風が髪を揺らす。

「はぁ……あと4人か」

明日からの勧誘に思いを馳せながら、

(まずはあの金髪……城之内っていったっけ? あの娘に声を掛けてみて、それから………)

そんな事をあれこれ考えながら歩道を歩いていると、左の方に公園が見えてきた。綺麗に整備された公園の中、2台のバスケットコートが設置されている。
休日には恐らくストリートバスケでも行われているのだろう。が、今は誰1人として使用していないようだ。それを眺めながら歩いていると、

「あれ?」

誰もいないと思っていたコートに、見覚えのある人物がたった1人でいるのを見つけた。

「高頭、さん?」

同級生である高頭 柊(たかとう しゅう)が、バスケットボールを一定のリズムでダンッ、ダンッ、と叩きつける。そして、ゴールへ向け一直線にドリブルを開始した。
かなりの速さでダッシュし、次の瞬間ナミは信じられない光景を目にする事となる。



タンッ!



 柊はボールを持ったままゴール目掛けジャンプする。制服姿のままの柊の身体は、穿いているスカートをなびかせながらグングンとその跳躍距離を伸ばしていく。
その姿は、あたかも足に羽でも生えているかのようであった。そして……



バスンッ!



左手に持っていたボールをゴールリングの上から力強く叩き込んだ後、柊は左手だけでゴールリングにぶら下がっていた。


「………………は?」

 一部始終を遠くから見ていたナミは、その信じられない光景に思わず我が目を疑った。150cm弱の自分とそう変わらない程度の身長しかない柊が、305cmものバスケットゴールまで跳んだのである。
およそ自身の身長分の高さを跳んだ事になる。常識ではあり得ない跳躍能力であった。

 柊は左手をリングから離し、地面に着地してから再びコートに戻り身体を動かし始める。ナミはもっとその様子を近くで見たくなり、公園に入りバスケットコートに近付いていくのだった。




to be continued……
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Author:チャパロット
基本的に携帯サイトで書かせて頂いているもののリメイク(?)ですが、ちょくちょく文を変更してたりします(あと拙いですが自作絵なども)。
何かある方は、ckcwb305あっとまーくsutv.zaq.ne.jpにご連絡下さい。

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